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ソウル・オブ・ワイン。ブルゴーニュのワインを描く、美しいフランス映画。

日本で2022年の秋から公開されているフランス映画、『ソウル・オブ・ワイン』を観てきました。

これはブルゴーニュ地方のテロワールでぶどうが実をつけ、ワインに形を変え、瓶で熟成されるまでの1サイクルを描いたドキュメンタリー番組です。年明け早々、駆け足のように過ぎていく時間にブレーキをかけ、ようやく映画館に足を運ぶことができました。

感想はずばり、「観て楽しむブルゴーニュワイン」です。

公式ウェブサイトより

アメリカ映画や日本映画とは質が異なり、余計なものは極力削がれてシンプルな作りなんだけど、どこか複雑で心地よい余韻の残るフランス映画‥‥‥という感じです(わかりにくっ)。

映画はぶどうの栽培のサイクルと同じく、冬にはじまって冬に終わります。

なだらかな丘に、一面のぶどう畑が広がっています。
やがて生産者と大きな馬がやってきて、ぶどうの木ぶどう木の間の畝を耕す様子が映し出されます。

カメラは広大なぶどう畑から、徐々に十字架にフォーカスしていきます。
そう、そこはヴィンテージによっては1本500万円で取引されている、世界最高峰のワインといわれるDRCの畑です。

季節は冬から春へ、夏を超えて収穫の秋、そして次の冬を迎え、ひとつの季節を一巡します。
晴れの日、曇りの日、雷の日。
葉っぱのない日、あおいぶどうがなっている日、ぶどうが収穫される日。
天気や気候によって表情を変えるテロワールが、とても美しく映し出されます。

その100分の間には、DRCをはじめ、レザムルーズなど、偉大なドメーヌや銘醸畑が登場します。
そしてぶどうを栽培する人、ワインを作る人、樽を作る人、ワインを表現する人たちが次々と登場し、彼らは自分の言葉で思いを紡いでいきます。
彼らの語りには、専門的な用語解説はほとんどありません。
むしろ高級ワインを作っているプロの職人たちの言葉に、余計な飾りはありません。

DRCのワインづくりについて、醸造責任者は語ります。
ワインは、その土地を表現しているということ。

1本何百万円もする複雑なワインづくりの哲学は、意外にもシンプルなものです。
それは、ミミズを大切にするということ。

その心は……映画を観てのお楽しみです。

公式ウェブサイトより

映画の随所にはフランスのソムリエや醸造学者も登場します。
彼らは飲み手として、ブルゴーニュワインの魅力を美しいことばで表現します。

最後の最後は、なぜか一つのテーブルを囲む日本人のシェフとソムリエの前に1945年のレザムルーズ登場します。
他のフランスのソムリエは流ちょうにワインを語るのですが、彼らはすっかり圧倒され、ことばを失っているようにも見えます。

ワインは、ブルゴーニュの、そしてフランスの財産なんだ。
人々がテロワールを守り、ぶどうの木が深く根を張るように注意深く配慮し、ワイン作りを受け継いでいく。
なんて偉大なことだろう。

作り手たちの多くが、ブルゴーニュワインについてこう言っていたのが印象的でした。
Finesse, élégance.
繊細、上品。

ブルゴーニュのワインづくりという文化は、単なる人の営みを超え、芸術の域をも超えて、神聖なものにも思えてきます。

そしてその神聖なものに触れる人々はきっと、大変なこともたくさんあるに違いないけれど、彼らは自分の仕事に迷いなく従事しているようにも思えました。
天職を全うしているような。

あぁ、フランスのワインのことをもっと知りたいな。
フランスへの思いもますますヒートアップしてしまいました。

フランスとワインが好きな私にはたまらない映画ですが、
中にはこの映画を「魂のこもっていないドキュメンタリー」と酷評をするジャーナリストもおられるよう。

上映されている映画館は限られていますが、特にブルゴーニュ好きな方は、ぜひ。


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