【読書感想文にも!】この夏読んでもらいたいおすすめの電子書籍④
こんにちは。いなおかです。
今回ご紹介する【読書感想文にも!】この夏読んでもらいたいとおすすめする書籍の4冊目は、弱くて強い、中学生たちが主人公の1冊です。
今回ご紹介するのは『きみの話を聞かせてくれよ』
対象は小学校高学年から中学生。
新船(あらふね)中学校を舞台に、そこに通う中学生たちと、1人の養護教諭の7つのエピソードを収録。
episode1 シロクマを描いて
親友・早緑(さみどり)とけんかして以来ひとりぼっちの六花(りっか)。放課後、スケッチをする彼女の前に現れたのは……。
episode2 タルトタタンの作り方
お菓子作りが趣味の虎之助(とらのすけ)。ある日、見知らぬ先輩に「タルトタタンは作れるか」とたずねられ……。
episode3 ぼくらのポリリズム
吹奏楽部のパーカス、夏帆(かほ)。元気のない後輩・湊(みなと)を保健室に連れていくと、そこにはおなじクラスの男子がいて……。
episode4 いたずら男子の計画は
テストも終わって浮かれる葵生(あおい)。親友の悠磨(ゆうま)と颯太(そうた)の3人で、「中2らしいいたずら」の計画を考えるが……。
episode5 ヘラクレイトスの川
受験勉強に励む3年生の正樹(まさき)。ずっと心配していた不登校気味の妹・梢恵(こずえ)が、不思議なことを言いだして……。
episode6 ウサギは羽ばたく
新船中のカリスマ・羽紗(うさ)。記憶の古傷に向きなおり、かつての友人・玲衣(れい)と話をするため向かった体育館の裏で……。
episode7 くろノラの物語
異動を控えた養護教諭の三澄(みすみ)先生。保健室をたずねてきたひとりの男子と話すうちに、昔のことを思いだし……。
それぞれが持つ悩みや秘密が、些細なことでこじれてしまっていた人間関係が、時に痛みを伴いながら、少しずつでも確かにほどけていきます。繊細な中学生たちの機微をリアルに描き出した、青春短編連作です。
それぞれのエピソードから感じ取れることは様々なので、
ポイントは一つに絞りきれませんが、全編を通じて語られていることの一つに「言葉の力」の強さがあります。
何気なく口にした一言が誰かを深く傷つけることがあり、
しかしその言葉を放った当人は気がつかず、ふたりの関係性を壊滅的にさせてしまうことがあれば、
目を見て話し合い、相手の言葉を聞いて受け止めることで、失われた時間を取り戻すことだってできてしまいます。
胸の内にある嫌な気持ちを押し隠して無理をして表情を作っていたとしても、抑えきれなくなった気持ちを明確な言葉とすることで、
今の自分を再確認し自分が自分であるための強さを手に入れることもできるのです。
気持ちは空気に触れて言葉となり、そして誰かに届くことで強い力で反応します。それは相手を袈裟斬りにする大きな刃にもなれば、抱きしめるような安心感を与えることだってできてしまいます。
それぞれのエピソードの中で印象的だった時の言葉をぬき出し、その時の登場人物の感情がどういったものかという考察をするのでも、立派な読書感想文が書けそうです。
また、短編連作となっているので少しずつ読み進められるという点も、読書が苦手という子どもたちにとっても嬉しい点ではないかと思います。
ですが個々のエピソードが完全に独立しているのではなく、微妙に絡まりつつ、少しずつ膨らみながらお話は進むので、
短編なのですが大きな一つの物語を異なる面から切り取って見たかのような感覚で読み進められます。
また、全てのエピソードに登場し、飄々とした態度で、でも皆に寄り添うように存在する黒野良輔(くろのりょうすけ)にも注目してください。
彼は剣道部の幽霊部員ですが、人と関わるのが好きでよく放課後の校舎をフラフラとさまよっています。そして登場人物たちに「話を聞かせてくれよ」と語りかけるのです。
しかし彼にも辛い過去がありました。そしてそれを解決に導いたのは「言葉の力」ではありませんでした。
”え、こんなにも言葉の力について語っておいて、違うの?”とお思いの方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。どうして黒野良輔が「話を聞かせてくれよ」と問いかけるのかのワケを知ることができますよ。
そんな黒野良輔はこんなセリフを度々口にします。
黒野良輔にこの言葉を言われると、なぜだか本当に物事がスムーズに運んでいくような気がしてしまうので不思議です。
読書感想文におすすめ!としてご紹介しましたが、傷つきながらも前を向こうともがく彼らの姿に、心を動かされます。むしろおとなにこそ読んでもらいたい作品です。
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