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オフィスの役割を考える

前回の投稿では、テレワーク勤務の動向について取り上げました。コロナ禍をきっかけに広まったテレワーク勤務という形態にどう向き合うかという課題テーマは、「オフィスの役割は何か」が論点のひとつだと言うこともできます。

先日、株式会社Legaseed 代表取締役CEO 近藤 悦康 様に、同社オフィスをご案内いただく機会がありました。同社は「はたらくを、しあわせに。」をミッションとして掲げ、人材コンサルティング等の事業を展開している企業です。

ビジョンの中には、「世界一、入社して良かったと言われ永遠に愛され必要とされる会社になる。」という一文もあります(同社HP参照)。その同社はオフィスにもこだわりをもっています。先日、「ここは、「理想の未来と向き合う」人が集う場所。」(同社HP)とされているオフィスをご案内いただき、オフィスの設計や考え方をお聞かせいただいたのですが、見るもの・聞くことのひとつひとつが圧巻でした。

同社オフィスに関するエピソードをいくつか例示してみます。(同社HPやマイナビニュースサイトも参照)

・2020年9月に本社オフィスをリニューアルし、230坪のオフィスに拡大移転した。当時社員40名規模の企業でありながら、新オフィスの内装に2億円を投資した。

・「∞(無限大)」の形となっている動線で、クライアントと自社が今後も成長し続け、愛され続ける存在になれるようにとの想いを込めて設計された。

・ディズニーリゾートを彷彿させる洞窟のようなエントランス、隠し扉から入ることのできる森林をイメージした会議室を設計。

・オフィスの壁には、過去に偉業を成し遂げてきた先人たちの名言を刻み、会社が社員に求めるマインドセットを伝える。社員全員の自分のビジョンも刻まれ、各人が何を目指して仕事をしているのかも一覧。

・入り口の通路には、創業期から今に至るまでの会社の歴史をデジタルフォトフレームで常時投影。同社先輩たちの足跡を見て仕事を始める設計になっている。

・航空機の操縦室のようなレイアウトで、通称「コックピット」と言われるCEOの執務室では、売上や受注等、会社の業績をリアルタイムで常時投影しながら戦略立案。

・オフィス内に収録を行うための本格的なスタジオ、防音完備の個人ワークスペース、勤務時間外なら自由にお酒も楽しめるバーラウンジなど、先進的な技術とアナログなコミュニケーションと両方を重視する設備。

画像がないとイメージしにくいと思いますので、よろしければ下記リンクもご参照ください。

近藤氏は、「オフィスは人が集まる“城”」だと話します。その背景となる考え方について、マイナビニュースサイトに掲載されている同社紹介記事から、一部抜粋してみます。

(2020年4月に発令された1度目の緊急事態宣言下で、テレワークに切り替えても問題なく業務を遂行できることがわかり)オフィスというのは明確な訪れる理由がなければ、もはや必要ないものだと分かりました。私はオフィスを城だと思っています。ただ、敵が攻めてきた時に、いかにして攻めづらくするかに重きを置いていた戦国時代の城とは異なり、むしろ、人々が集まり何度も来たいと思えるような城のこと。それを実現させるためには大きな投資が必要です。

顧客である経営者の方々に、実際にオフィスにいらしていただき、われわれの文化や考え方に興味を持ってもらうことが重要です。これにより、社員の本領も発揮され、契約確率の向上につながります。

今後もビジネスにおけるオンライン化は加速すると思いますが、体験価値を提供するにはオンラインでは限界があります。極端ですけど、ディズニーランドをオンライン上で再現することは無理だと思います。ビジネスも同じで、顧客や社員、候補者に対して最大限の体験価値を提供するためには、人々が直接的なコミュニケーションが取れるオフィスが必要です。

オフィスを「単なる業務をこなす場所」と定義するなら、なくても困らないと思います。やみくもにテレワークの実施やオフィスの削減を図るのではなく、今一度、オフィスに対する位置づけを見直す必要があるのかもしれません。

私は、オフィスを体験価値を提供する場所と定義しています。体験価値を提供することで会社に収益がもたらされるはずです。オフィスに魅力を感じて、社員が長く勤めてくれることや、一人でも多くの候補者が入社することも収益に直結すると考えています。Legaseedにとって、オフィスへの投資は必要なことです。

テレワークによって課題が生じたことも、オフィス勤務を推進する理由の一つになっている。テレワークを実施している間、Legaseedの社員の中には、同居人の存在や、仕事とプライベートの空間が同じだと気持ちの切り替えがうまくいかないといった新たな悩みが生まれた人がいたという。これは長期的に見ると、生産性の低下につながることだ。

特にセルフマネジメントが十分ではない新入社員への指導に関しては、オンラインでは限界があると近藤氏は強調した。ちょっとした質問や相談は、オンラインよりリアルのほうがしやすいと強く実感した。~~

近藤氏の示唆について、私なりの解釈で次のようにまとめてみます。

・オフィスを、会社・お客さま・社員が体験価値を共有する空間と位置付けている。会社の長期的な発展と社会への貢献を実現していくには、体験価値の共有が欠かせない。オフィスは、体験価値の共有に適した場所となりうる。

・オフィス出社について、「強制」「週何回以上」といったルールで縛る必要はないかもしれない。体験価値の共有をするための場所であれば、そうしたルールがなくとも必然的に行きたくなる場所なのである。

同社オフィスの備品やレイアウトの一つひとつに、そのようにした理由があるそうです。お客さまのご案内時に、社員がその理由を自分の言葉で説明できることが大切だと、近藤氏は言います。社員がそれぐらい自社のオフィスを語れるようになるということは、それだけ自社の理念を理解しているということだからです。

テレワーク勤務にどのように向き合うべきかというテーマは、オフィスの役割は何かというテーマに向き合い、従業員が行きたい場所にすることで、その答えの多くが見えてくるのかもしれません。

「ならばうちも億単位の予算でオフィス改装を」とはならないでしょうし、上記オフィスの定義も一例であって、必ずしも他社にそのまま適用できるとは限らないと思います。そのうえで、オフィスの今後を考えるにあたっての一例になると思います。

<まとめ>
オフィスを、会社・お客さま・社員が体験価値を共有する空間と定義することも可能。

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