『フェイブルマンズ』じんわり傑作

良かった。優しい。観るもの全員に寄り添ってくるスピルバーグからの置き手紙のような作品。映画って最高だよな！俺は撮る側だけど観る側も最高だよな！とずっと御大に言われ続けているようで観ていて背筋が伸びる思いでした。

主にスピルバーグ幼少期と学生時代のエピソードを基に描かれている静かな展開ですが、両親の物語もアンサンブル的に描かれていて、上映時間の長い作品ながらも飽きさせない。私がこうなれたのもすべて家族の協力のもとに叶った夢であると聞こえてきました。フェイブルマンひとりの物語ではなくフェイブルマン”ズ”の物語なんです。

映画のなかで映画を撮る作品にハズレなしと思っているのですが、スピルバーグの手にかかればメタ思考制作も思いのままかと。映画で人の心を支配できるというニュアンスのシーンはいくつか出てくるのですが、そのシーンで客を支配しながらさらにその枠の上からも支配されているような、どこまでも観客の心を掴む映像作るのうまいな～と思ってしまいます。

すべての出来事には意味がある。本作のキャッチにも使われている一文ですがまさにその通りの内容で、人生で起こることすべてに意味があるんだよと優しく説いてくれます。

「えっ？スピルバーグの全作見直さなきゃじゃん？」となるラストシーンが良かった。罠にまんまと引っかかったとも言えるのだが、映画観をしっかりと変えてくれる罠だと思います。