小説:EMBERS
取調室は、映画やドラマで見ていたものとは随分様子が違った。
顔を強く照らすためのライトもない。
西日が差し込む窓もない。
至って簡素なひとつのデスクと、プリンターだけがあった。
デスクの片隅には、おそらくインクが色移りしてしまったのであろう染みがあった。
その染みは、なぜかあまりよくない印象を与える文字に見えた。
もちろん具体的な意味を為している文字ではない。
それはまるで僕が失った平常心を嘲笑うかのように、いろいろな文字に変化した。
前と後ろには鍵のかかるドアがあり、その一