教育を先行指標として考える
7月14日の日経新聞で、「男女平等、政治・経済で遅れ 日本の格差指数、G7最下位」というタイトルの記事が掲載されました。多様な人材の活用の観点から、男女の公平な登用は以前から重要テーマとされていますが、改めて日本の現状の実態を紹介した内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
2000年~2002年頃にかけて、私は韓国から国策で日本に派遣されたチームの方々と一緒に仕事をしたことがあります。総数100人程度でした。各人は派遣元の企業で特命をもっており、日本のカウンターパートと協力してそれを達成することを目的としての来日でした。皆さん派遣元では経営幹部のポジションでした。
100人近くの参加者の中で、女性の方は1名だけでした。同時期に同様の目的で来日していた、ベトナムや中国のチームには、女性の方が全体の1/3~1/2程度いました。当時韓国の方から「男女差は大きい」というお話も聞きましたが、参加者構成からもその印象でした。しかし、そこから今にかけて大きく変わったのではないかと、上記記事からは想像されます。
同記事からは、2つのことを感じました。ひとつは、政策や目標設定、それを実現させるための取り組みを徹底することで、物事は変えることができる、ということです。上記韓国の取り組み・結果と日本との差が、その一例と言えます。
議席や企業役員などに女性を一定数割り当てるクオータ制は、逆差別になる可能性があります。なぜなら、コミュニティや組織内に、議員や役員に適切な女性が十分な数いない場合は、無理やり割り当てることになるからです。この時、意欲も能力も十分な男性候補が席を得られないとなると、果たしてその施策は妥当なのかということになります。
よって、多様性実現においての個人的な意見としては、(他のテーマは別として)男女のテーマの場合目標とする割り当て比率は、一般的な組織であれば50%未満が妥当だと思います。現状では、男性の雇用者のほうが多い企業が多く、管理職予備軍として意欲・能力を持つ候補人材も男性のほうが多い場合がほとんどだからです。その状況で目標を50%としてしまうと、男性や性的マイノリティの方よりも明らかに女性を無条件に優遇することになりやすいと言えます。
組織の状況によっては、例えばメンバー数全体の1/4の25%ぐらいを、女性役員比率や女性管理職比率の当面の目標にしてもよいかもしれません。もちろん、女性の雇用メンバーが多い組織や女性登用が進んでいる組織の場合は、妥当な目標値も変わってきますが。
2つ目は、仮に施策や取り組みが現状のままであっても、将来的には自然に男女平等が進むかもしれないという点です。
上記記事で紹介されている、日本のジェンダー・ギャップ指数の個別要素は、次の通りです。教育に関しては、146か国中、男女平等度合いが1位というわけです。
総合:116位、政治139位、経済121位、医療63位、教育1位
人や社会の意識、根源的な考え方をつくるうえで、教育はとても大きな影響を与えるものです。そして、ここで言う教育の主な対象は子どもです。初等~高等教育を享受できる環境が男女平等であり、その教育内容でも多様性の活用や男女平等の考え方について取り込まれているはずです。
よって、政治や経済は遅行指標(政治を担える人、お金を稼ぐ人になっている割合の結果も含むもの)の側面があるのに対して、教育は先行指標(のちにその結果を生み出す要因となる物事の状態)の側面が大きいと言えます。
普段いろいろな企業でお話を聞く機会がありますが、「中堅どころでいい人材の女性もいるが、管理職をやりたがらない人が男性に比べて多くて、登用しようにもできない」という話が時々出てきます。子育て等の環境要因による場合もありますが、「肩書付きの重責は男性が担うほうがよい」「前に出るのは気後れする」といった、本人の意識や思考による場合も多く見受けられます。
こうした偏った意識や思考は、上記の先行指標による教育を受けた若手世代が全盛となってくる今後は、少しずつ変わっていくのではないかと想像されます。
この先行指標なども参照し、性別を含めた多様な人材の活用を、施策・取り組みとしてより一層進める組織が、その組織が考える理想の人材から支持を得て、それに呼応する人材を一層獲得できるようになるのではないかと思います。
<まとめ>
教育という先行指標から、男女のギャップ解消の動きが見えるかもしれない。
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