見出し画像

【短編小説】13.どこだ、どこだ【その角を通り越して。】

前の話



暗くなった小屋の中では
いつの間にかドワーフのレリオンがランプに火を入れていた。

それはとても当たり前のように作業をしていて
扱いずらいこのランプのホヤをいとも簡単にずらす姿を見て
目の前にいる小人は昔からこの部屋に通っていたのだと実感する。

と。
彼は見頃の時間になったと言いながら
僕の作ったお気に入りのグラデーションのキャンドルを灯し始めた。

勝手にお気に入りのものを触られているのに
嫌な思いがしないのはなぜだろう。

構わず、僕はおばあちゃんの日記を読み進めた。

またどれくらい経っただろうか。

「これが星空の作り方じゃ」

僕はその声と同時に日記から顔をあげた。
声にならない驚きから、僕の全身に鳥肌が立つ。


息が止まるかと思うほど美しかった。

そこはただの空間ではなく
とても明るくて、小さくて、
キラキラとした空気が渦を巻いて漂っている。

その天の川のような空気の渦は、少しだけ開いていたドアの隙間から
すーっと外に流れていって、どんどん空へと昇っていった。

何だこれは。



次の話




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?