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雲の中のマンゴー |#6 黒岩とマンゴー

この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。

Novel model Mango Kawamura 
Author Toshikazu Goto

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第6話 「第1章~その5~」

今回の訪中は、本社「黒岩玄の継続雇用の辞退」について、会長に電話で相談することがきっかけとなり、中国協力工場のマネージャーである「程杏の退職の話」が持ち上がったため、急遽中国東莞にきていた。キーマンが抜けることで多少の心配はあるが、それでも組織的にはここ数年、非常にいい方向に向かっていると改めて感じることが出来た。

帰国前夜、登は会長の一に声をかけた。

「親父、日本国内での新規事業を具体的に考えてみようと思う。」

登は一の反応を待ったが、返事がない。

「今回の、中国協力工場での程さんの退職の件や今までの労務管理の問題。それとサワムラ本社の継続雇用問題など、玄さんのこともあるし未来の企業の在り方って言うものを模索しようと思って。どうだろう?」

具体的な考えをぶつけてリアクションを促してみた。

「それで、玄のやつはどんな農業をやりたいと言っているんだ?」

一は、登の問いに答えず黒岩の状況を聞いてきた。

「えっ、オレの質問は無視なんだな。玄さんマンゴーなんだと。」

「ほうマンゴーか。なるほどな。」

一は顎髭(あごひげ)をむしりながら感心している。

「なるほどって。。なんだよ。」

親父はいつもそうだ。自分だけ分かっているふうな物言いが癪(しゃく)に障る。

「登、おまえ『静岡でマンゴー』というイメージはあるか?」

「いやマンゴーと言ったら普通、沖縄か宮崎というイメージだろ。」

「そうだよな。」

一は、登の返答に当然のごとく対応する。

「いいか、考えてみろ。マンゴーのイメージがない静岡でマンゴーを作るということは、近隣に競合が少ないということだ。分かるだろ、あの、あれだ、裸足の国で靴を売る話と一緒だ。」

「んん、そうかなあ。あの話は色々な解釈があったはずだし...。」

「まあ、それはいいとして。温暖な静岡といっても施設栽培のはずだからな。なるほど玄のヤツは・・・・。」

最後は聞き取れないほどの小声で妙に納得した顔で、一は呟いた。

「ん、施設栽培??」


#7に続く。


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