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相談前から「答え」は決まっている
大学生のころ、社会人になったら悩みなんてなくなるものだと思っていた。でも、そんなこと一切なくて、社会人になっても悩みつづけることはたくさんある。仕事に恋愛、そして将来のことも。
人生「悩み」がなければ、つまらないよねと強がってみるけど、悩んでいる時期は正直しんどい。
「仕事を続けるべきか、転職すべきか」
「恋人と続けられるのか」
「引っ越しする時期なのか」
なんでも選択できる「自由」という名の責任。
じぶんの人生の影響が大きければ大きいほど、どうしたらいいんだと頭を悩ませるほど、じぶんの人生なのにひとの意見に身をゆだねたいことがある。
弱っているときはなおさら、ひとに肯定や否定をしてほしいと思う。
「こんな悩みなんて、とんでけー!」と天井を見上げた夜が何回あっただろう?
社会人になりたての1年目のある日、幼なじみから突然連絡があった。幼稚園小中高一緒の上京組というなんとも縁のある存在だった。
とはいえ数年ぶりの再会。再会の場所は、横浜の洒落た居酒屋のカウンターだった。久しぶりに会うことはもちろん、互いの近況報告を楽しみにしていたのだけど、わたしはその時期上司に「会社をやめる」話を言おうか言わないかで悩んでいた時期だった。
当時付き合っていた彼氏は、同じ1年目だったこともあり言えず、家族にも「え、もう?」という反応が返ってきそうで言えず、悶々としていたのだ。
最初は「久しぶりだね」「あのころはさぁ」と思い出話を咲かせていたが、そこは昔から知る幼なじみ。わたしが深刻な面持ちになった一瞬を見逃さず、「なにかあった?」と聞いてきた。
「まだ1年目だから続けた方がいいかもしれないと思うときもあるの。でも、年数関係なく思い立ったら動くべきだとも思ってさ」
ひととおり状況を話し終えたとき、彼が口を開いた。顎に両腕をつけて「いや、まだ続けたほうがいいんじゃない」。即答だった。
その瞬間、「でもさ」とわたしの口が動いた。彼は生の中ジョッキを口にうつす。そうして、待ってましたと言わんばかりにわたしの目を見て笑顔を見せた。
「おもしろいことに、ひとって相談するときってだいたい答えが決まっているんだよね」
「もし、相談にのってくれた人からかえってきた言葉にじぶんが心地よく思えるなら。もし、相談にのってくれた人からかえってきた言葉にじぶんがいやと感じるなら。ほら、答えはもう出ているでしょう?」
「今日はたまたま俺だったけどさ、相談する相手も自然と選んでいるかもしれないね。『この人なら共感して肯定してくれるだろう』『この人なら否定してくれるだろう』って自然にじぶんの中にあるベクトルへ背中を押してくれる人を選んでしまうのかもしれない」
でも、これが一番良いくすり。と、続ける。「だいじょうぶ。来年のいまごろには、いまものすごく頭にかかえて悩んだことが笑い話になっているはずだから」
幼なじみの彼にそう話してもらってから、なにかと悩むことに前向きになったし決断も早くなった。
それは、こっちを選んだら後悔するかもという心配よりも、選んだことを正当化できるようにがんばらなきゃと思うようになったから。「そう考えたら、楽でしょ?」と笑って見せた、彼の顔をいまでも昨日のように思い出すから。
相談する前から答えが決まっているーーのなら、ひとに相談することが無意味なの? とは決して思わないし、そう言いたいわけじゃない。ひとに相談することで、じぶんにない視点も見えるはずだから相談することにはとても価値がある。それに、じぶんの決意をみなぎらせてくれる。
きっとわたしは来年も再来年も、だれかの奥さん、お母さんになってもならなくても、おばあちゃんになっても、死ぬまで悩む、悩みつづける。
でも、思うのだ。
どんなに悩み苦しくても、悩み死ぬことはない。来年のいまごろにはきっと笑い話になっているからって。
そんなおまじないを、今日もかけた。
悩み疲れるな、若者よ。
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