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本日の本請け(2024.8月)

本とそのときの食べ物や飲み物。

『本は眺めたり触ったりが楽しい』青山南(ちくま文庫)

積読がたまってきている昨今。なかなか集中しきれず読み通せないときもあったりして、そんなときにSNSでこの本を見かけてタイトルに「だ、だよね!」と思ってお気に入りにしておきました。書店に行ったときに探して購入。

暑いのでまたレモネード飲んでしまった

2ページにも満たないくらいの本にまつわるエッセイが連続したかたちになっていて、イラストもたくさんあります。
どこから開いて読んでも支障がなく、イラストだけ眺めてもいい。
著者が引き合いに出す本の名前や作家の名前は海外のもので、よく知らないものも多いのですが、わからなくても内容に支障はありません。
私も本を読みながらいろいろなことを考えているのでかなり共感できました。

この本を古本で買った、借りて読んだ、という話をわざわざ作者にするのはどういうわけなの?という話がSNSで盛り上がったことがあるけれど、私も感想でどうしてもこの本を読むきっかけがどういうものなのか、というのを書いてしまうし、こうして写真を残している。なんというか、読書体験そのものを残しておきたいし、もしも作者に会ったらそれを伝えてしまいたくなるだろうと思って、その気持ちもわかってしまうんですよね。
古本屋さんでキラッと光っていて見つけて、とても面白くていい出会いをした〜!と思ったら、その古本屋さんに本を売った人、そこに並べた人のことも考えてしまってさらにエモいし、そうなると体験そのものを共有したいだろうし……ということを、私も考えていました(笑)。

『白鯨』の話、図書館の司書さんの話が印象に残ったかも。また折に触れて読みたい本になりました。

『何回説明しても伝わらないはなぜ起こるのか 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』今井むつみ(日経BP)

今井むつみ先生の新刊。何回説明しても伝わらない〜!と思うことがあるので、まさに!と思って購入しました。

こちらは紹介記事。

これまで今井さんの著書を読んできたからか、聞いたことあるなという話が多かったのですが、ここが印象に残りました。

 多くの人は、「自分は合理的に判断し、決定している」と思っているかもしれませんが、そうではありません。選択や意思決定の多くの場合、人は、最初に感情で、端的に言えば「好きか嫌いか」で物事を判断し、その後、「論理的な理由」を後づけしているに過ぎないことを示すデータが、非常に多くの認知心理学や脳神経科学の研究で報告されています。(中略)
あらゆる計算をした上で、それでも優劣がつかないならば、コンピューターでは決めることはできないが、生き物なら決めることができる。それは感情があるからで、感情は合理的なシステムなのだ、というのです。

「感情」に気を配る

AIとの付き合い方を考えないと、この感情ひいては「直観」の部分が弱くなっていってしまうかも……というのは身につまされました。
でも、「感情」で判断をすると無意識下にある差別感情でジャッジを下す気がして怖い気もする。研鑽し、訓練せねば。

コミュニケーションについて自分がどうするか?という部分は引き続き今まで通り気をつけよう!というのみ……となった読書で、ちょっと物足りなさもあったかも。「上司に読んでもらいたい!」という気持ちが大きくなったと言いますか。
でも、「どうして!?」と思うような上司はこういう本読んでくれないんだよなあ、でもそうやって「他人をコントロールしたい(読んでもらって改善してほしい)」という気持ちを持つこと自体をそうじゃないよ!という本なので、仕方ないよなあ、でもなぜこちらばかり慮らねばならんのだ……という気持ちが抜けない、わがままな自分がいます。

『きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集』著・水野太貴 イラスト・吉本ユータヌキ 監修・今井むつみ(KADOKAWA)

ゆる言語学ラジオというYoutubeをよく聴いていて、赤ちゃんの言い間違いを集めた動画が特に好きなのです。その番組募集しているいろいろな子どもの言い間違いを集めた本。

紅茶に白桃ソルベを載ってます

ゆる言語学ラジオで脳内で言葉で思考せず絵で考えるビジュアルシンカーの話があり、文字が得意な人に優位な社会になっていることを憂いている話が最近よく出てきていて、いろいろ思うところがあったのですが、この本、字が苦手でもイラストでかなりの部分伝わるようになってる気がするんです。

右のページに子どもの言い間違い、左のページにイラストという構成なのですが、単なる挿絵ではなくて、イラストだけ見たら言い間違いがどういう状態なのかわかると言いますか。
だから文字追うの苦手、という人でもかなり見やすい。

かつ、いろいろな言い間違いは言葉の面白さがすごく詰まっています。
私はかつて、糸井重里さんの『いいまつがい』の本が大好きだったのですが、それは一発ギャグみたいにドカーン!と笑える感じ。こちらは爆発力というよりも、どうしてそんな言い間違いが生まれるのかの解説もついていて感心もしちゃいます。

イラストで見やすい、それだけでも十分楽しめる、けれどよく読むと言葉の面白さにも触れられる!とってもいい本でした。

『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚』かまど、みくのしん(大和書房)

以前に走れメロスのネット記事を読んだことがあって、なんとなく覚えていました。

今回、本になったということで購入してみましたが、本当面白い!
この本の中では発端になった太宰治「走れメロス」の読書、それから有島武郎「一房の葡萄」、芥川龍之介「杜子春」、そして『変な家』の作者「本棚」の読書が収録されています。
読了した後、探して他のWEBで読める記事もいろいろ読みました。どれも面白かった!

いい感じの喫茶店で読了

「走れメロス」の読書は、WEBに上がっているものと比べるとところどころ違うところがあって、その違いも編集者さんとか出版社さんの意向があるのかな……?とか考えて勝手に楽しみました(笑)。

読書に慣れた人間だと、読み飛ばしてとりあえず読むって所業は横行しているので、こういうふうに読んでいるところを見ると反省したり、いいなあって思ったり。

杜子春は特に、読了したときに謎の感動がありました。
「本棚」は、私が自分ひとりで読んでいると読書慣れしているが故の擦れというか、「あーはいはい、こういうパターンの物語ね」みたいなのある気がするんですが、こうやって感動してる人を目の前にして一緒に読むと、すごく感動できてしまって。

ひとりで黙々と読む……ということだけが読書じゃないんだってことを思い出させてくれてすごくいいなってなりました。

この本のおまけで動画で読んでいる様子が見られるものもあります!31日までなのでぜひ滑り込んでください!

今月末に新しい本を読んだ話も配信されていて、面白かった!

『AIは短歌をどう詠むか』浦川通(講談社現代新書)

AI短歌というのがあるらしく、最近AIにも短歌にもどちらにも興味があるので読むことに。

あんみつとコーヒー

朝日新聞社メディア研究開発センターで自然言語処理の研究開発している方が書いています。
AIがどのように言語を扱っているのか、という説明から始まるのですが面白かった。ベクトルの図がわかりやすかった!

短歌だけでなく絵とか、そっちを人間にやらせてくれ、AIは確定申告とかしててくれ、というようなつぶやきをSNSで見たことがあって、その通り!なんて思っていたのですが「質問に答えるとAIができる短歌AI」とか、創作の入り口になるようなものもあるんだなと思いました。
AIに何を任せるのか、という話が繰り返し出てきます。

 永田さんは取材で、「歌をつくる前はこう思っていたけど、歌をつくるプロセスでこうも思ったんだという自分の発見があって。これはすごく大事なことだと言い続けてきた。そうした言葉をAIが見つけてくれようと自分で見つけようと、本質は変わらないのかもしれない」と発言しています。
 これは、創作において手を動かす前に考えていたことと最終的な作品との間に生まれる差異を許容することの重要性を語ったものだと思います。頭だけではなく、手だけでもなく、別の知能との対話を通して、歌をつくる前の<私>とつくった後の<私>とで違いを生んでいく、そんな「付き合い方」の可能性を感じます。

第五章 うまく付き合う 

AIってなんか怖いなって思っていた面があって、興味もそこから来ていたんですが、やっぱり道具ってどう使うかが問題なんだよな、と思いました。

『体験格差』今井悠介(講談社現代新書)

動画を見てVALUE BOOKSから購入した本。体験格差には興味あるし、買うだけで寄付にもなるしいいな!と思って。

とうもろこしかき氷。この日は暑くて力尽きてしまった

でも読んでいくうちにあれ、これYahoo!ニュースで読んだな?と気がつきました。
ネットニュースのあちこちで話題になってて読んだ内容でした。それと、上の動画を合わせると恐らく本の前半部分で言いたいことの大半はわかる。

ただ前半はデータとその分析が多いのに比べて、後半は実際のご家庭や体験者へのインタビュー。かなり具体的でなるほどとなります。

自分は学習支援ボランティアをしているので体験格差を実感として持っているのですが、真っ白な状態だと「いや、勉強の方が優先なのは当然でしょ?体験は必需品じゃないでしょ?」と思うだろうなという感覚があって。人それぞれですが、事例での方が具体性やエピソードがあって、納得感があるかもしれないと思うのです。

私が「ああ〜」と思ったのは、冒頭にある、沖縄の団体の方の言葉。
北海道に旅行に連れていっても、子どもたちはいつものチェーン店などに行きたがる、というもの。
自分にも覚えがあるんです。
学習支援や子ども食堂に、出張のお土産をよく持っていっていたのですが、ちょっとお高めのお菓子を買っていってもみんな手をつけないんですよ。アルフォートとか、きのこの山やたけのこの里や、ハッピーターンなどの「いつも食べているもの」の方が選ばれる。
こっちの方がおいしいと言われて、そう?と言って強制はしませんがなんでだろー、食べ慣れないからおいしくないのかーと思ってて。それもあるだろうけど、ひとり何個ね、と言ってるからチョイスで失敗したくなかったり、そう頻繁に食べられるものでもないので好きになったら辛いだけだからかな、とか想像してます。本当、お土産のお菓子なんて些細なことだと思われても仕方ないんですが、「未知のものにチャレンジする」意欲が、こういうところでもちょっとずつ削られていると感じてるんです。
自身が旅行に行ってお土産を買ったり、家族の中の人がお土産を買ってきたり、そういうことも「経験」なんですが、そういうところから既に格差はあると思っています。

『日本扇の謎』有栖川有栖(講談社)

火村シリーズ、国名シリーズの最新刊。
久しぶりにミステリを読めるぞ!と発売日を楽しみにしていました。

純喫茶のプリンというコンセプトらしい

今回はかなり読み込んで犯人当てに挑んだのですが、書かれていない、推測する部分への意識が薄すぎて偽の手がかりに引っ張られてしまった感じがします。大外ししました(笑)。

有栖川作品が好きなのは、出てくる人物たちにちょっとウェットな人生の悲哀がだいたいあるところなんです。今回の主要人物も、切ないながらに人生のきらめきがあって……よかった。

『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』下村敦史(幻冬舎)

引き続きミステリ読みたいぞ!と思ってあらすじ面白そうで買うことに。
本当は単行本のキラキラした表紙が素敵で紙で欲しいな〜!と思ってたのですが、買おうと思ったときに買っちゃいました。

商品の欠陥で世間から非難されていた渦中、社長が殺された。そして関わるメンバーが廃墟に集められる。雑誌記者、社長夫人、運転手、告発した社員、突然出世した社員、清掃員、被害者遺族。廃墟に閉じ込められた七人は、スピーカーから流れた「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる、犯人以外は全員毒ガスで殺す」という「ゲームマスター」の声に従い、命をかけて「自分が犯人だ」と自白し始める。

チョコミントのチョコ

きっとどんでん返しがあるぞ!と思って注意深く読んだので、これこういうことかな?とちょっとかすってたところはありました。
でも、犯人当て、トリック当てより最後にはこのタイトルの意味合いがかなり心に来ました。今の時代に刺さる話かも。

『銀河英雄伝説8 乱離篇』『銀河英雄伝説9 回天篇』田中芳樹(東京創元社)

8巻、この展開は示唆されていたのでわかっていたけれど、辛かった。
怒涛のように展開したと思ったら、9巻ではもう少し、ヤンのことについて仲間たちの反応の描写があって、そこを読めて理解が深まったけれどそれはそれでちょっと辛かった。

8巻のカリンについて、「男のことを語るなら、男の1ダースでも手玉に取ってからにしろ」という言葉はちょっと嫌になっちゃいました。そうやって黙らされた女性はいくらでもいただろうから。そこはやっぱり、少し前の小説だ、と思ってしまうかも。

『花菱夫妻の退魔帖』白川紺子(光文社キャラクター文庫)

友人から勧めてもらった本。オーディオブックで聴きました!
最近、電子で買おうかな?と思って検索するとオーディオブックで聴けちゃうことが多くて、いいのかしら……まあオーディオブックの月ごとの会費は払っているんですけど。

大正という舞台設定、主人公の華やかな装いの詳細な言及が楽しい!
最初は印象が微妙だったのが、だんだんと関係性が変化していくのが自然でした。ふたりの道行には困難が待っていそうだけれど、これからどうなっていくのか、追いかけていこうと思います。

ブルーピリオド11巻

映画を見てきました。読み返していろいろ考えて書いたので貼っておく。

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