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言わないでほしいことを言われない(4)

前回までの投稿では、組織活動で必要に応じて行うべき指示命令というアクションをスムーズに行うための視点について考えてきました。今回もその続きです。

5.相手の特徴を知る

前回までのコラムで、「人は他者から命令されたくない生き物である」ということをテーマにしてきました。このことは一般的に当てはまる基本原則ではあるものの、どの程度当てはまるかは個人差があります。ここでは、個人差について「ストレングス・ファインダー(ギャラップ社)」による個人の特徴理解に沿って考えてみたいと思います。

本コラムでも時々取り上げる「ストレングス・ファインダー」は、34の資質を手掛かりに個人の強み・弱みを発見し、能力開発やチームビルディングに活かすものです。ここで言う資質とは「思考、感情、行動のクセ」のことです。

34の資質の中には、「指令性」があります。ストレングス・ファインダーについて説明した「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0(トム・ラス氏著)」では、「指令性」について次のように説明してあります。

「指令性という資質によって、あなたは主導権を握ります。他の人と違い、あなたは自分の考えを他人に強く主張することを苦痛とは感じません。それどころか、ひとたび考えが固まると、あなたはそれを他の人に伝えずにはいられません。そしてひとたび目標が定まると、あなたは他の人をそれに同調させるまで安心できません。あなたは対立に怯えることはありません。事実や真実がどれだけ不愉快なことであろうとも、あなたはそれを示さなければならないと感じます。」

「指令性」の資質が発揮された行動様式は、軍隊の司令官で例えられることがあります。上記の通り、状況の主導権を握り、決断を下し、相手がなすべきことを強く指示命令して動かすのに長けているイメージです。

そして、この34の資質は、自分が相手に対してそうすることをよしとすると同時に、自分に対してもそうしてくれることを望むとされます。すなわち、指令性資質の高い人は、典型的には次のような傾向がありそうだと想定されます。

・他者に指示命令し動かすことを得意とする。相手に対してズバッと命令する。
・自分に対してもズバッと言ってくれることを望む。

私の周囲に指令性資質の高い人がいます。その方は、相手がだれであっても、ワンマン経営者相手であろうと、明確にはっきりと自分の主張をぶつけることを厭いません。厭わないというか、自然体でそうなるようです。こうすべきだと思うことを、相手に対してはっきりと指示し注文します。こういう行動をとることが苦手な人にとっては、うらやましい一面です。

その方に、「自分に対してもはっきりと指示や注意をしてくれることを望むのではないですか?」と聞いてみたところ、やはりそうだと答えました。回りくどい言い方や遠回しに言われるよりも、はっきりズバッと指摘されたいというお話でした。ワンマン経営者相手にさえはっきりと物申す一方で、「意見としては分かるけど、○○○○。よって、経営判断はそうではない。最終意思決定に従いなさい」と言われると、抵抗なく受け入れられると言います。(高指令性資質の持ち主全員が同様とは限りませんが)

この話を、その方の周囲にいてかかわりの深い別の方と共有してみたところ、「そうなんですか。あの人に対しては真逆にしたほうがよい(遠回しに言ったほうがよい)のかと思っていましたが、少し違うんですね」という反応でした。私たちは、主義主張の強い人に対しては、はっきり言うと嫌がられるのではないかと思いがちですが、必ずしもそうではなくむしろ逆かもしれないというわけです。

他にも例えば、安全を求める志向性の強い人の場合は、上長に当たる人物から「この通りにしなさい(≒そうすればあなたの期待は満たされる)」と自分のすべきことを明確に定義し指示してくれたほうが、迷う余地がなく感じられ心地よく進めやすいかもしれません。

私たちには「命令されて動くより自らの意志発で動きたい」という基本原則があることを、取り上げてきました。そのうえで、命令の受け止め方にも個人差があるため、可能な範囲で相手の特徴を知ったうえで言い方も調整できるとよりよいだろう、ということです。

以上、4回にわたって、指示命令に関することを考えてみました。ご参考になれば幸いです。

<まとめ>
人によっては、はっきりと指示命令されることを受け入れやすいタイプもある。

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