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祭りや行事を次代に伝えるために

滋賀県高島市の住職・行政書士・FPの吉武学です。
遺言・相続・葬儀・埋葬・終活
のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
詳しくはこちらのホームページから。

岩手県奥州市の黒石寺で毎年旧暦正月7日から8日にかけて行われてきた蘇民祭が、今年で最後となりました。
蘇民祭とは、五穀豊穣や無病息災を祈る神聖な祭りで、下帯姿の男たちが松明を掲げて行進したり、護符が入った麻袋(蘇民袋)を奪い合ったりする様子は、日本三大奇祭や日本三大裸祭りの一つに数えられるほどの迫力があります。

しかし、この伝統的な祭りも、時代の変化によって様々な困難に直面してきました。
2008年には、上半身裸の男性の胸毛が写った写真がポスターに使われたことで、JR東日本が掲示を拒否したことが話題となりました。
また、観光客の増加やマスコミの押しかけによって、祭りの神聖さが失われていると嘆く地元民も多くいました。

そして、最大の問題となったのが、関係者の高齢化や担い手不足でした。
そこで、黒石寺の住職は、2024年の開催を最後に終了することを発表しました。
2025年からは、伝統を継承するために護摩祈祷を続けていくという方針です。

地域にとっても、神社や寺にとっても、祭りを継続して次代につなげていくことは、現代にとって非常に困難なことになっています。
新聞記事では沖縄県宮古島で祭りの簡素化をめぐり議論が行われてきた様子が書かれています。

記事中では高齢者ほど保守的に発言されるとあります。
「昔からのしきたりを今、変えるわけにはいかない」と言っていますが、本音としては「私の時に変えたと周りから後ろ指さされたくない」という気持ちではないでしょうか。

今年、私のお寺では「高島秋講」という行事が行われます。

江戸時代から続く浄土真宗の教学を学ぶ場の開催です。
江戸時代の頃は一か月間くらい開催されていたそうですが、昭和の頃には7日間になり、今は5日間となっています。

しかし、開催寺院の御門徒さんからは負担が大きいと不満の声が上がっています。
開催期間を短くできないのか、開催する会場を市民ホールなどにできないのか、と言われます。
私としてはごもっともなご意見だと思います。
教学を学ぶ、と言っても平日も含まれる連続5日間に時間を取れるのは、今や年配の方だけですし、大学教員の講義並みの内容を聞きたいと思われる方は決して多くはありません。
そんな中でも、開催寺院の御門徒はその準備や運営のために、忙しい中、仕事の休暇を取りながら時間を割いてくださっています。
また昔は大人数が集まれる場が寺院の本堂だったと思いますが、今や真夏に本堂に集まって正座で受講するのでなく、空調や椅子・机の環境が整っている公共施設などを利用すべきだと思います。

行事スタイルが時代と会わなくなってきているから無くしてしまえ、とは思いません。
江戸時代から教学を学ぶ場が地方で続いてきた、ということを伝えるのは貴重だと思います。
だからこそ「高島秋講という名前は残す」「開催期間は土日祝を中心に短くする」「公共施設を利用する」「行事中の法要については寺院を利用する」などの方向転換が必要だと思います。
しかし、こうしたことを称えても、宮古島の例のように高齢の僧侶から反対され、なかなか進まないのが正直な所です。
今は何とか御門徒の方が無理を聞いてくださり続いているこの行事も、このままではある日突然に僧侶側がやりたいと言ってもできない日が来ると思います。
行事を昔のまま残すのは非常に難しいです。
だからこそ、何の面を残すのか考えながら、時代につなぐ方法を考えるべきだと思います。


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