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航海日誌

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読書とは、本という無数の寄港地にしばし停泊するようなもの。その場合、海とは人生である。そして読書そのものもまた、凪があれば、嵐もある、難所を越えることもあれば、座礁することもある…
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#読書

航海日誌 #1「出港地ボルヘス、あるいは引用の海」

航海日誌 #1「出港地ボルヘス、あるいは引用の海」

 ボルヘス(Jorge Luis Borges 1899-1986)は生涯長編小説を物さなかった。彼の創作はすべて『伝奇集』や『砂の本』といった短編集にまとめられ、創作といっても、そのほとんどが世界各地から掻き集められた故事や伝説、史実のこぼれ話がベースで、どこまでが引用でどこからが虚構か、その淡いはいずれも巧妙にぼかされている。あるいはボルヘスの物語群については、次のように言うべきかもしれない。

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