椎名季咲

1991年生まれ。都内で編集者をしています

椎名季咲

1991年生まれ。都内で編集者をしています

最近の記事

「また、あしたね」と放り出す夜もわるくないと思うんだ

頭は疲れているのに、どうしても歩きたくなる夜が増えた。 動いていれば、気がまぎれるからなのか。 動いていれば、どこまでも行ける気がするからなのか。 動いていれば、口の中にできた口内炎の痛みも、誰かの言動に翻弄されて乾ききった気持ちを、ぜんぶ今日に置いていけそうな気がするからなのか。 日がまわりそうな時間に、じぶんの足音しか響かない道をとおって、 大きな道路に差しかかったら、車の数が少なくなったころを見計らって、 道路の真ん中で深く呼吸をして、 昼間は何千台もの

    • 夜行バスにはドラマがある

      社会人になって、大学生よりも時間がなくなった。けれど、その分お金に余裕ができた。 お金に余裕ができると、いろいろな選択肢の幅が広がった。一方で大学生のころはよく選んでいたのに、選ばなくなったものも増えた。 夜行バスもそうだ。 乾燥したあの車内に閉じ込められるよりは、4列シートのリクライニングをギリギリ下げても首がいたくなるよりは、まだ到着じゃないのかなと目を開け時刻を気にするよりは どうせなら仕事終わりか朝イチに新幹線や飛行機に乗る。ふかふかのベッドで眠りにつく。そう

      • ただ、後悔している

        「毎日noteに挑戦する!」と宣言したことを。帰りの電車の中でずっと。 今日は帰宅したら原稿の修正対応をしようと思っていた。でも、毎日noteを書きつづけている友人に感化されて、とっさに宣言してしまった。彼女とそして彼女が(もちろん私も)大好きな小籠包の前で。一滴も飲んでいないのに、勝手に口が動いた。 大丈夫、まだ間に合う。「明日からやる!」って作戦に切り替えよう。 そう思って、帰りの電車でLINEを書いては消し、書いては消し。でも小籠包をおいしそうに食べる彼女の動画を

        • 相談前から「答え」は決まっている

          大学生のころ、社会人になったら悩みなんてなくなるものだと思っていた。でも、そんなこと一切なくて、社会人になっても悩みつづけることはたくさんある。仕事に恋愛、そして将来のことも。 人生「悩み」がなければ、つまらないよねと強がってみるけど、悩んでいる時期は正直しんどい。 「仕事を続けるべきか、転職すべきか」 「恋人と続けられるのか」 「引っ越しする時期なのか」 なんでも選択できる「自由」という名の責任。 じぶんの人生の影響が大きければ大きいほど、どうしたらいいんだ

        「また、あしたね」と放り出す夜もわるくないと思うんだ

          「あのころはよかったな」にひそむ魔法

          ヨーロッパに住む、3つちがいの姉がいる。 「結婚したい結婚したい」と一昨年ごろまで騒いでいた姉も、今年の春、 現地で出会ったすてきな人と結婚した。一人の女性から「妻」という顔をもつようになった。 が、いまやLINEで「結婚早まったかなぁ」とこぼすときがある。旦那さんは外国人だから、文化の壁もあるのかもしれない。 わたしが夏休みに、ぶらりと海外へ行くのを見て、「いいなぁ。どこでも行けて。わたしも昔のようにひとり身だったら自由に行けるのに」ともらしたりすることもあった。

          「あのころはよかったな」にひそむ魔法

          その「いつか」は、やってこない

          「なにか、やりたいことはあるの?」 と聞かれると、ウッと構えてしまう。即答しないと「なんも考えていない子なんだな」と思われてしまうのもいやだし、かといって、思ってもいないかっこいいことばを並べるのもいやだ。「いずれ海外ではたらきたいと思っています」という昔からある思いは伝えて、乗り切ってきた(つもりだ)。 自分の人生をふりかえりながら就職活動にのぞんだのは、もう5年前になる。 例年よりも雨がつづく今年の9月と10月、就職活動以来、まじめに自分を見つめてみる機会があった。

          その「いつか」は、やってこない