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SaaS系企業が運営する独立系書店のトークイベントで、誰のために何のためにとマーケティングについて思いを馳せた。「この店で買いたい」と思わせるのも、仕事だよね。スタートアップ退職の有給休暇中考えたこと。

5年半勤め、最後には執行役員をしていたベンチャー企業を辞める決意をし、有休消化中の夏休み。こんなに長く何もしない(無職)なのは久しぶりなので、自分に何かを課す意味も込めて、心境の変化や日々の過ごし方について書いておこうかと思ったり、今だけ思ったり。

先日、あるSaaSビジネス系事業会社が新規事業でやっているという独立系書店のトークイベントに現地参加した。
このイベントは誰のため・何のためだったんだろうなあ。

主催側も独立系書店、呼ばれる側も他の独立系書店の店主で、トークイベントの内容は充実していたものの、主催側のいちばんの目的は「本の販売以外の収益確保のため」で、呼ばれた登壇者は「それほど積極的に来てなさそう・これに興味を持ったお客さんが大事なわけでもなさそう」で、ちょっと残念な気持ちで帰路についた。
批判ではなくて、帰り道の雑念と、感想文。

独立系書店は、本の売り上げだけで収益化するのは結構大変で、開業当初から軌道に乗るまでの間は、店舗でのコーヒー提供やグッズ販売などの、本以外のなんらかでの収益確保が必要なことを知った。

本屋でコーヒーが飲めると嬉しいからそれは別にいいのだけど、「月にxx本イベントをやりたい。xx月はxx本でたりなかった。」という主催者の発言をきいて、「おや、今回のイベントも収益のための数こなし?」と思う場面があった。

事業目的や数字をオープン(透明)にするのがコンセプトだし、売り上げ確保のために何をすべきかを考えるのは事業会社として当然なので、今回のこの発言が自然にでてきたものだとは理解しているけど、 数こなすのが第一目的?何か意義があってイベントをやっているのではないのかしらん?

”このイベント自体もその収益確保のためのイチチャネルにすぎない"、数こなしのように聞こえてしまったが、私が尖っているからなのか。
直前に食べた喫茶店のピザトーストがおいしくなくて、胃にきていたせいかな。

数こなしなんてそんなことはない、と言われるだろうから、じゃあだとしたら、このイベントは誰のための、何のためのものだったんだろう。
誰に何をどうやって、届けようとしていたのかしらん。

書店を知ってもらうことや、独立系書店全体を盛り上げる目的なのであれば、終了後に来場者にアンケートをとって来場者のデータの収集をしたり(そういうデータビジネスのできる運営母体であるわけだし)、積極的に声をかけるなどをしてリピート顧客化を推進するなど、素人でも思いつきそうなことだけどいくらでもやれることはある。
売り上げが足りてなくて伸ばしたいなら、今まさに目の前に、いますぐファンになってロイヤル顧客になってくれそうな人が実際にいるのに、何もしないなんて勿体無い。聞きたいことも聞けることもたくさんあるよ。それに回答するだけの優しさをもって、私も参加しているよ。

これから本屋を始めたい人向けだったのであれば、イベント終了後に「登壇者に何でも聞けるのでお声かけくださいね」とかを全体に知らせるとかもできそうだけど、そういった動きは特になく、話しかけづらいなあ、という雰囲気であった。

ゆるゆると終了のまま、ゆるゆると解散。

これが例えば、<そういう客に媚びるようなことはしません的なコンセプトががっちりある店>や、<寡黙な店主が名物です>みたいな店がやるのであれば、「そういう接客スタイルなのね」、という理解ある人がきているから気にならないのだろう。
でも、お店の色は今まさにつくっている最中のこれから良くしていこうとしているかけだし事業で、まして赤字で、ましてそもそも本屋ではなくビジネス系企業が運営しているのであれば、ある程度泥臭いことをしているくらいのが「頑張ってるんだな、必死なんだな」というのも伝わってきて好感がもてたかもしれないなあ。

登壇者の他店店主氏は、「自分がトークイベントやるときの参考になりました」と感想を言われていて、我々は練習台なのか…と残念に感じた。
イベント終了後に、はじめましての来場客に話しかけられての会話途中なのに、来ていた知り合いへの挨拶を優先して会話を中断し、そのままはじめましてさんのところに戻ることもなく、はじめましてさんが気まずい顔をしてすごすご帰っていくのを目にして、知り合いはまた連絡がとれるし「この間はありがとう」はいくらでも言うチャンスがあるけど、この一見さんとは連絡を取るすべはなく、こういうちょっとしたことががっかりさせているかもしれない、とかは思わないのかなあ、ってぼんやり思った。
でも今回は、この登壇者の書店の認知や顧客を増やすためのイベントではないのだろうから、別にこれでも問題はないんだろう。

やっぱり、何でこのイベントやるんだっけ、がみえないから、全体的な行動がちぐはぐな気がして、なんとなく物足りなさやがっかり感を感じてしまう。

とりあえず身近な地元の先輩企業を呼んで、相手も協力するためだけ(自分の店のためではないから)にきて、の、全体的になんとな〜くって感じであった。
登壇者のことばは自分には大変に身になったし、行ってよかったとは思うけど。



ここ最近は、本を買うとき、どこで買うかを意識している。

Amazonでも大体のものがあるし、独立系書店も「金太郎飴のように」同一化してきてるからどの店にいってもだいたいラインナップは似通って来ていて、どこでも買えてしまうけど、私は小さい書店の経営は大変というのを知ってから、ずっと残ってほしい店や好きな小さい店で積極的に買うようになった。

でも、今回のどちらの本屋でももう本を買いたくはないなあというのが、今の正直なところである。

それくらい、一回の印象って大事だよね。「どこでこの本を買うか」は顧客側に選択権があり、一回しくじると次はもう来てくれない。
大型書店なら、その一部が感じ悪くても、立地の利便性とかラインナップとかの優先順位が勝つから、誰かに対する印象だけでその店を排除する理由にはならないけど、コンセプトが売りですみたいな場合は、もうちょっとケアが必要なんじゃないかしらんと。

もちろん全員に対して好印象を与えるなんてことはできないからNワン目線でも良いのだけど、今回のこれはNワン目線ですらなく、ただただ勿体無いなあ、と感じたところである。

話がよかっただけに、話と全然関係ないところで、もんやりしてしまった。

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