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受注率が低い本当の原因は?負のサイクルを根本から変え、風土醸成〜業績向上まで伴走した話

原因がブラックボックス化…

A社では案件獲得数が前年比で467件増だったのにも関わらず
受注件数はたったの前年比2件増でした。

要因は受注率の低さであり、この業界の一般的な受注率が6~8%と言われるなか、A社の受注率3.7%でした。
A社トップから、業界平均値の6%を目指すように指示があり、これに伴走させていただいた話です。

まずは案件獲得〜受注までのどの段階に課題があるか特定できるように
支店に案件管理表を導入しましょうと提案します。

8支店に訪問し提案しますが、なんと全ての支店でNGと言われます。

その理由は、会社として受注率が悪かろうが、支店としては業績は好調。
受注率を改善しなくとも現場は困らない、ということでした。

そこに案件管理表が導入されると余計な仕事が増えるだけだったのです。

受注率が低い原因が分からない…現場はやりたくない…
改善に向けて進めない状況でした。

そんななかようやくK支店の所長から渋々承諾をいただくことができました。
K支店は案件数は全国No2、しかし受注率は全支店最下位の1.2%という支店でした。
今思うと、受注率には興味はないが、さすがに支店の中で最下位はマズイ…という心理だったのかもしれません。

またK支店の所長を味方につけ、他3店舗でも導入が決定しました。
徐々にデータが収集されていきますが、ほぼ全てに課題があると言っても過言ではないぐらいな状況で
正直どこから手をつけようか頭を抱えていました。

一本の電話

そんななか、仲良くさせていただいていた6年目の営業の方よりお電話がありました。
「忙しすぎて会社を辞めたいと思っているんです…何がやりがいか分からなくて…」

これを皮切りに、同時期にミドル層の社員や所長クラスが多数退職されました。
理由をお聞きすると、皆様口を揃えて「業務が忙しい」であり
導入した案件管理表が逆に業務量を増やしてしまったのではないか?とも考えました。

再度A社の状況を整理します。
起こっている事としては売れる人でも辞めたいという環境でした。

営業人数比率は若手が85%、ベテラン層が15%です。
売上実績比率でみると、ベテラン層15%が全社の80%の売上を作っている事が分かりました。

各支店の所長にヒアリングを重ね、考えられた仮説は以下です。

ベテランが多忙→若手の育成時間がない→若手が育たない→若手が売上を作れない→更に数字負荷がベテランにのしかかる

これにより、ベテラン層が超多忙になり退職に繋がっていると考えられました。

見えてきた課題の本質

この状況では冒頭の受注率改善に着手できる状況ではないと感じましたし
そもそも、本質的な課題は受注率改善ではなく、この負のサイクルを変えることだと判断しました。

ではこの負のサイクルをどこから変えていくか。
若手が育つ事で良い循環ができるのでは?と考え、ここから着手します。

そもそもなぜ売上比率にこれだけ課題があるのか?深堀ります。
答えは若手とベテランの案件を獲得するためのルートが違うことにありました。

ベテラン層はこれまでの人脈から紹介であったり、会社間でやりとりのある単価の大きな案件が渡されていました。
一方で若手にはネット広告に入ってきた資料請求を案件とする動き方でした。

入社歴1~4年目の若手の方のみにアポイントをお願いいしました。
Willや不満を聞き出します。

「本当は問い合わせ月15件は欲しい」
「先輩が忙しそうなので細かい事を聞きにくい」
「顧客対応中に会話が続かない、なにを話せばいいか分からない」
「受注しても褒めてもらえない」

以下のことが分かりました。

定量面では、目標金額と件数。
これを達成するために必要案件数、問い合わせ数。

定性面では、若手が称賛される場がない、支店単位の教育体制が皆無。

打ち手の策定をアクションプラン

これらを解決するために4つのポイントにまとめました。
①行動量の確保
②心理状態の安定
③知識・スキル
④やりがいのある環境

①〜④が担保できるとモチベーションに繋がり成果に表れるのではないかと考えました。

①行動量の確保

先述したように若手の案件獲得の原子はネット広告からの資料請求です。
これまでは各支店の所長が決裁をしていましたが、所長はネット広告を基点に営業をしているわけではありません。

若手のリーダー格の方に予算枠だけは共有し、その方に広告の決裁権を与えていただくようにしました。

若手社員の責任で判断できるような環境にしていただきます。

また若手の案件数をモニタリングし、目標達成のために必要な案件数を確保できるように
社員間で偏りがなくなるよう問い合わせを割り振る仕組みを整えました。

②心理状態の安定

まずはA社の採用で関わっているF社とコンタクトをとりました。
F社で持つサービスで組織状態・個人特性・心理状態が可視化できるオンラインアンケートを若手に実施し
不満・不安がある潜在層にはA社人事から面談を行っていただきました。

若手に人事部との繋がりを持っていただくことで、上長以外で悩みや意見を打ち明けられる機会を設けました。

もちろん私からもコンタクトをとり、困っていることをヒアリングし心理的な安全性を確保できるように動きます。

やはり社内の人間にはどうしても言いづらい事もあるはずなので、それを漏らさずキャッチします。

③知識・スキル

若手のニーズに応える研修を作りたいと考え、若手の方にアンケートを行い苦手分野を吸い上げました。

その結果をもとに、支店で若手+所長という場を定期的に設けていただき
まずは若手だけで苦手分野について話し合い、最後に所長から補足アドバイスを行うという形式で一つずつ解消していきます。

また体系的な研修が必要な場合は、コンテンツをエリア長と決めナレッジのインプットを行いました。

④やりがいのある環境

達成者には部長から賞品(景品・賞金・豪華など…)を贈与していただくようにしました。

また他のメンバーが見ている場での称賛の場をつくりたいと考えましたが、毎回部長に内容をご準備いただくことは難しい…

私がメール文を書き部長のゴーストライターとなり
部長には転送だけ依頼するという運用で激励のメッセージを作りました。

「褒めてもらえない」と不満を漏らしていた女性営業も
「普段褒めない分こういうメッセージがあると嬉しい!」
と仰っていて、これまでの称賛がない風土が逆にこの取組の追い風になった実感がありました。

これは支店内だけでの取り組みですが、より大勢の前での称賛の場を増やすべく
四半期毎に受注数TOP、達成率TOPなどにヒーローインタービューを行い
本部から全社員宛にメルマガとして配信していただきました。

これら①〜④の取り組みは1営業部だけでしたが、社長の目にとまり残り2営業部でも拡大しました。
全部で8支店、約60名の営業メンバーと正のサイクルへと変えていきます。

取り組みの結果

結果として、最初案件管理表を導入したK支店の受注率は1.2%→7%へと改善
元々の号令であった業界平均受注率6%という目標に対して6.22%という実績で着地できました。

ちなみにK支店は以前から案件数はNo2と担保できていたので、受注率改善により
受注件数も全支店中2位まで向上したとご報告をいただきました。

「若手が頑張る風土ができつつあり、ベテラン層の負荷を少しずつ減らせるように頑張っています」
「営業から次の研修の要望が出ているんです」

このように行動が変わってきているご報告をいただくと、一緒に取り組みさせていただいて良かったと感じますし
人が育つことが事業の成長に繋がると改めて実感した案件でもありました。


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