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雲の中のマンゴー|#11 農業を新規事業に

この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。

Novel model Mango Kawamura 
Author Toshikazu Goto

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第11話 「第2章~その4~」

2019年8月初旬
黒岩玄の定年退職まであと8ヶ月。農業を研究すると思い立ち、イの一番に相談するべき相手であるとは思っていたが、登はなぜか相談できぬまま数ヶ月を過ごした。自分なりの判断基準をしっかり持ったうえで、黒岩に相談したいと思うようになっていたからだ。
ある日、登は総務人事部門で忙しく仕事をしている黒岩に内線を掛けた。

「はい、黒岩です。社長、なんでしょうか。」

「黒岩本部長、今週時間をいただけないでしょうか。サワムラの未来について話したい。」

「サワムラの未来?どうして私と?」

「まぁ、詳しくはその時に。明後日の16:00はどうですか?」

「分かりました、応接室を抑えておきます。」

黒岩との5ヶ月ぶりの1対1の面談。疑念の顔をした黒岩に対して、目をキラキラさせ登は吐き出すように問いかけた。

「玄さん、農業だよ!」

「はぁ?社長、何を言っているんです寝言ですか?」

さらに疑念が強まる。

「その後、マンゴーの話はどうなった?」

黒岩が全身でクエスチョンマークを表現していることなど、気にもせず矢継ぎ早に問いかける。

「マンゴーの話がそんなに気になりますか?それとも私の継続雇用拒否の意識変化でも確認したいのですか?後者なら変わらずNOですよ、何を言われても決めた事ですからダメですよ。」

「いやいや玄さん、そんなにトゲトゲしないでよ。実はねマンゴーに興味があるんだよ、ホントに。」

黒岩は、いつにない登のこの軽薄な感じ、今日の物言いが気になりつつも現状を答えた。

「マンゴー農場には会社の休日を利用し農業研修に行っています。残り8ヶ月で十分に習得することはできないと感じていますが、農業の純粋な栽培技術と工業管理の視点を入れながら、自分なりのマニュアルづくりを進めています。」

「そう、それは玄さんらしいね。で、そのマンゴー農場はどこにあるの?もし良かったら見学をさせてほしいのだけど、どうかな。」

「んん、社長何を言っているんですか?何のつもりですか。」

さらに疑念が募る。

「言っただろう、今日はサワムラの未来について話したいと。実は農業を新規事業としてやってみたいと思っている。すでにいくつかの農業スタイルを視察してきたのだよ。」

登の目が急に鋭さを増した。

「・・・・・・。。会長には?」

「ん会長?あぁ、新規事業の相談を春にしたけど農業をやりたいということはまだ話していない。いや、その時に話題の1つには上がったかな。それが?」

「いや.... まぁ。そうですか、変に勘ぐってスミマセン。と言っても、私の一存で見学を了承するワケにはいきません。マンゴー農場のオーナーへの確認が必要となりますので、返事は少しお待ちください。場所は富士岡市です。」


#12に続く。


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