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台湾の教育事情3 台湾の教科書&参考書出版社 南一書局 創業70周年

 台湾のデジタル教科書とデジタル教育について、第1回、第2回と話しを進めている内に、そのデジタル化に積極的に関与してきた教科書出版社を取材してみたくなり台南にある南一書局を視察する事が出来た。南一書局は1953年に創業した。台湾で二番目に古い出版社だ。南一書局は、台湾に三つある教科書出版社のうちの一つで、他の二つは康軒文教事業社と翰林出版社だ。康軒文教事業社は学校経営も行っていて、3社とも激しい競争を繰り広げている。

 南一書局の本社は台南の工業区の中にある。社員は1000人を超え、印刷工場も自社で運営している。社内では、原稿から編集そして印刷まですべてワンストップで出来る体制を整えいている。学期開始前の繁忙期は印刷量が多く、印刷の多くは外注でも対応している。日本ではもう見る事の出来ない企業形態だ。小学校部門、中学校部門、高校部門の教科書、参考書、テスト問題の製作チームはそれぞれ100人近くのスタッフがパソコンを前に毎日製作に追われている。他にも幼児教育部門、絵本部門、知育教材(ゲーム)も作っている。

 なお台湾の教科書は概ね以下の分類で構成されているらしい。
小学校(国小)
数学、自然、社会、国語、芸能(音楽・体育など)
中学校(国中)
国文、公民、社会、歴史  自然、数学、英文
高校(高中)
国文、英文、生物、科学、地球科学、物理、数学、公民、歴史、地理

 台湾の教科書出版社のおもしろいところは、教科書と一緒に参考書も製作販売している事である。また、問題集や今ではデジタル教材も一緒に製作している。もう一点日本と違う点は、教科書の採用は、市区町村ではなく、学校側に一任されているそうである。学校(校長)が決める学校、学年で決める学校、場合によってはクラスの担任が選べる権利を学校側が付与しているところもあるらしい。そのため教科書出版社間の競争はそれなりに激しいらしい。

 南一書局の蘇董事長と林副総経理と対談する事が出来た。
「教科書出版社の競争はとても激しく、自社の教科書の独自性以外に参考書の充実度や内容、また学習効果によっても判断される。さらには、デジタル化が進むと各社とも積極的にデジタル化とその付随サービスを製作提供できる環境を学校、教師、生徒に提供してきました。過剰なサービスを提供してきました。決して楽な仕事ではありませんよ」と話してくれた。

 しかし、前回紹介したC社の出現によりこれまで蓄積した技術やデータが日の目を見る時期に来たのではないだろうか。なお、南一書局のとても大きく立派な董事長室で話しを聞かせて頂いたのだが、逸話があるようで、「先代の董事長の時にこの部屋が出来たのですが、結局先代董事長は一度もこの部屋で執務をした事はありません。工場長の隣の小さなデスクでずっと現場を見ながら仕事をしていました。今でもこの部屋はお客様用にしか使っていません」と三代目の蘇董事長は謙虚に語ってくれた。

今回でいったん「台湾の教育事業」レポートは終わりにします。何か質問やリクエスト、ご意見などあればお寄せください。

今後も、「台湾のXX、観光、歴史、グルメ、スポット、ビジネスなど」や「日本のXX、神道佛教儒学、政治、時事、意見」そして「プライベートの楽しみ方、クルーズ、ダンス、お茶、和歌」などなど思いつくままに綴っていきたいと思います。何か、リクエストがあればぜひ教えてください。
ありがとうございます!


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