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『ぱんぱんでんしゃ』著者×編集者スペシャル対談前編 ~子どもが楽しめるエッセンスが盛りだくさん! 大人気絵本の秘密にせまる~


月刊絵本「ころころえほん」に2019年初登場し、2023年に市販化されてからも保育園や幼稚園をはじめ、たくさんの子どもたちに愛されている『ぱんぱんでんしゃ』シリーズ。

パン×電車という最強タッグで生まれた、かわいらしいフォルムのぱんぱんでんしゃたちには、隠された設定があったり、ただページをめくるだけでは気づかないようなしかけが散りばめられたりしているのだとか。。

その秘密を探るべく、著者の五味ヒロミさん、わたなべあやさんと担当編集者(月刊絵本担当:編集F/市販絵本担当:編集N)を交えた対談の実現が叶いました…!👏

ここでしか知ることができない裏話を、たっぷりお楽しみください!




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著者紹介


◆五味ヒロミ/作

愛知県生まれ、埼玉県在住。元・公立幼稚園教諭、現在は病棟保育士として、多くの子どもとかかわり、日々のくらしの中でおはなしのタネをひろっている。 主な作品に『めんめんレース』(絵・くわざわゆうこ/ほるぷ出版)、『ピンポーン!つぎとまります』(絵・さとうめぐみ/交通新聞社)などがある。わたなべあやとの絵本に『ぱんぱんでんしゃ』(フレーベル館)、『おいしいまんまるさん』(岩崎書店)がある。
好きなパンは、デニッシュパン。


◆わたなべあや/絵

東京都生まれ。食べ物と子育てをテーマに、ユーモアあふれる絵本を描く。主な作品に『ごめんやさい』(ひかりのくに)、 『おさんぽのおやくそくだもの』(作・きだにやすのり/あかね書房)、『いちごサンタ』(文・大塚健太/白泉社)など多数。五味ヒロミとの絵本に『ぱんぱんでんしゃ』(フレーベル館)、『おいしいまんまるさん』(岩崎書店)がある。
好きなパンは、あんぱん。



『ぱんぱんでんしゃ』の誕生


記者:本日はよろしくお願いいたします!
ではまず、『ぱんぱんでんしゃ』をどのように思いついたのか教えていただだけますか?

五味:私は病棟の保育士をしているのですが、このお話は2、3歳の子どもたちのお食事介助をしているときに思いついたものです。
子どもがごはんを食べてくれないときに、スプーンにごはんをよそって「ごはん ごはーん、お口のトンネル、あけてください」と言ってみたら、子どもが口をあけてくれて!

楽しんで食べてくれたので、これを絵本にしたらどうかな?と思ったんです。
「ごはん ごはーん」は文字に起こすと少し読みづらく感じたので、「ぱぱん ぱぱーん」のほうがいいんじゃない?と思い、変えることにしました。 

編集N:はじまりをちゃんと聞いたのは初めてかも。
「ごはん」から「ぱん」に変えたのが、結果的に良かったんですね。

五味:そうそう。「お口のトンネル」というワードを思いついたのも良かったのだと思います!



ぱんぱんでんしゃって、そもそも何者? 隠されたテーマとは


記者:この絵本にはパンと電車が合わさったぱんぱんでんしゃや、ぐざいのなかまたちが登場しますが、彼らは何者なんでしょう…?

わたなべ:うーん、ぱんぱんでんしゃはパンの妖精であり、ぐざいのなかまたちは食べ物の妖精ですかね。

五味:「ごはん ごはーん」から生まれたということは、自分(読んでいる子どもたち)のお口がトンネルになっているということで、だから子どもの頭の中にある空想が広がった世界を絵本にしたという感じです。

編集N:なるほど。
1作目の『ぱんぱんでんしゃ』、2作目の『おいしいぱんぱんでんしゃ』は、お話の構成は同じですが、ガラッと雰囲気が変わりますよね。
違った楽しさを感じられる。

五味:そうなんです。
1作目はとにかくオーソドックスなパンを登場させました。
お話のもとになったお口のトンネルも登場させて、「食べる楽しみ」を絵本を通して伝えられたら、と思ったんです。


トンネルが…


お口につながっています!


わたなべ:ぱんぱんでんしゃに命を吹き込みたかったので、彼らに目がいくように背景を工夫してみました。蒸気を出してみたり。

記者:「命を吹き込む」ということは、ぱんぱんでんしゃは自分の意思で動いているということですか?

編集F:はい。電車だけど電線がないね、ということをわたなべさんとお話して、彼らのエネルギー源は電気ではなく、“パンのほかほか蒸気”という隠れた設定を考えてくださったんですよね!
だからよく見ると、ぐざいたちが乗車する前後で蒸気の本数も違っているんですよ。

一同:本当だ…!

五味:蒸気のこと、はじめて知った…(笑)  
サンドイッチみたいにほかほかしていない冷たいパンの場合でも、最初は焼かれているわけだから、焼かれたときのパワーを心に持ったまま動いているのかも。

編集F:いいですね!
おいしく食べてほしい」という気持ちがエネルギーになっている

五味:あくまで原動力は、焼かれたときのほかほかの気持ちで。

編集N:この気持ちは尽きないんですかね?ずっと心ほかほか。

編集F:食べられる時まで続く気がします。
そしてそれが食べる子の体に入って、その子のエネルギーに変わる。

五味:そうそう!

編集F:ぱんぱんでんしゃは「おいしく食べてほしい」「元気に育ってほしい」という気持ちを乗せて走ると思うので、その気持ちのまま、子どもたちのお口に入るのだと思います。



工夫がいっぱい! 1作目制作秘話


記者:1作目は、背景にパンの花が登場しているのが特徴の1つですよね。

わたなべ:そうです。ページをめくると、違った種類の花が出てきます。

編集F:こうすることで、電車が次の場面に進む感じがイメージできるようになりましたよね。

わたなべ:はい。実は、このパンの花はダジャレになっていまして…。

一同:え?どういうことですか?

わたなべ:あんぱんぱんでんしゃのところで咲いている花が、次に出てくるジャムぱんぱんでんしゃの鼻につながるようにしているんです。


チョココロネの”花”が…
次に出てくるじゃむぱんぱんでんしゃの”鼻”に!


一同:“花”と“鼻”とで かけているってことですか!? (驚)

編集N:これはわたなべさんがこっそり入れた隠し要素なんですか?

わたなべ:そうなんです。

編集F:あと、見開きページの右端に1つだけ違う花(ここではメロンパン)を先に見せているので、次の場面の伏線になってるんですよね。

編集N:言われて初めて気づきました。

五味:それを教えてもらっていたんですけど、書店のパネル展とかで並べて1枚画にしてくださっているのを見ると、このギミックがよく分かりました。

編集F:そうそう。この絵本は線路が全画面つながるようになっているので、「お友だちの絵本とつなげて1つの大きな線路みたいにすると楽しいですよ~」と紹介していました。



未来屋書店大宮店のパネル展にて。ぱんぱんでんしゃが進んでいく様子が分かります
(児童書担当者さん自作のかわいいPOPも…!)


五味:ラストのシーンも、当初の※ラフと変わっていますよね。
※ラフ:絵本になる前のアイデア段階で描かれた、下書きやスケッチのこと

編集F:そうでしたね。
ラフでは、4人の子どもがそれぞれパンを食べていたんですが、画面に4人もいると「お口のトンネルが子どものお口と繋がる」という流れが分かりにくい気がして、1人に変更していただきました。

五味: 1人で4つも食べられないよ、と思ったんですが、画的に1人のほうがいいって編集Fさんにアドバイスいただいて。 この時は2作目のことを考えていなかったのですが、2作目のラストでは…。

記者:あっ。2作目のお話は、後編に移りましょうか!



後編では、今春発売された2作目『おいしいぱんぱんでんしゃ』のお話を伺っていきたいと思います。

違いを楽しみながら読んでいただけると嬉しいです!



◆出版サイトでは、個性豊かなぱんぱんでんしゃのなかまたちを紹介しています。興味を持ってくださった方は、ぜひサイトものぞいてみてくださいね~!


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