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コーヒーはずっと無料で飲んでいる?!韓国/ソウル在住【ライフデザイナー】との出会い(2)



前回、韓国/ソウル在住【ライフデザイナー】との出会い(1)を書いたのだが、いろんな記憶を辿りながら書いているうちに僕の珍道中がいき過ぎてファルさんの話にまでたどり着けなかった(反省)


今回はちゃんとファルさんの話をしようと思う。


ファルさんはその当時(2010年頃)、ハジャセンターというフリースクールを立ち上げとアートディレクターとして、「ライフデザイン」といわれる広域なジャンルの先生をしていた。

その、ライフデザイン授業の一貫なのか、猫がいるインドカレー屋を立ち上げたり、学校内にお金を介さないカフェレストランを作ったり、学校の木工室でなんやら学生達とSNSを活用した自給自足のタイニーハウスを作ったりしていた。(何なんだろこの人と当時思っていた。。。)

猫がいるインドカレー屋(ソウル)

ある日、ファルさんとコーヒーを飲んでいただが、、ファルさんがニコニコしながら僕にこう言った。

ファル:コーヒーずっと無料で飲んでるんだよ。


僕:無料すか?なんか大量にコーヒー豆を送ってくれた人がいたとか?

ファル:いや、前に知り合いのカフェのインテリアを任されて、テーブル作ったり、椅子作ったりしたんだけど、お金もらってやっても面白くないと思って、インテリアの施工費とかいらないから、お店をいつか閉店す日まで、コーヒー飲ませてって言ったんだよね。

実際、大人1人分のコーヒーくらいお店にとってもそんなに大変ではないし、俺は無料だからいつも友達連れてあのカフェに遊びに行くんだよ。笑
お店にとってもいいし、もし、俺がお金なくなってコーヒー1杯を我慢しないといけなくなっても、友達連れてずっと遊びに行けるしね。


僕:ほー。。


僕はコーヒーが大好きだけど、とにかく貧乏で、どうすれば無料でコーヒーを飲めんのかって事ばかり気になっていた(笑)今思うと、ファルさん自身、無料でコーヒーを飲むためではなく、お金を介すだけではない仕事や人との関係性。もう少し有機的な人との関係性や共に生きているという感覚を日常を通して実感できる暮らし方。

そういった視点を持つ事で生まれる可能性について僕に伝えてくれていたのだろう。


そんな、デザイナーとしてのファルさんは、僕が働いていたクラブにもよく遊びに来ていて、クラブでの爆音の中、僕と話してた事といえばずっとライフスタイルの話だった。あんな声が聞こえづらい場所で、よくそんな生きるとか暮らしとか意識とか熱く語っていたなと今でも不思議に思っている。。

当初僕は、ファルさんに対して、変わった人だけどなんかずっと喋っていられるなこの人と思っていた。。


実は、話を聞いていくと(自分からは一切話しないが)昔は有名な産業デザイナーとしてのファルだったらしい。
 

ファルさんは、弘益(ホンイク)大学校(有名な美術大学である)で産業デザインを勉強し、 映画のアートディレクター、CF監督、インテリア デザイナー、現代美術作家として活動していた。

数々の有名なデザインはあるが、なんといっても有名なのは、通信業界を魅了したキャラクター【ホールマン】だろう。


僕が聞いた話の1つにこんな事がある。

韓国において、 ‘ホールマンの父’と呼ばれて全盛期を迎えたファルだったが、当時、満足は出来ず、商業的成功とは違ったより高い段階というか、精神的な部分を追求したい気持ちが強く、物質やデザインのようなものでなくスピリットをデザインする世界へ行きたいと思っていた。
そして商業的に成功しているデザイナーの先輩達の中で、デザイナーとして私がロールモデルと言える程の人には出会えなかった。 特に魅力的に感じることもなく、その人々がその位置にどのように上がったのかを、年を取るにつれて、見えてくるようになったのだ。 そして私は別の道を歩む事にした。と。。


当時、産業デザインの事など、まったく知らない僕にとっては完全に別世界の話だったのだが、なんとなく自分の暮らしのリズムやパターンを客観視し始め、人が(自分も含め)どんな枠の中で考え、過ごし1日を終えているのだろうかって事がどんどん気になり始めていた。


そうしてファルさんは、産業がすべての暮らしを脅かしている時代であることに気づき、産業デザイナーをやめ、暮らしや生き方をデザインする‘デザイナー’【ライフデザイナー】になる事を決めたのだった。

その後、ライフデザイナーとして手掛けたのが有名な【ロウソクのあかりの少女】とゆうキャラクターだったのだ。

【ロウソクのあかり少女】は当時、アメリカからの牛肉の輸入を通して、安く牛肉を普及させようという国の動きに反対し、始まったと聞いた。食への不安そして、韓国国内の畜産業界は大きなダメージを受ける事になる。

そういった時代に、光化門(クァンファムン)に出てきた女子高生等を見てキャラクターを作ることになったのだが、まず、著作権を手放したのが大きかっただろう。
 
著作権をフリーにした後、どんどんキャラクターは広まり【ロウソクのあかりおばさん】【ロウソクのあかりフリーター】【ロウソクのあかり予備軍】などなど、数々のキャラクターをファルさんではなく、他のデザイナー達が繋ぎ、生み出していった。

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それを通して、時代がデザイナーに要求することが何なのかを改めて気づいたと言う。


・暮らしをどのように生かせるのか
・暮らしを苦しめるのは何だろうか
・暮らしをどこからどう切り替えていくのか


’このような話題で現在(2020年)も都市での住居問題、自給生産、生活技術、移動手段、エネルギー転換、コミュニティ空間などの表現を次々と発表している。

僕自身楽しく生きる事/遊ぶ事に一生懸命だった。ただ、何か物足りなさを感じていた僕は、楽しい生き方や遊び方に対してもっと多様な視点を持ちたかったのだ。そうして「生きる」とは?「暮らす」?とはという事にも疑問を持ったまま、その気持ちを何も表現出来ないもやもやを抱えていたのだが、そのすべてを吐き出せる唯一の人だった。そうして、クラブで働きながらも、なぜかファルさんのいるフリースクールに通い続けた。


朝はエスパニョールというカフェでホットコーヒーを飲み、ファルさんのオフィスに向かい雑談を続け、クラブへ出勤する。そして夜は夜でクラブでファルさんと会い話の続きをする。

そんな生活を6ヶ月以上続けていたと思う。。

特別何かをするわけでもなく、ファルオフィスに夕方まで居続ける僕をファルさんはどう思っていたんだろうか笑


会うたび会うたび何かイメージを具現化し、表現していく事に没頭していた姿を今でも覚えている。

そうして、少しずつファルさんの事を知っていったのだが、
何か違うレイアーをひょいひょい飛び越えながら、当時周りにいた人達とは違った世界観を楽んでいるように見えたファルさんの事を、知れば知るほど気になるようになっていった。

ライフデザインについて


ライフデザインについて、当時2009〜2010年、ファルさんが僕に、話してくれた事をnoteを書きながらふと思い出した。

暮らす事(生活方式)を軸に、住居形態や、エネルギー問題、孤立の問題。そういったものを作品として、発表を続けていたのだが、そもそも何を伝えようとしていたかというとお金が無くても楽しく生きる事についてなのだ。

お金を稼がず、ダラダラ生きていこうという事ではなく、資本主義のシステムの上で暮らしている以上、お金なく生きる事自体が厳しくなっているし、最低限のお金は必要かもしれない。
ただ、生活すべてをお金を稼ぐ事、賃金労働もしくは、賃金労働の準備をするという事だけに時間を使ってはだめだという事。

お金ではないものを作り出したり、生産したり。そういった時間を暮らしの構造として確保していく事で、険しかったり、不安と隣り合わせな時代を生きていける(生き延びていける)のではないか。

生活の中で、多様なレイアーを確保し、行き来していく事が大事なんだと。

***


あれから12年。


韓国を訪れるたびに今でも、ファルさんとはお酒を交わし、いまだに個人的な恋愛相談からライフスタイルの話まで幅広く語っている。そんな中、僕が日本から友達と韓国へ行くようになり、ファルさんともみんな親しい仲になっていった。

共に何かを企画したり、イベントしたり以外は、海外の友達といつもこんな感じでゆったり遊んでいる。

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普段から、海外から来る友達の事を思い、15時のおやつでキムパ(海苔巻き)を大量に買ってくる(みんな夕飯前の軽食の量に衝撃を受けている)ファルさんは、よく僕を訪ねて日本に来るようになって、いつのまにか2人ともずっと日韓を行き来する日常になっていた。

今では、ソウルのファルさん家で偶然、日本にいる友達とバッタリ会うくらいのホットスポットになっている。うれしいな。

最近では、作家としても活動しているファルさん。

変化がより求められる今の時代。
今も変わらず変化を続けるファルさんをもっと知っていきたいと思っている。


そして、最近ファルさんはこのような作品を作っている。
日本で販売出来る数はまだ少ないが、もしよかったら見てみてください。
https://www.wattagatta.com/pages/3590988/page_202002171247

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そして次回は、ファルさんに直接

【今】に至るまでのライフストーリーや、原動力はどこからきているのか?
そしてどんな未来を描き【今】を生き、何を考えているのか?をお聞きしたいと思います。

これから私たちが歩んでいく新しい時代。
豊かさの大きな指針になるかもしれない。


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ノーマネー経済センター長とはいったいなんなんだ?! 


【WattaGatta colum/ワッタガッタ コラム】 カテゴリー:LifeStyle/culture

ワッタガッタコラムとは?
主に日韓を中心に、LifeStyle/Culture・Art/音楽・食・ものづくりなどのプロジェクト通して関わる素敵な方々も、対話のゲストとしてお呼びしたり、オンラインでのインタビューや関係する様々な文化活動の紹介なども記事にしていきます。


次回は、韓国ソウル在住【ライフデザイナー】ファルのコラムの掲載を予定しております。乞うご期待!

【harumin/ファル】のプロフィールを簡単に紹介したいと思います。


【harumin/ファル】

ファル


2000年代初期、通信社広告キャラクター【ホールマン】を作り旋風を巻き起こし、2008年には【ロウソクのあかりの少女】が、韓国人に影響を及ぼした50のデザインに選ばれたグラフィックデザイナー。
 
それ以外にも、暮らしデザイナー/ライフスタイル冒険家/考えの収集家/ノーマネー経済センター長/残額不足初期族長/ノンマスター/多拠点居住ライフスタイルのための居場所賃貸業者./昼間時間プランナー という様々な肩書きと共に活動する。
 
産業がすべての暮らしを脅かす時代であることに気づき、活動を通して産業デザイナーから暮らしデザイナーに転換。「暮らしをどのように生かせるか」 「暮らしを妨げるものは何か」 「暮らしををどこから転換させればいいか」など様々な暮らしを通して生まれるキーワードから都市での住居問題、自給生産、生活技術、移動手段、エネルギー転換、コミュニティ空間作りにアクションをおこす。
 
また、近隣の森に2年間通い、自身の持つ「暗闇」を絵で表すことで治癒するという独自の経験を通し、描いた点画やメッセージで構成された『この頃、山描いています』というドローイング本を2017年に出版し、韓国はもちろん日本国内でも出版トークイベントなどを展開、現代都市の生活においても、常に自然を意識することができる機会をより多く作るため、現在も森のイメージを中心に作品制作を継続しており、1ヶ月に1度のペースで、『自身の命のエネルギーを発見しよう』という、ライフデザインワークショップを企画している。

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次回も宜しくお願いします!

活動を通して関わる素敵な方々も対話のゲストとしてお呼びしたり、オンラインでのインタビューや関係する様々な文化活動の紹介なども記事にしていく予定です。 取材や情報発信を続けていけるよう、よろしければサポートよろしくお願いいたします。