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『葬送のフリーレン』と『環世界』

(このnoteは3分で読めます。約2,100文字)
皆さんは『葬送のフリーレン』という漫画をご存じでしょうか。最近特に私がハマっている漫画の1つです。2020年から週刊少年サンデーにて連載されている漫画で、『このマンガがすごい!』2021年では『オトコ編』で第2位を獲得した漫画でもあります。

2022年10月現在は9巻まで出版されています。まだまだ、物語は序盤ですが『絶対、最終巻まで購入しよう。』と思うほど面白い漫画です。一巻目の表紙をご覧いただくと分かるように、『葬送のフリーレン』は冒険ファンタジーの物語です。冒険ファンタジーと聞くと、よくある漫画のような気がしますが、『葬送のフリーレン』は他の冒険ファンタジーと観点が異なります。

このnoteでは、『葬送のフリーレン』ファンの私がその魅力について『環世界』という生物学の概念を用いてお伝えしたいと思います。

✅1、『葬送のフリーレン』

『葬送のフリーレン』は、エルフや魔族、ドラゴンなどがいる世界が舞台で、そんな世界をエルフであるフリーレンが旅をする物語です。ここだけ聞くと多くの冒険ファンタジー漫画と同じような設定に感じると思います。しかし、『葬送のフリーレン』は異なります。

通常の冒険ファンタジーでは、魔王などのラスボス的存在がいて、その最終決戦に向かって勇者一行がパーティーを組んで旅するのが一般的です。一方、『葬送のフリーレン』は、勇者が魔王を倒したあとの、勇者が死んだ後の世界が舞台となっているのです。

主人公であるフリーレンは、魔王を倒した勇者一行のメンバーでした。魔王討伐後、そしてさらに、元パーティー・メンバーである勇者ヒンメンが逝去した後のフリーレンの物語が描かれているのです。要するに、世界平和の後の物語です。

勇者ヒンメンは人間でしたが、フリーレンはエルフです。エルフは数千年生きるという設定なので、勇者ヒンメンの死後もフリーレンは生き続けます。過去、勇者ヒンメンと訪れた街を再度訪れたりして、そこでフリーレンがどのようなことを感じるかが繊細に描かれています。


✅2、『環世界』

勇者の死後の世界を描くというだけでとても斬新な設定だと思いましたが、私が『葬送のフリーレン』にハマってしまった理由は他にあります。それが『環世界』を見事に描いている点です。

以下、他サイトの『環世界』の説明を引用します。

環世界(=Umwelt:ウンベルト)とは、ドイツの生物学者であり哲学者であるユクスキュルさん(1864〜1944)が唱えた考え方で、すべての生物は自分自身が持つ知覚によってのみ世界を理解しているので、すべての生物にとって世界は客観的な環境ではなく、生物各々が主体的に構築する独自の世界である、というものです。

https://revolver.co.jp/CEO/17213737

例えば、犬をイメージしてみてください。犬は他の犬がなくなってしまったことをどのように認識すると思いますか?私たちは、身近な方がなくなった場合はお葬式という出来事を通して、死を認識したり、ニュースを見たりしてそれを知ったりします。では犬の場合はどうでしょうか。

お散歩を日常的にする犬であれば、どこかに他の犬がマーキングした形跡を発見するでしょう。他の犬がなくなっていたとします。すると、いつもあったはずのマーキングの場所に、あるべきマーキングがないことが続きます。こうして、『あ、あの子はいなくなってしまったんだ。』と犬は認識するのかもしれません。

私たちは時間と言う概念を通して色々な物事を認知しますが、それらは他の生物と同じではありません。時間と言う概念が人間だけだとすると、他の生物は私たちとは異なった認知の仕方をしているはずです。ざっくりいうとこれが『環世界』です。

✅3、『葬送のフリーレン』と『環世界』

『葬送のフリーレン』はまさに『環世界』を描写しています。魔王討伐の旅の途中で勇者ヒンメンのパーティーが訪れた街に、ヒンメンの死後、フリーレンが訪れます。当時、子供だった方は既に老人になっているのですが、フリーレンはエルフで見た目がほとんど変わっていません。

老人が『あれから50年も経過したんですよ。』と言うとフリーレンは『たった50年じゃないか。』と言い返します。それぞれの時間に対する捉え方が異なるのです。また、エルフであるフリーレンと同様に、悠久の時をいきる魔族も登場します。『魔族の一瞬、人間の一生』という表現も作中に出てくるのが面白いです。

『葬送のフリーレン』では、異なる種族が登場しそれぞれの世界や時間に対する捉え方が描写されるため見事に『環世界』を表現していると思うのです。これが私が『葬送のフリーレン』にハマっている理由の1つです。


✅4、まとめ

『葬送のフリーレン』の魅力を『環世界』というキーワードを用いて説明してみました。それ以外にも、考えさせられるような言葉や出来事が多く出てくるので深みがあって面白い漫画です。ぜひ読んでみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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