難病になってしまった父親と息子の野球を通じた友情を描いています ⑥

「覚悟」

父親が 肺炎になった

肺炎は飲み物を飲んではいけないと
医者には 止められていた
チューブだらけになった 父親は
コーラを飲みたいと言っていた

障害と肺炎 しかもコーラも飲めない
思い出すだけで 胸が詰まる

神様なんて いないと悟った瞬間でもあった

これを 試練というならば
神様はただのいじめっこに過ぎない

神様も地獄の様な苦しみを抱えているなら
納得するけど
イメージ的には 健康そうだし

話が脱線したけど
俺は友達に 父親は死ぬと思う
と 告げた

翌朝
父親とキャッチボールをした公園
父親の勤めていた会社
よく行った スーパーマルエツ

思い出の場所を 自転車で回った

この世に 父親がいる最後の日と
感じながら

夕暮れの中
俺は 病院へと向かっていた

覚悟を決めて

「最後の呼吸」

病室に入ると
チューブだらけの父親は
意識はなかった

母親とその友達も来ていた

21時過ぎくらいに
母親達は 一旦帰るねと

俺には疑問だった

これから 父親は死ぬのに
なんで このタイミングで帰るんだろうと

母親に後で 聞くと
死ぬとは思ってなかったようだ

母親は 血が繋がってるから わかるんじゃない
と言っていた

そんな物なのかな

母親達が 帰ってどのくらいたっただろう

俺は父親との思い出を浮かべていた

ふぅー

父親の人生最後の 呼吸を見届け
泣きながら 手を握り

ありがとうございました

とだけ 父親に言った。


母親と看護師さんに
父親が亡くなった事を 伝えた

印象的だったのは
看護師さん達が 泣いていた事

5年間いた病院でも
誰からも 愛される昭和のスターで
いたんだなと 生き様を見た気がした

まるで 死期を悟った猫が
身を隠すように
母親達が 帰ってから
息を引き取った父親

何故 俺だけに
最後の姿を見せたのだろう

答えは わからないけど
父親の最後の 呼吸は
思い出すだけで
今も涙が溢れてくる


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