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ルール見直しと投資で停滞を抜け出す

4月3日の日経新聞で「人口と世界 逆転の発想(1)成長の罠、人材投資で克服」というタイトルの記事が掲載されました。人口減少は必然的に経済発展の壁となる、人材投資がその壁の克服のカギとなる、という内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

1月、中国は61年ぶりに人口が減ったと発表した。2022年末の人口(外国人除く)は14億1175万人と23年1月時点のインド(14億2203万人、国連推計)を下回った。中印の首位交代は3世紀ぶりだ。

中国は少子化と並行して急成長を遂げた。「一人っ子政策」など人口抑制政策を1970~80年代に打ち出し、6を超えていた合計特殊出生率は急落。2020年に1.28まで減った。働く世代の比率が高まって人口ボーナスが始まり、所得水準は1980年から30年間で13倍に高まった。

だが中国は中所得国のまま足踏みしている。22年の1人あたり名目国民総所得は1万2608ドル(約170万円)で、世界銀行の高所得国の基準(1万3205ドル超)に達しなかった。

人口減が始まった中国では働き手不足が加速する。ゴールドマン・サックスによると中国の潜在成長率は2010年代の7.7%から30年代には2.5%まで下がる。「鈍化の大部分は人口動態要因による」という。

インドも中国の後を追わないとは限らない。インドの所得水準は依然、中国の6分の1にとどまる。国連によると出生率はすでに2.0まで低下し、60年代半ばに人口減に転じる。豊かになる前に高齢化し、中所得国のまま停滞する「中所得国の罠」に陥りかねない。

いかに罠から抜け出すか。かつて飢饉(ききん)や高い失業率で「欧州の病人」と呼ばれたアイルランド。国外への人材流出で人口は激減した。バイデン米大統領ら世界でアイルランド系が多いのはこのためだ。

80年代の所得水準が米国の半分だったアイルランドだが、大胆な規制緩和と減税で外資誘致に踏み切った。「最大の力点は教育」(メアリー・ロビンソン元大統領)で、教育無償化で人的資本の蓄積に注力した。政府支出に占める教育や研究開発の割合は13%と日本の8%を大きく超える。この結果、IT(情報技術)大手が競って拠点を設け、対内直接投資は30年間で30倍以上に増えた。

「ケルトの虎」。病から脱して高成長したアイルランドはこう呼ばれるようになった。08年の金融危機も乗り越え、21年の1人当たり名目国内総生産(GDP)は10万ドルと日本(3.9万ドル)だけでなく米国(6.9万ドル)も超えた。国民の国外流出を移民流入が逆転し、1990年から30年間で人口は4割増えた。

日本はどうか。高度成長後の持続的な発展モデルを見いだせていない。日本のGDPは世界3位だが、ドイツに肉薄され、国際通貨基金(IMF)によると27年にもインドに抜かれる。

人口減少と停滞にどう立ち向かうか。先進国も成長を続ければ人は増えるというデータがある。経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国では過去20年、成長率の高い国は人口が増える傾向があった。所得の上昇で生活が安定すれば出生率も上がり、移民も訪れる国になる。

人材への投資で生産性向上や技術革新を促し、成長を生み出すことが人口減対策にもつながる。停滞を打破するには今までと異なる発想で課題を解決する必要がある。

上記の示唆を次のようにまとめてみます。

・人口減少は、国の経済発展の壁となる。今人口が増えている国もこの先の新たな人口には限りがあり、自然な成り行きでいくと国の構成員である人口は減っていく。人口がピークを迎える前に一定の経済的な富と生産力を手にしておかないと、人口が減り始めて「中所得国の罠」に陥る可能性がある。

罠から抜け出すには、産業の見直しと人材開発が重要な要素となる。産業の見直しで既存領域での生産性向上、新たな領域での生産力を生み出すには、ルール見直しと国外投資家の呼び込みが有効である。

・人材開発も、生産性向上と新たな領域での生産力創出を促す。加えてそのことが、人材そのものを国外から引き込むことにもつながる。

・これらの点で一定の成果をみたのがアイルランドである。日本はまだ突破口を見出せていない。アイルランドの例は参考になる。

上記について、「日本」を「自社」に、「国外」を「社外」に置き換えてみるとどうでしょうか。「国」と「会社」という組織規模の違いはあれ、組織に通じる本質は同じです。自社に当てはまる企業は多いのではないかと思います。

既存事業の見直しや新規事業を推進するために、ルールの変更、教育や研究開発への投資が十分に行なえていなければ、組織が小さくなって沈滞化していくというわけです。

一定の収益事業と収益力があり、新卒の入社希望者が毎年一定数見込めている企業は、今のうちに罠にはまらない企業体へと変化していくことを目指すべき。既に罠に陥っている企業も、大胆な変革と意思決定次第では、状況を打開していくことができる。上記はそのように示唆しています。

4月から入社した新人や既存人材への教育投資について、今期の新たなスタートをきっている企業も多いと思います。上記は、その意義を改めて認識できる視点だと思います。

<まとめ>
人材を含めた新たな投資が、持続性のある発展と新たな人材の引き寄せになる。

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