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管理職になりたくない人

9月27日の日経新聞で、「役職者「なりたくない」8割」という記事が掲載されました。
同記事の一部を抜粋してみます。

~~近年、管理職に「なりたくない」という会社員は多い。人材サービスのマンパワーグループが2020年3月にまとめた調査では、役職についていない20~50代の正社員400人の83%がそう回答した。

「なりたい」は20代が28%、30代が23%だったが、40代は10%、50代は7%と年代が高まるにつれ減る傾向がみられた。なりたくない理由は「責任の重い仕事をしたくない」(51%)が多く、「自分のやりたい仕事ができなくなる」(17%)などもあった。なりたい理由は「報酬が増える」(88%)、「自分が成長できる」(66%)が上位だった。

同社は「かつてのゴールの一つだった管理職は、共通の目標ではなくなった」と分析。価値観が多様化するなか、企業には柔軟な働き方を社員に提示するとともに、将来の経営を担う管理職人材の積極育成も求められると指摘する。~~

回答種別の内訳としては、「なりたい」5.5%、「どちらかといえばなりたい」11.5%、「どちらかといえばなりたくない」34.5%、「なりたくない」48.5%とあります。以前からこの傾向は言われてきましたので、回答結果は私たちのイメージにも合っていると思います。そのうえで、「どちらかといえばなりたくない」「なりたくない」の比率がここまで上がっているのは、想定を上回る結果ではないでしょうか。

私が普段かかわる企業関係者でも、役職者(管理職)になりたくないという人がたくさん見られます。組織によっては、なりたい人よりなりたくない人のほうが多数派のこともあり、上記結果の通りです。記事の言うとおり、個人のキャリアの志向性次第の面がありますので、そのこと自体が必ずしも悪いわけではありません。

気になるのは、「なりたい」という若手人材(20代・30代)が相応に見られる一方で、40代以上でどんどん減少していることです。これは、なりたい人は既に管理職になっていて、なりたくなくて残った人が40代以上の回答者の中心になっているから、とも想定されます。他方で、管理職が本当に魅力的で、それを担っている人材も輝いて見えるのであれば、管理職としての即戦力であろう40代以上こそ、「次は自分が」となおさら比率が上がってもおかしくありません。

そう考えると、管理職になっている人が大変そうで、「役職者がやりがいのある仕事」だと見えておらず、管理職の側も「自らが輝いている人材」という姿を発信できていないということになります。そうした光景を見た若手社員が「あまりならないほうがよさそうだ」と徐々に感じ取っていき、「なりたくない」連鎖を次の若手社員に伝えていくことになります。これは組織風土の面からも、よくない連鎖ではないでしょうか。

上記の傾向に関連し、若手社員が役職者や重責を担おうとしない現状に対して、嘆いている管理職者を見かけることも多いものです。現状を嘆く前に、そうした現状を生み出している要因のひとつが、非役職者も含めたベテラン社員の側にあるかもしれないということを、振り返ってみるべきだと思います。

また、今後この質問に回答するにあたっては、3つの視点から考えてみるとよいと思います。

ひとつは、何をしても責任はついて回るし、自己成長が必要ということです。
上記回答に「責任の重い仕事をしたくない」がありますが、組織の中の1プレイヤーであっても、組織に属さない独立型人材であっても、なんらかの責任は発生します。責任を引き受けて成果を生み出すことで、対価をもらっているからです。

普段企業の非管理職者の方とお話していると、「責任を増やしたくないから、今のままの仕事を続けたい」という人がいます。一方で、評価に不満を言ったり、毎年の昇給を求めていたりします。責任が増えないなら、月例給与は昇給などせずに、まったく同じであり続けるべきでしょう。

いや、むしろ、今のままの仕事を続けるだけであれば、毎年減給していってもおかしくないと言えます。社会は常に発展し続けています。仮に今任されている仕事を、まったく同じ内容・まったく同じ方法でやり続けるだけだと、社会の発展から取り残されてしまうからです。つまりは、現状維持ではなく後退になります。

組織は、目的とする成果を上げるために存在し、その貢献度合いに応じて組織メンバーに成果の一部を分配します。組織の後退を一定範囲内にとどめること以上の役割を果たしていないメンバーは、後退分だけ減給しても本質的には正しいと言えるでしょう(法的に難しいかもしれませんが)。評価への不満ばかりアピールしている人が時々見られますが、まずこの本質を認識するべきだと思います。米国などでは企業に対して、唐突な解雇も金銭付きで可能にする解雇権を許容していると言われますが、ある意味この本質に忠実である結果でもあります。

2つめ以降の視点については、次回以降取り上げてみます。

<まとめ>
若手人材の管理職になる意欲が減退していくのは、その上位層が管理職にやりがいを見出していないこともその要因。

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