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毎日が試行錯誤~フリーランス編集者の日常

去年の5月に、勤めていた職場を辞めて、フリーランスになった。
それまでも副業的にライティングや編集の仕事を受けたことはあったけど、完全に通うべき職場がないフリーランスになったのは、これが初めてだ。
37歳にして、まったく新しい人生のはじまり。

それから五里霧中でどうにかこうにか生きてきて、ようやく1年が経った。
うん「ようやく」って感じ。この1年は長かった。
なにせ、ひとつひとつについて誰も教えてくれる人がいない。たった一人で、すべてのことを考えて、判断して、選択して、生きていかなきゃならないのだ。

フリーランスの生活を一言で言うなら「自由」だ。
……あまりに当たり前のことを言ってしまった。そもそもフリーランスってそういう意味だよね。
そんなことはフリーランスになる前からわかっていたことだけど……頭でわかっていることと、実際にそれで生きてみることは、全然ちがっていた。

自由――そう、何もかもが自由なのだ。決められていることは何もない。あるのは「しめきり」だけ。
しかもライターはともかく編集者の場合、その「しめきり」でさえたいていは自分で決めているのだった。

ここでフリーランス編集者の一日を考えてみよう。
朝、目を覚ます。
実はここからすでに「自由」がはじまっている。
何時に起きるか、というのがすでに自由だ。出社時刻がないから遅刻もない。昼まで寝ていようが誰にも怒られない。というか怒ってくれる人はいない。
とりあえず目が覚めてしまったので起きる。さぁ、何時から仕事をしようか。これも自由。なんなら今日をいきなり休日にしてしまってもいい。それも自由。
いつ起きるか、いつから仕事をはじめるか、何時から何時まで働くか、いつ休憩を取るか、いつ寝るか。
会社に勤めていたときには、誰かに決められていて、そのことがとても煩わしかったそれらが、全部自由。
それだけ聞くと、天国みたいに思える。うらやましい~という人もたくさんいそう。
だけどこれが、結構難しい。だって自分で決めなくちゃいけないんだから。

ありがたいことに、仕事は結構ある。
がんばって営業活動をしているつもりは全然無いんだけど、これまでやってきた仕事でつながった人たちや、フリーランスの登録サイトで僕を発見してくれた人たちから、いろんな仕事をお願いされる。
それこそ、10年以上前に勤めていた職場の元同僚から大きな仕事をもらったりしていて、今までただできることを一生懸命してきたのが、よかったんだなぁ、なんて報われた気持ちになったりしている。

仕事はあって、しかも自分でいいと思える仕事しか受けていないから、僕自身だってちゃんとやり遂げたいと思う。
クライアントさんはみんな信頼できる人たちで、期待に応えたいとも思う。
だからこそ、「いちばんよくできる働き方」をしたい。
単に一生懸命たくさん働けばいいってものではない。
無理をしすぎて、途中でダウンしてしまっては意味がないからね。
単発のライター仕事ならともかく、書籍編集の仕事はたいてい半年とか一年の、長丁場なのだ。

僕自身の特性のこともある。
僕はいわゆる「大人の発達障害」というやつで、かなりADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある。
飽きっぽくて、マルチタスクが苦手。
気が散ることがあると何も手につかないけど、逆にいったん集中タイムに入るとまわりのことはなにひとつ見えなくなる。
「過集中」の間はものすごく頭がフル回転して仕事も進むけど、終わったらぐったりと疲れて動けなくなる。
なによりもめちゃくちゃ疲れやすくて、長時間の活動には向かない。
そういう自分の特性を誰よりもわかっているのは自分自身だ。
せっかくすべてを自分で自由に決められるのだから、できることなら自分に合った働き方を見つけて、自分の能力を最大限引き出したい。

だからこそ。毎日が試行錯誤。
朝早くから仕事をしてみたり、逆に集中できる真夜中に仕事を回したり。
一日に何度も仮眠をとってみるとか、昼休みを三時間にしてみるとか。
朝に一日の予定をきっちり立てた方がいいかなとか、いや逆に、やることリストだけずらっと書き出して、気が向いた順に働いた方がいいかなとか。

なによりADHDらしい「先延ばし癖」と「いつ集中タイムがくるか自分でもまったくわからない」という特性が強敵で、なかなか「これだ!」という働き方が見つからないんだよね。
もしかしたら、極度の「飽きっぽさ」をもつ僕は、働き方でさえもこんなふうに、ぐるぐる変えていくしかないのかもしれない。きっちり決めてしまったらそれに飽きてしまうから。

まぁ、僕の人生経験上、こうやって試行錯誤して、悩んで迷って、必死で生きていくこと自体が、ずっと後になって振り返ったとに自分の強みになっている。
今の僕をつくっているのは、過去の迷いたちだったと、断言できる。
だから、きっと、これからも。

試行錯誤は、終わらない。



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