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MaaSGlobalサンポ氏+CodeForJapan関さん+Forbes谷本さん「OMOとジョイントビジョン」【L&UX制作記②】

5月17日開催のUXとテックの祭典"L&UX2021"セッション2本目は、オンラインとオフラインで何かを為そうとする方々、ひいてはスマートシティやMaaS、行政や地方自治に関わる方々にとって目から鱗の回です。

■ セッション概要

5/18(火)18:00公開
共鳴する世界観 -エコシステムと社会貢献
Sampo Hietanen(MaaS Global) / 関 治之(Code for Japan) / 谷本 有香(Forbes)

「デジタルとリアルを融合させた新たなUXの社会実装」、特にスマートシティ、MaaS、行政サービスにおいては、個別の企業のエゴイスティックな目的に惑わされず、「社会善のための大きな目的やビジョン」がないと、多くの人を巻き込むことができず、推進力も発揮されません。

こうした実現に向けて、最前線のイノベーターたちは、どのようにして様々なステークホルダーの共感と理解を得て、どのようにして事を為しているのでしょうか。

皆さんもよく知る「MaaS」というコンセプトを世に打ち出した考案者であり、MaaSという概念を世界で初めて都市交通において実現したサービス”Whim”を運営するMaaSGlobalのCEO、Sampo Hietanen(サンポ・ヒエタネン)さんと、日本のシビックテックをけん引し、テクノロジーによる社会課題の解決の最前線で活動する、Code for Japanの関治之さんをお招きし、お二人の理想と現実での苦悩や学びを、Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香さんが紐解いていきます。


■ MaaSや社会実装のインサイトがあふれ出る

元々MaaS Globalという会社も、フィンランドのWhimというMaaSサービスも知っていたのですが、今回お呼びできたサンポ・ヒエタネンCEOが、「MaaSというコンセプトを世に打ち出し、かつ初めて実現した人である」ということに途中で気が付きました(お恥ずかしい)。WikiのMaaSのページにも、彼がコンセプトを打ち出した論文、"Mobility as a Service, the new transport model"が参考文献にも載っているほどです。

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彼が話すことには、MaaSを打ち出し成功させた本人ならではの説得力と風格が漂います。

「オンラインとオフラインが融合する現在、夢のようなことを実現しようとすると、イチ企業では成し得ないことばかりだ。しかし、その時にエコシステムを創ろうなんて簡単に言うけど、だいたいはそれぞれの思惑を表面的に寄せ集めた『エゴシステム』になってしまう。」
「オフラインは様々な権益が絡むのだから、みんなが心から望む『ジョイント・ビジョン』(繋ぎ合わさったビジョン)が必要だ。ジョイント・ビジョンとは人々がこんな生活になったら素敵だと感じる『夢』であり、『ユースケース』のこと。この時に『こんな車だったらいい』とか『こんな家電だったらいい』とか、ユースケースではなく製品起点になってしまうことは非常に多く、これでは全て失敗する。」
「夢を掲げるとき、テクノロジーを考えてはいけない。あくまでユースケース起点で考え、その実現のために『現在のテクノロジーでどこまでできるか』で考えなければいけない。僕は2006年からずっとMaaSの話をしてるけどその間、テクノロジーは次々と変わっていったよ。そんな流動的なものに踊らされてはいけない。」

すでに成功されているので、机上の空論や理想論にも聞こえることがなく、日本で横行するDXに対するアンチテーゼにもなっていて、一つ一つの言葉がとても重く感じます。

私の大好きな「社会善のためのテクノロジー集団」であるCode For Japanの設立者であり代表理事、関治之さんは、まさにそうした社会実装の様々なプロジェクトに現在進行形で取り組まれており、その経験から感じられてきた要諦や知見を、サンポ氏の発言に併せて、自らの中から引き出していきます。

「私はエンジニアなので、まさに技術の重要性を謳うわけですが、『行政や街で出てくるデータ、ちゃんと使えるようにしないとだめですよ』といっても全く何も動かないんですよね。結局のところ『何をやりたいんですか』『どんな社会にしたいんですか』というビジョンを伺うところからスタートすることになります。」
「一番難しいのは、技術を持つスタートアップやエンジニアと、行政や自治体とで、全く言語や思考が異なること。この橋渡しをするファシリテータがいるかどうかで、皆が同じ方向を見て成功できるかが決まってきます。」

こうしたインサイト溢れる金言が生まれるのも、Forbesの谷本有香さんの素晴らしい「問いの設定」によるもの。全編英語の中、世の中の情勢や違和感から切り込み、引き出していきます。

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■ OMOの本質とジョイントビジョン

OMOという言葉、私も広める側として2018年から活動し、アフターデジタルでも大きく取り扱いましたが、バズワードを表面的に捉える風潮が大きいことに悩ましく感じるところ。

どうしても「オンラインとオフラインを両方使う、そうしないとトレンドに合わないのでとりあえずオンオフ合わせておく」感が否めない昨今のOMOですが、アフターデジタルで言っているOMOとは「オンラインとオフラインを分けずに一体としてとらえ、これをオンラインにおける戦い方や競争原理から考える」という、デジタル融合時代の成功企業に共通する考え方、としています。

この本質は「すべてがUX起点で語られること」にあります。

例えば、アレクサなどのAIスピーカーを通じて「冷蔵庫の中身を確認して、いつも買っているものが足りなかったら買い足しておいてくれ」と頼み、足りなかった牛乳や卵や水が家に届くとします。

この「便利な体験」をビジネスプロセス側から見てみると、AIスピーカーからIoT冷蔵庫に指令が飛び、過去の購買履歴と照らし合わせて「この人は残り2つくらいになったら卵を買い足す」等を判別して注文を決め、このIoT冷蔵庫から近くのネットスーパーに、住所情報と合わせて発注され、ロジスティクスを挟んで家にモノが届きます。

この「便利な体験」を実現するには、様々な部署やステイクホルダーが、まさに「こんな生活を実現しよう」として協力し、同じユーザジャーニーを目指さないと実現しません。

OMOとは、これまでの「ビジネスプロセスを最適に組み、その制約を前提にして生まれる体験を消費していた」という構造から、「最良のUXを起点にしてビジネスプロセスを組み換え、その時にはオンラインもオフラインも分け隔てなく構成する」という構造への大きな転換です。

「それは理想論で、それでは儲からないんだよ」という方々がいますが、テクノロジーを活用すれば理想論でさえ儲かるようになった、というのが技術革新であり、だからこそ今OMOが注目されるわけです。UX起点で創ったプロセスの方をユーザは選び、仮に従来型よりも薄利だったとしても、大量のユーザがそちらを選ぶことでディスラプションが起きていきます。

Sampoさんや関さんが提言していることは、まさにこれと同じことを言っているのではないでしょうか。「最良のUX」を起点にするからこそ、同じいbジョンイ人が集い、実現され、新しいものが生まれていく。是非この議論の本編も、皆さんに見ていただきたいです。


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