見出し画像

人が支配する宇宙②「宇宙の経済」

人が支配する宇宙②「宇宙の経済」

貴重かつ有用なものは価値が高く、それを持ち帰れば莫大な富を地に積み上げることができる。かつては香辛料・繊維・砂糖・茶・アヘン・奴隷などがあった。では宇宙が輸出すべき商品とはなんだろうか。それは次の条件を満たしている商品が望ましい。

・生産地が限られている
・需要が減らない
・かさばらない

現地で自給自足が可能な商品を輸出することはできない。必要なのに消耗品(奴隷や香辛料)であったり消費期限が短いもの(情報など)は安定した需要が見込める。また初期の貧弱な輸送力でも必要量を供給するため「かさばらない」ことも重要である。こういった商品を安価に供給できる場所からそうでない場所へ移動させて初めて利益を得られる。

たとえば加工貿易。商品をやり取りする港湾施設、広い土地や清潔な水や安定した気候、優秀な労働者と投資家を大量供給できる社会。これらの確保は意外と難しく、結果的に生産地が限られてしまう。

では改めて、宇宙が輸出すべき商品とは何か。月面の核融合燃料が期待されているが、地球で採取可能な重水素とトリチウムだけでも核融合は可能なので旨味が薄い。24時間365日ずっと供給される太陽光エネルギも産業用電源として魅力的だが、例えばデータセンタを構築して計算資源の輸出を試みても地球の砂漠でやったほうが簡単に見える。やはり初期の宇宙社会、特に地球と月の周辺では「高真空」と「無重力」が安価に供給できるため、これを利用した特産品が望まれる。

個人的には「半導体製造」あたりが無難に思える。半導体チップの材料、半導体インゴットを大型化すると利益率を上げやすいが、そのために低重力を利用する方法が提案されている。ほかにも半導体製造にはプラズマの発生や不純物の除去などで高真空が利用されている。また月面の砂を安価な太陽光エネルギで精錬することで高純度シリコンの供給が可能である。工場設備と洗浄用の高純水の確保ができれば魅力ある産業となり、ここからデータセンター構築などにもスケールアップが可能と思える。

最もこれらは最終消費地、つまり「需要」が地球にしかない時代の話である。ひとたび地球外に社会と「需要」が発生したならば、様々な物品が宇宙でやり取りされるはずである。とはいえ、まずは地球と宇宙の間で安価に大量の物資を輸送する手段がないと、工場の建設や材料と製品の輸出入が困難なのもまた事実である。こうなると再使用型ロケットよりも安価な輸送手段、例えば地球と宇宙をつなぐ鉄道のような輸送手段が欲しくなる。

参考文献

・宇宙の製造業(英語wiki) https://en.wikipedia.org/wiki/Space_manufacturing

・第19回大航海時代(NHK高校講座) https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/sekaishi/archive/resume019.html

・イラストでわかる半導体製造工程(SEMI) https://www.semijapanwfd.org/manufacturing_process.html

・1. 半導体製造工程(日立ハイテク) https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/process.html

・第3回シリコンウェーハは直径20mmから出発、450mmをめざす道程(TELESCOPE Magazine) https://www.tel.co.jp/museum/magazine/material/150430_report04_03/02.html

・宇宙に浮かぶ実験施設が生み出す、夢のような半導体の未来(TELESCOPE Magazine) https://www.tel.co.jp/museum/magazine/report/20210801/

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?