見出し画像

ハロウィーンパーティーにおけるTPOについて

四半世紀以上生きている日本国民なら、誰しもが思っている事実

ハロウィーンっていつから始まったんだろう・・・

今をときめくティーンエイジャーであれば、生まれた時からハロウィーンは「デフォ」なのかもしれないが、私のようなアラサーにとっては、いつ何時から日本国民がハロウィンを意識し出しだのか、全くわからない。気が付いたら民衆の頭の中には、ハロウィーンだぜ!というお祭り感があり、これはもうどこかでマインドコントロールをする”機関”が存在しているに違いない。

まぁ、とはいえ、社会人になってからはハロウィーンなんて全く関係なかった。ショッピングモールの装飾がオレンジ色になっていても、ディズニーランドの広告でミニーマウスが「キャ〜(真顔)」みたいな表情をしていても、10月末だね。月末締めということで、売り上げ申請をせっせと上げるね。くらいのテンションだった。

しかなかった。しかなかったのだが・・・。

それは、突然始まった。
「ハロウィーンパーティ開催します!全員参加ね!」

うちの会社の中でもズバ抜けて能力の高い美人の部長から、そうお達しがでた。それは、本部会議だった。10月から新本部結成ということで、これからどういうドメインで何をしていくか。パワポを使ってKPIやらなんやらを真面目に管理職たちが説明した後の出来事だった。
365日ハイヒールの美人部長がカツカツと現れ、「ところで!10月といえば!」と言うと、紫色のファンシーなスライドがパッと現れた。あら〜かわいいね。かぼちゃやコウモリのイラストが入ってるね。よく見てみると、(仮装必須♥)・・・???

えっ、仮装・・・?

皆が、戦慄した。

その日から、上下関係関係なく、社員同士の探りあいが始まった。あの課はチームでやるらしい、大人しいあの子が「千手観音」という単語を発していた。。など。。。

なにしろ、私の会社の人たちは体育会系ではないので、こう言った”ノリ”はあまり慣れていない。とにかく、羽目を外したり大爆笑を狙ったりなどの奇をてらったことが本当に苦手なのだ。オール文化系。しかし、一応クリエイティブ系の職種なので、手を抜いたり失敗をしても「オーイそれでも企画の人間かよ!」と言われてしまうだろう。そして、これまた恐ろしいことに美大出身者が3分の1を占めていた。これはもう、何が起こるかわからない。(えるしっているか、びだいせいのそつぎょうしきを)

そんなわけで私はかなり悩んだ。
一体、会社のハロウィーンパーティーって、何を着ればいいのだ・・?

迷った時のインターネッツだが、「ハロウィン 仮装」とか検索しても意味がないのだ。どうせ、ゾンビとかミニスカポリスとかドラキュラとか出るんでしょ。ほらやっぱり。。とりあえず、色々な人に相談してみるしかない。

まずは3年目の後輩女子(別部署)に相談した。彼女は渋めの顔をしながら「昔、草間彌生の仮装をしたことがあるんですけど、お前それモノマネだろって言われて・・。っていうか、仮装とモノマネの違いって何ですかね?」という話が妙にツボに入ってしまい、自分が何を着るかという話はどうでもよくなってしまった。

その次は、友人との会話を思い出した。この友人は私の中で三大狂人と言われているうちの一人だ。己の知性や語彙力が低すぎて、彼女の面白さを文面で伝えることは難しく、説明は省きたい。彼女との共通の友人(これまたこの人も三大狂人なのだが)が結婚することになり、10月頭に新婚ハウスに遊びに行くことになったので、ハロウィンを意識して適当に仮装でもするかという案が上がっていた。その際に彼女と「初対面となる友人の旦那さんに、いい塩梅に『嫁のヤベェ友人たち』と思われる仮装をしよう」という話になり、「黒スーツを着てうさ耳を着け、まるで何事もないように会話をするのはどうか。ヤバめの集会みたいに。」というアイデアが彼女から出た。秘密結社かな。思想的に頭のおかしい友人がいることがバレて、新婚夫婦の仲を引き裂いてはならぬ、という危機を察知し、当たり前だが却下された。(そして面倒臭くなって新婚夫婦のお宅には普通の格好で行った)

ここまで来て、私の「仮装アブノーマルゲージ」はこのようになった。
*仮装自体がアブノーマルだとかいうのは置いておいて

ゾンビ・ドラキュラ・ナースなどの定番(ノーマル)<<<草間彌生などのモノマネ路線(ちょいアブノーマル)<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<スーツを着てうさ耳をつけ、何事もないように会話をするといった意味不明行為(かなりアブノーマル)

ここのノーマル/ちょいアブノーマル/かなりアブノーマルの壁を一つでも超えると正直、かなり場の空気が変わる。そう感じていながら、どの壁まで越えていいかわからない。しかし、確実に言えるのは「会社」というTPOを考えると「かなりアブノーマル」の路線は超えてはならないということだ。うさ耳にスーツを着て「え?何か?」みたいなことを言ったら産業医との面談を勧められてしまう。

かつ考えなければいけないのは、私自身のキャラクターや見た目の問題。仮装で大事なのは、その人の見た目から近しいものをセレクトすることだと思う。もちろん、おじさんが女装をするという逆転の発想も最高にクールなのだが、いかんせん微妙な入社6年目の女だ。髪が長いのでウィッグを被らなければ男性風の仮装は難しい。会社ではムードメーカー、お調子者、厳しいストイックマン、包容力のあるパイセン、愛され後輩キャラ、という部類にマジで何も入らない。人の話を聞かずにニヤニヤしている。滑舌が悪い。顔が薄く、目力がない。
・・・列挙してたら悲しくなってきた。

とにかく上記で絞り出した結果は以下である。
・ガチの男装は厳しい(ウィッグを買うほどお金をかけたくない)
・とはいえ「かわいい〜❤︎」といわれる女性ものの何かも違う
・他人が理解に苦しむものはNG

そこから考えに考え、苦し紛れに導き出した”私に似合うベスト仮装”は、
「①パフォーマンス系の書道家のおっさん(髪を後ろに結ぶ)
「②主婦さん大歓迎!なスーパーのアルバイト募集広告の人
「③コールセンターのフリー素材」だ。
そして、さらに私の中で「仮装サミット」を行い、慎重に協議を重ねた結果、③の「③コールセンターのフリー素材」の仮装に決定した。

(これなら衣装を買わずに、スーツとマイクのついたヘッドホンがあれば大丈夫だぜ〜!イェイ!)

*****************

いざ当日。会社のハロウィーン会場に向かう。
仕事が残っていたので、後追いでの参加になった。既に皆さんは仮装準備ができており、乾杯も済んでいるらしい。会場の雰囲気がわからず、足取りが重い。

課長が予約した妙にオシャレなスパイス系料理のお店の前にたどり着く。木目調のドアを開け、カランコロンと鈴が鳴った瞬間

完全にやっちまったな感に襲われた。

こういうのとか・・・・・・・・・・・↓

画像2

こういう人ばかりで・・・・・・・・↓

画像3


あ???????え???????あれ????????なんか?????????思ってたのと?????????ちが・・・
おやおやおやおや・・・・・・・・・

いわば、私が予測していた「ハロウィン 仮装」で検索した時にGoogleのトップ画像に出てくるイメージですなぁいやまさかまさか。え?なんで?え?うちの会社の人って、もっとシャイで変な人たちじゃないっけ?え?ドラキュラ?かぼちゃの着ぐるみ?あっ、そっちはワンピースのナミ?え???????ここは渋谷??????「パフォーマンス系の書道家のおっさん(髪を後ろに結ぶ)」とか、例外すぎない???????

唖然としていると、ピーターパンの格好をした後輩が無邪気に寄ってきて、「お着替えスペースはこちらです!ごゆっくり!」と誘導してくれた。安心してほしい、白塗りのジョーカーや魔女っ子の仮装とは違ってコールセンターのフリー素材なので時間はかからない。

後輩「皆さ〜ん!(私)さんのお着替えが終わったらもう一度乾杯しますよ!!」(マイクつきで)

地獄?

着替えが終了し、扉を開けた瞬間。他の課の課長(パイレーツオブカリビアンのコスプレ)が、眉をしかめたのがわかった。

後輩「あっ(私)さん着替え終わりましたね!スーツ?ヘッドホン?さてこれは一体!なんの!仮装でしょうか!デデン!」

画像1

私「えーっと・・・コールセンターのフリー素材でぇす(小声)」

後輩「お〜」

(失笑の声)

*****************************

お笑い芸人の人が言う、「完全に滑った」とはまさにこのことだ。身をもって体験してしまった。まさかハロウィーンで。近年のイベントハロウィーンで。しかも、会社の飲み会で。
後から来る人たちに「え?(私)さん、それ、何の仮装?」と聞かれ、いちいち説明するたびに帰りたくなったけど、帰らなかった。燻製焼きの鴨肉をひらすら食べた。

これでわかった。会社でハロウィーンパーティーはやってはいけない。全国の幹事の人たちは肝に銘じてほしい。こんなに空気を読むことを必要とし、失敗した時のダメージが大きいイベントはやってはいけない。TPOという言葉があるが、もうだめ。ハロウィーンでTPOとか本当にだめ。というか、ハロウィーンってもっと宗教的なイベントのはず。悪魔祓いのためのものでは・・・ってまさか、悪魔=TPOなのか?!

週明け、部長がハロウィーンの集合写真をアップして皆に共有してくれた。かぼちゃやドラキュラや血塗りの魔術師の中に一人、グレーのスーツのヘッドホンをした女が薄ら笑いをしながら写り込んでいた。

来年のハロウィーンは、無難にマリオの仮装をしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?