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京都をパリに見立て旅~鴨川左岸、学校内のカフェでロゼ~

先週末、研修のため京都を訪問した。

この時期の京都は暑いと耳にしていたが、本当に暑かった。もっと厳密にいえば、蒸し暑かった。
雨が降っては止む……を繰り返し、雨と汗を吸った服はなんか、匂うかも。
また、7月から祇園祭ということで、京都市内をのいたるところで「祇園」の文字を見かけた。夏はすぐそこだ。

さて、滞在中の1日目の空き時間、京都市内を流れる鴨川から東の方、平安神宮から京都大学の周りを散策した。

この地区には、ずっと前から行きたけれど行けなかったお目当ての喫茶店がある。たしか昔、私と同じようにパリが好きな作家さんが紹介していたお店。
そこに寄ってタルトタタンをいただくことが、散策の一番の目的だった。

その喫茶店の名は、ラ・ヴァチュール。

フランス語で「車」の意味で、その昔、フランスを旅行した時においしいタルトタタンに出合い、日本に帰ってからタルトタタンなどのお菓子作りを始めたユリさん、そして今では彼女のお孫さんが営むお店だ。

お店まで来たのに

しかし最寄りの地下鉄を出てから方角を間違え、結局ラストオーダー前に辿り着けず、入店は叶わなかった。

残念ではあるけれど、京都で行きたい場所をまとめたリストには、他にも行きたいお店の候補がある。

この店の北の方には、関西日仏学館というフランス語の語学学校があり、学校の中にはカフェがあるはずだ。
そんなことを思い出し、さらに歩み続けることにした。


前からぼんやり思っているのだけれど、京都の東側の地区は、パリの左岸に似ている気がする。

表現するのが難しいのだけれど、単に見た目や雰囲気の話ではない。
もっと根本的なところ、たとえば2つの都市には独自の歴史と文化が根差していて、それぞれ世界中の人々を惹きつけ、訪れる人を楽しませてくれる。
また、地下鉄とバスをはじめ公共機関は発達しているけれど、古い街並みはまるで動く美術館のようで、歩いていて楽しい街だ。

街を左岸と右岸に分ける分けるセーヌ川は鴨川で、パリ大は、京都大。そして街のあちこちにある小さな教会は、神社仏閣。パティスリーは和菓子屋さんで、色とりどりの菓子がショーウィンドウを彩っている。

大学の周りには長居しても怒られなさそうな、個人経営の、古い歴史のありそうな喫茶店がたくさん。それに読書会などをしているユニークな本屋さんも。
道を行き交う人々は、どちらの町もなんだかちょっと気取っている感じ。

道すがら、多くの学生たちと行き交った。
若い彼らは全然気取っていない。むしろ、この令和の消費時代にあって、おしゃれなんて興味のなさそうないでたちの彼ら(失礼か)に、自分の今よりも冴えないながら、自分の世界に没入していた平成の学生時代の自分が重なった。
学校が多いと思いきや、京都大学のキャンバスが連なる通りに入っていた。

大学のキャンパスの道路を挟んだ向かい側に、日仏学館はあった。
東京と同じく白亜の建物で、EUとフランスの国旗が掲げられていた。

関西日仏学館

敷地への入り口には、カフェ Les deux garçon à l’Institutの看板が掲げられていた。

学校の入口

ワインが、ありそうだ。
実はこの後も予定があるのだけど……とりあえず、入ってみよう。

大きな石碑。フランス語が刻まれているのが珍しい
銅像

庭には、欧米人として始めて京都の地に入ることが許されたフランス人教師、レオン・ジュリーを讃える石碑と、明治時代に日仏交流に尽力しこの地へ日仏学館の移設に貢献した稲畑勝太郎という日本人の銅像があった。
どちらも知らない人だったけれど、功績を残した人物なのだろう。

週末の夕方で、講義は行われていない時間帯だったようで、館内の人気は少なかった。しかしいろんなところでフランス語が飛び交っていた。

お目当てのカフェは、一階にあった。
店内にはお客さんはいなかったが、店員さんと先生と思しき人がフランス語で談笑していた。

「Bonsoir ! こちらもどうぞ」

フランス人の元気な店員さんが、スマートフォンを横に持ちながら庭や構内ふらふらしている私に向かって話しかけた。
きっと私がこの学校の生徒ではない観光客であることを、すぐに察知したのだろう。

「ワイン一杯だけでも、大丈夫ですか?」

「もちろんですよ」

電源に接続できるカウンターに腰を下ろす。

店員さんが、メニューが書かれたプレートを差し出す。ワインは白と赤が3種類ずつ、また、ロゼが2種類のラインナップだ。

ワインリストとおつまみメニュー

フランスかぶれなんです、と言わんばかりにロゼを注文した。

フランス3大ロゼワインのひとつで、ロワール地方固有のグロローという品種で作られる、甘みのあるロゼ・ダンジュ。

「あぁ、これはオーナーの地元のワインなんですよ」

サービス係のこの店員さんはフランス人で、オーダーしたワイングラスをテーブルにサーブした後、そのまま気さくに話し続ける。

私が関東から来たことをフランス語で話してみたら、彼もフランス語に切り替え、今までよりも早口で話し出した。

ロゼ


彼はどうやら日本で起業をしたようだ。また、京都にて家を購入したらしい。ニュースでは聞かない、いわゆる話し言葉でのマシンガントーク。見ず知らずの私にそんな話をするなんて、なんで気さくなんだ。
そんな話を聞いているうちにロゼの香りは開き、甘みが増していく。

語学学校の先生や外国人としての私として応対してくれるフランス語圏の方との会話に慣れてしまっていた私にとって、彼の話の全てを聞き取ることはできなかったことは、苦い思い出だ。
でも、京都にてフランスの空気を味わうことができた、楽しいひとときとなった。

シャンパンコルクのアート

顔が赤くなっていくのを感じながら、次の目的地・四条河原町へ急ぐ。
この地区は人の多い繁華街。
右岸のバスティーユといったところか、違うか。

会う人に先に打ち明けてしまおう、決してコロナではないと。
フランスのワインが好きで、先に飲んでしまったと……。


訪問したカフェ・レストラン 
Les Deux Garçons à l’Institut レ・ドゥ・ギャルソン ア ランスティチュ

訪問したかった喫茶店 
La Voiture ラ ヴァチュール



#京都
#一度は行きたいあの場所
#フランス
#雨の日をたのしく

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