やる気はやりはじめないと出ないらしい。じゃあ、やりはじめる力はどうやったら出るんだ?
#20230417-78
2023年4月17日(月)
新学期、第2週目スタート。
先週のうちに給食もはじまったし、まだ身体測定や歯科検診などの健康診断がいくつか残っているが、少しずつ通常授業のリズムが整いつつある。
ノコ(娘小4)は下校すると、まず「おやつは?」という。
促さないと、学校からのお便りを出し、給食袋を空にすることはしない。その習慣は春休み中に忘れてしまったようだ。
おやつを食べると、次は外遊び。
「外、行っていい?」
17時までに帰宅することを念押しすると、「わかってるって!」とうるさそうに飛び出していく。
17時に帰宅。ここまではよい。
宿題を後回しにして先に外で遊んだのだから、親心としてはすぐ宿題に取りかかってほしい。私は18時の夕飯を目指して、料理すべくキッチンに立つ。
だが、そうスムーズにいかない。
宿題タイムになった途端、ノコは学校であった嫌だった出来事、さっきまでの外遊びで起きた嫌だった出来事を話しはじめる。そういう話は下校直後、外遊びに出る前にしてほしいが、そうはならない。
その時点ではおやつと外遊びをしたい気持ちでいっぱいなのだ。
そのうち、テーブルを離れ、カーペットに引っくり返り、静かになったかと思うと泣きじゃくりだす。
さすがに放置はできない。
料理の手を止めて、ノコのところへ行き、やさしく身を起こして膝に座らせる。
ノコの背中をなでながら、ノコが話した嫌だった出来事を繰り返す。
「休み時間にせっかくサッカーに混ぜてもらったのに、ボールをまわしてもらえなかったのは淋しかったね。ひとりぼっちの気分になっちゃったんだね」
「国語の授業で班発表のときに、ノコさんの意見は加えてもらえなかったんだね。せっかく発言したのに、私の意見はどこに行っちゃったんだろうって悲しくなったんだね」
ひとつ、ひとつ、ノコの耳元でささやく。
のけもの。
ひとりぼっち。
ないがしろにされた。
ノコの心は悲しさと淋しさとひとりぼっちであふれている。
多分、周囲の子たちは意図してノコを排除しているわけではないだろう。たまたまノコがボールをまわすのにいい位置にいなかったり、ノコの意見が伝わらなかったのだろう。
そう思うが、ノコが「孤独」を感じる心を否定してはならない。
そう感じちゃったのだ。
感じちゃう心を跳ね返せるようになるのは、ノコの場合、まだ先のことだろう。
まずは力強く踏ん張るための足元作りをせねばならない。
「ノコさん、悲しいとどんな感じがする?」
「心がきゅうと苦しくなる」
「ノコさんの心はどのへんにあるの?」
「・・・ここらへん」
ノコが首の付け根、胸元に手をあてる。
「ここがぎゅううううってなって、息ができなくなって、爆発しちゃう」
「え、今、爆発しちゃった?」
抱き締めていたノコをゆっくり離し、顔を見る。
「まだ爆発してない」
「じゃあさ、爆発しちゃったときを10。なんともないときを0だとしたら、今の苦しさはいくつくらい?」
「・・・5かな」
「5かぁ・・・ 5だとまだ宿題ははじめられない感じかな?」
「無理」
「いくつならできそう?」
「3・・・ううん、0じゃないとできない」
「そっかぁ・・・」
5を0にする。
さて、どうしたらいいのだろう。このまま抱っこして抱き締めていれば減るのだろうか。
ノコを優先すべきだと思っていても時計が気になる。夕飯、入浴の時刻が後ろにずれればずれるほど、睡眠時間が減り、総合的に見ていいことがない。
「ぎゅうしたら、0になる?」
「楽しいことをしたら0になる」
「楽しいことってなに?」
「遊べばいい。ねぇ、ママ、じゃんけんしよう。ママはパー出して」
最初から指示されてしまう。勝てば気分が上がるのだろうか。それとも負けるつもりか。
「勝ったら何かするの? 負けたら何かするの?」
「勝ったらくすぐって。負けたらぎゅうして」
それなら、どちらでも私はいい。
「じゃあ、普通にじゃんけんしようよ」
ノコが勝ち、私はノコの体のいたるところをくすぐる。ノコは大笑いをして体を右に左によじる。
「0になった?」
「0になったけど、宿題のやる気は出ない」
うーーーん、一筋縄でいかないな。
「やる気はね、やりはじめないと出ないらしいよ」
「でも、そのやりはじめる力が出ない」
「そっかぁ、出ないかぁ。まずはテーブルにつこう。そんでさ、ドリルを開いて、1問解いてみようよ」
「ラムネくれたら立てる」
「はいはいはい、立って椅子に座ったらラムネ1粒、1問解いたらもう1粒あげるよ」
ようやくようやくノコが立ち上がる。
本人のための宿題にどうしてこんなにこちらがお膳立てをせねばならないのか。
やらずに学校に行けば、先生が何かしらいうだろう。そうしたら懲りるかもしれない。
ただやらないと宿題はたまる。
たまって量が増えれば、気が重くなり、宿題の内容がどうこうでなく、やりたくない気持ちが強くなる。
学びの中身を知らず、闇雲に学ぶことを嫌いになってほしくない。
ホーント、それだけ。
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