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【雑感】公用文に『?』『!』が使えるようになることについて考える

(このNOTEは3分で読めます。約2,400文字)
『公用文に「?」「!」使えます!…国家公務員向け手引、70年ぶり見直し』など『「公用文作成の考え方」について(建議)』に関する記事をお読みになった方はいらっしゃいますか。

公務員以外の方は正直あまり関心のないニュースだと思います。しかし、政府が文書に対してどのような考え方を持っているのかということに目を向けると面白い発見があります。

このNOTEでは、『「公用文作成の考え方」について(建議)』における『?』『!』に関して『!』は普及しないのではないかという私の考えを書きます。

✅1、ニュースの背景と『公用文』

『そもそも『公用文』ってなんだろう。』と疑問に思う方も多いと思います。文化庁が2021年3月12日に公開した『新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)』の『○「公用文」の定義と分類』には下記説明がなされています。

広い意味では、国の府省庁で業務上作成される文書の全体を「公用文」であるとする考え方がある。その一方で、近年においては、広報などを目的とした文書類やウェブサイト記事などが、国民を対象として直接発せられており、これらは、「公用文作成の要領」策定の時点で想定されていた公用文の範囲を超えているという見方もある。今後は、公用文と呼ばれる文書の範囲を整理し、その目的や想定される読み手などによって分類すること、また、その分類に対応した作成の考え方を示していくことが有効であると考えられる。なお、公用文の定義と分類に当たっては、法令を公用文の一部として扱う場合と公用文とは別に扱う場合とがある点など、法令との関係に留意する必要がある。

『新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)』p1より

そして、公文書の範囲についてはマトリクスで整理されています。

『新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)』p9より

文化庁が2021年3月12日に公開した国語分科会報告『新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)』は、1952年に公開された『公用文作成の要領』の内容を見直したものです。そして、2022年1月7日に公開された『公用文作成の考え方(建議)』は『公用文作成の要領』が示してきた理念を生かしつつ、それに代えて政府内で活用されることを目指し取りまとめられたものです。


✅2、『?』『!』が使えるようになった

『公用文作成の考え方(建議)』で大きく注目を集めたのが『?』『!』に関してです。

『公用文作成の考え方(建議)』p4
『公用文作成の考え方(建議)』p18

アに記載されているように大別『解説・広報等』において必要に応じ『?』や『!』を使ってよいとしています。


✅3、『!』に関してどれほど普及するのかは謎

例にあるような『?』の使い方については迷うことは少ないと思いますのである程度納得できます。『~ますか。』となっていたものを『~ますか?』と書き換えることはイメージができます。使い方がある程度固定されているという意味で『?』はわざわざ記号として利用しなくとも『~ますか。』で十分意図は通じるとも考えられます。

対して『!』は、今後空中戦的議論を生んでしまうように思えます。官公庁が発信する情報ですから、当然発信する情報は事前に内部で校閲されます。例えば、誰かが解説文の末尾に『!』を入れたとします。

それに対して校閲者(多くの場合は上司)が『不適切だ。』と言ったコメントをしたとします。この時、『不適切だ。』というコメントは建設的な議論に発展するのでしょうか。

『!』は論理的に使われるよりは感情的に使われる記号だと思います。例えば『頑張りましょう!』と『!』を付けたことに対して、『!』は不適切とコメントを返されても反論に困ります。『!』を付けた人は、発言者の感情をくみ取って『!』を付けているわけです。

この感情に対して『不適切だ。』というコメントされても、それはコメント者の感情の捉え方の問題になります。論理ではなく感情の捉え方の議論になり、主観同士の戦いになりかねません。つまり、空中戦になってしまうのです。

『!』を使った方が表現の幅が広がることは理解できるのですが、政府組織全体で感情的な『!』の統制がとれるとは思えません。人によって違った『!』が使われることになるでしょう。

結局、『!』をつけても主観的な理由で『!』を付けるべきではないとコメントされ、それがある程度繰り返されたら『そもそも『!』を使ってしまうといらぬ議論が生まれるから使うのをやめよう。』と思う方が増えていくでしょう。結果として『!』はそこまで広まらないと考えています。

『?』『!』の使用に関して『公用文作成の考え方(建議)』p4では『解説・広報等においては』となっています。『公用文作成の考え方(建議)』p18では、『発言をそのまま記載する記録などにおいては』と記載されており『(表)公用文の分類例』の大別『記録・公開資料等』の『議事録・会見録』も対象に入っているかのような書きっぷりです。

解説・広報等ならまだしも議事録などで『!』が使われるようになった場合、個々人の感覚で『!』が使われるようになり、使い方が定まらないような気がします。先ほど記載した流れになり、議事録においても『!』は広まらないと思います。


✅4、まとめ

70年以上変わっていなかった政府の公用文作成の要領が更新されたこと自体には意義があると思います。古い部分は時代に合わせて新しいものを取り入れていこうという姿勢が見えます。

しかし、実態として『!』は感情的な表現であり、人によって使い方が異なる可能性があるため、使い方を政府全体で統一できるとは思えませんでした。

皆さんはどう思いますか。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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