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オリジナル小説(全6冊)を一冊ずつ製本しました

自作のフィギュアスケート小説、全6冊計100万字を一冊ずつ製本した記事のまとめです。

なぜ作ったのか

一次創作小説を書いては投稿するのを趣味にしています。だいたいはカクヨムにアップしているんですが、なかにはHDDのなかに眠ったままの小説も。そのなかの1シリーズ、ジャンルは少女小説というかYAで、フィギュアスケートをがんばる少女の恋と成長の物語でした。

競技の知識がまったく不足した状態で、既存の小説や雑誌記事を参考に書いていたので、小説投稿サイトにアップするのも良くなさそう。人に読ませられるものではないけど、自分としては大事な作品のひとつに変わりはありません。投稿という形はとれなくても、なにか記念になるようなことをしてやりたいなと思い、一冊ずつ製本することにしました。その経緯はこちら:

その後も、およそ1~1.5か月に一冊くらいのペースでのんびりと原稿を準備しては製本を依頼し、ついに、全六冊が完結。本日、最終巻が手もとに届きました!

制作環境

執筆:Mery
原稿作成:威沙
イラスト・表紙作成:Clip Studio PRO
扉・奥付:
Canon「おうちで作る同人誌」
製本:ONEBOOKS様

原稿はテキストエディタ「Mery」で。
アウトライン機能があるメモ帳みたいな使用感で、軽くて使いやすいです。タブ機能や、色分け、背景テーマあり。空行の削除や表記ゆれの統一に、正規表現での一括置換が使えるのも便利です。

Meryの画面 背景やテーマは自由に変えられる

最初の数巻はポメラで書いていたなあ。当時は長い通勤時間のあいだに執筆するのに重宝していました。一話ずつ書いたものをMeryで一巻分にまとめて編集していましたが、途中からMeryですべて書くように。十万字を越える小説でも動作が遅くならず、快適です。Meryのおすすめ記事はこちら

印刷用原稿は縦書きPDF作成ソフト『威沙』で。無料と思えないクオリティのPDFが作れて感動します。操作は慣れないうちはやや難しく感じますが、使用者が多く、使い方を解説したページもわりとあるので、調べながらやれば大丈夫。

一巻の目次・本文

威沙はテンプレートをすこしいじるだけで、かなり自分の好みの組版ができて楽しい。なにより、青空文庫系のルビ(カクヨムなど投稿サイトの記法とほぼおなじ)に対応しているのがものすごくありがたい! これを手入力しようと思うと、ほんとたいへんなので……。小説投稿サイトにアップした作品から本を作ろうという人にはとくにおすすめ。

1巻本文

目次や奥付は威沙でも自動生成できますが、今回はClip Studioと手持ちの素材集で自作しました。

1巻奥付。かわいい装飾はCanonのサイトから
6巻。カバー下のイラストがちら見していてかわいい

全6巻がそろったので、記念撮影。

表紙です(*´∀`*)
背表紙。巻数番号がそろっていない……

作品データ

vol.1:発行日2021年4月1日   本文256ページ
vol.2:発行日2021年7月1日   本文244ページ
vol.3:発行日2021年8月1日   本文244ページ
vol.4:発行日2021年9月1日   本文248ページ
vol.5:発行日2021年10月1日  本文284ページ
vol.6:発行日2021年12月20日 本文286ページ

【サイズ】A6(文庫)
【表紙】紀州の色上質 最厚口 白
【カバー用紙】コート(オーロラ) 110kg
【本文】ワンブックスノベル(66.0kg/紙厚0.090mm)
【 PP加工】  カバーにクリアPP加工
【段組み】IPA明朝 8.5pt 文字数40×行数16

すべてONEBOOKS様で製本をお願いしました。一冊ずつの依頼にもていねいに対応していただき、印刷もきれいでありがたかったです。一冊のみの印刷は発送にばらつきがあり、二週間前後で届くこともあれば、最終巻は年末年始をはさみ8週間くらいかかりましたかね。金額は配送料込みで一冊2,786~2,916円、合計で17,000円程度でした。原稿の準備で十か月ほど楽しい思いをしてのこの金額なら、趣味として安い部類ではないでしょうか。

原稿は文字数40、行数16なので、1ページあたり640字。一冊あたり16~18万字。総ページ数は1,562、総文字数およそ100万字。
ちなみに、威沙での紙面設定はこんな感じでした:

『威沙』のプロファイル設定

イラストと表紙作成はClip Studioで。RGBとCMYKの違いにくわえ、カラー印刷が思ったより濃く出ることにも悩まされました。4巻は濃すぎ、5巻は薄すぎた……。CMYKのプレビュー機能を使うのと、原稿をやや薄めに修正して対応しました。
はじめの本が届くと、刷り上がったカラーと手もとの原稿を見比べ、原稿側に印刷側とおなじに見えるようなフィルターを作成。次の本用の表紙イラストは、そのフィルターを一番うえのレイヤーに置いた状態で作成するという、変な方法で描画・修正していました(伝わりますかね)。いい方法があればご教示ください……。6巻はなんとか、原稿に近い色で出力できてほっとしました。

左が元原稿、右が印刷用のやや薄いデータ

本にしてよかった

最終巻の発行日は、主人公の誕生日。
孤児の少女が謎のパトロンに支援され、競技スケートに参加をはじめる第一巻にはじまり、練習拠点を海外に移し、ジュニアからシニアへ、コーチの変更、憧れの選手との恋と別れ、運命のオリンピック、そしてパトロンの大公との結婚……と、彼女の半生を書ききりました。書き上げたときは「終わったな」というくらいだったんですが、こうして最終巻が手もとに届き、達成感と一抹のさみしさにおそわれています……。がんばったね……。

最終巻の終章は、主人公の中学時代の体育教師・種村のモノローグではじまります。第一巻の序盤の視点人物である彼が、主人公のオリンピック優勝をたたえる展示会で、彼女の演技動画を見ながらつぶやくシーン。主人公とのかかわりは中学時代と、最後の結婚式だけで、一般人代表のような視点の彼ですが、読み返しながら感情移入してうるっときてしまいました。

――すごかったな。
 パネルの写真に呼びかけるように、種村は胸中でそうつぶやいた。涙を溜めたエルザの目が、その笑顔がきらきらと輝いて見える。
――本当にすごかったよ。そうとしか言えない。
――すごいプレッシャーだっただろうに、よく耐えて、がんばったな。お疲れさま。
――なあ、井上……
――ほんとうに、行ってしまうんだな。

6巻 終章「カーテンコール」から

主人公の人生はこの先も続いていきますが、作者の私が見守るのはここまで。最終章をめくりながら、ほんとうに行ってしまうのね、と親目線で感動していました。内気でひっこみじあん、スケートのこととなると頑固で氷上ではモンスター、恋愛では「なんでそう! 変な方向にばかり思いきりがいいのよ!」な暴走機関車、本当に手のかかる子だった……。

こういう感傷をあじわえたのも、本にしたからこそという気がします。形があるものとして手にしたときの、物語が現実に存在しているという感動。一度刷ったら、もう物語を変えることはできなくなるという不可逆性。それらが、物語との別れをはっきりと示してくれた気がしました。(もちろん、手もとにあるからいつでも読み返せるんですけど) 
本という形にしてほんとうによかったです。ううっ……。しあわせになるんだよ。(感涙)

イラストギャラリー

本のために書きおろしたイラスト、ほかに出すところもないので、ここにまとめておきます。

1巻表紙
1巻裏表紙
2巻表紙
2巻挿絵
3巻表紙
4巻表紙
4巻扉絵
4巻挿絵
5巻表紙
5巻カバー下
6巻表紙

画質がもうすこしいいバージョンをPixivに置いてます。

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