見出し画像

【中小零細企業・個人事業主こそチャンス】モノが売れない時代の驚異の販売戦略とは?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
「モノが売れなくなった」
「マス広告の効果がなくなった」
「価格競争も、もはや限界だ」
 
このようなネガティブな声が聞こえてきます――。
 
そんななか、Z世代を中心に、爆発的な売上を上げている驚異の販売戦略があるのはご存じでしょうか?
 
しかも、中小零細、個人事業主こそ、効果バツグンの販売戦略といわれています。
 
その販売戦略とは、「ライブコマース」です。
 
「テレビショッピング」とは違います。
いわゆる「ライバー」とも違います。
 
前者は、売り手側が一方的に宣伝して売り込む手法、後者は、投げ銭文化が根付いた推しビジネスです。
 
今回お伝えしたいのは、「小売業界の革命を引き起こすのは、時間の問題」といわれている「ライブコマース」です。つまり、「インスタライブ」をはじめとするSNSのライブ機能を使って、視聴者とコマーサーが双方向のやりとりをしながら、商品やサービスを販売する、まったく新しい販売手法です。
 
すでに始めている企業や個人では、双方向のコミュニケーションを通じて、さらなる顧客ニーズを引き出し、リアル店舗・ECショップの売上も大きく押し上げている企業・個人が続出しています。
 
そんな「ライブコマース」界で日本における第一人者として注目されている株式会社テイラーアップCEO松村夏海さん(Z世代)が、ライブコマースの仕組みと全ノウハウを公開した新刊『売れる「コマース」入門』が、6月13日(Amazonでは先行販売中)に発売されます。そこで今回は、同書発売に先立ち、同書の「はじめに」「第1章」「目次」を全文公開します。

「ライブコマース」本の決定版!

はじめに──Z世代の僕がライブコマースの会社を立ち上げた理由

僕たちZ世代と他の世代の違い

 はじめまして。
 松村夏海(まつむら・なつみ) と申します。
 ライブコマースの会社をやっています。1997年生まれの、いわゆるZ世代です。
 僕たちの年代、いわゆるZ世代って、生まれたころから携帯電話が世の中に存在し、そこから派生したSNS──僕が最初に触れたのはミクシーでしたが──そういうものが物心ついたときにはすでにあった、いわゆるデジタルネイティブ世代です。
 例えば、友達に連絡するにしても、インスタグラムのDMを使ったりだとか、Twitter でつぶやいたりということが当たり前の日常というか、生活の中心がネット上の仮想現実にあるので、今注目されているメタバースの世界をすでに生きているような感覚なんです。そこは、他の世代の人たちからすると違うのではないかと感じています。
 だから、ライブコマースについても、ものすごくしっくり来るし、Z世代の僕がライブコマースの会社をやることに意味があると思うんです。
 例えば、テレビショッピングは、単にいい商品があれば、視聴者がついて売れちゃうんですが、ライブコマースはそうはいかない。ライブコマーサーの売る力が必要ですし、それにはSNSの活用が必須です。
 当然、そのノウハウについては、SNSネイティブのほうが圧倒的に強いわけです。
 実際、2020年7月に立ち上げた僕の会社は、年間100本以上のライブコマースを企画段階から行ない、大手メーカーのライブコマースでは商品が売り切れたり、D2Cメーカーでもライブコマースの視聴率を上げ、LTV(ライフタイムバリュー)の高いユーザーを巻き込んだりと、業界随一の実績をあげています。

祖父と父から学んだ、起業家としての指針

 なぜ創業2年程度で、こうした実績をあげられているのか?
 もちろんZ世代だから、という理由だけではありません。
 そのノウハウをこの本で少しずつ明らかにしていこうと思いますが、まずは自己紹介を兼ねて僕のこれまでのヒストリーをお話しさせてください。
 生まれたのは、静岡です。
 浜松の近くの湖西市、愛知の豊橋の隣ですね。海に面した街です。なので、名前が夏の海と書いて夏海なんです。スポーツはアイスホッケーをやってましたが……(笑)。
 祖父は呉服屋、父親は船舶系の会社をやっていました。祖父が父に跡を継がさなかったのは、「2代目は絶対うまくいかない」という信念があったから。同じことをやっても、時代が変われば、古くなるからです。結局、祖父の店も商店街の過疎化で3年前に閉店しました。祖父の見立ては正しかったということになります。
 だから僕も、「祖父や父とは別のことをしなくちゃ」と、小さいころから思っていました。そして、「普通に二人を越さなきゃ」とも意識していました。だから、こういう仕事を選んだというところもあります。

何かに「徹底的に打ち込む」

 さて、中学のときはアイスホッケーに打ち込みました。チームが西日本で1位を獲ったこともあり、本気でやろうと北海道の高校に越境入学。そこでは最高ベスト8までいきましたが、まあ、自衛隊みたいな学校で(笑)。朝7時から練習が始まり、学校まで走って行って、筋トレして、ご飯を食べて、そこからシャトルランやって、また走ってアイスホッケーのスケート場まで行って、そこから練習して夜トレの筋トレが始まる──みたいな生活を3年間送りました。そのころの僕は、ベンチプレスで100キロ上げてて、体重も75キロぐらいありましたからね(今は60キロを切ってます)。
 その後、指定校推薦で法政大学の英文学科に進んだんですが、スポーツだけだと良くないなと思っていました。あと留学はどうしても行きたいと思ったので、朝4時に起きてホッケーの練習やって、7時から1時間目の授業に行って、帰ってくるのが夜の7時。そこから夜中1時まで勉強してみたいな暮らしを半年間続けて、TOEIC300何点だったところを、700以上取ることができ、学年で2番になれました。そこで文学部の8人の留学枠に選ばれて、アメリカに行くことができました。
 ちなみに、日本では通常2単位なんですが、アメリカの大学って、1授業3単位なんです。だから、留学中に単位を全部取りきっちゃって、日本に帰ってきてもやることがなかったんです。だから仕事でもしようと、PR会社に学生インターンで入りました。
 毎朝7時に出勤して、帰りは終電。1カ月のうち5日間ぐらいは会社に泊まるみたいな生活を1年間繰り返しました。

安定より挑戦

 就活ではDeNA、サイバーエージェント、アクセンチュア、キーエンスを受け、DeNAとサイバーエージェントは1次で落ちたんですけど、キーエンスとアクセンチュアは結構いいところまでいったのですが……、でもちょっと違うなと思うようになりました。
 人の下で働けないというか、そもそも、スーツで出社とかできないタイプです。
 それに加えて、経済面でも引っかかるところがありました。学生のころから年収で約500万円はもらっていたので、安定した給料とかにあまり関心がなかったんです。
 それよりも、何か新しいことに挑戦して、ワクワクしたい──。その気持ちのほうが勝っていました。

「ライブコマース」ビジネスとの出会い、起業へ

 結局、就活で受けた会社は全部切って、インターンで入っていたPR会社のつてで、ライブコマースのシステム会社に就職しました。
 その会社は、サイト上でライブコマースができるシステムを提供する会社で、社員数10人くらいの小さなスタートアップ企業でした。
 僕は最初からマネージャーみたいな立ち位置でやらせてもらいながら、営業もして、リレーションもして、納品もして、バックオフィスもやってと、ライブコマースのノウハウをひと通り学ばせてもらいました。
 そうしたら、コロナ禍になったんです。
 2020年1月の段階では何の変化もなかったんですが、2月になったら問い合わせ件数が急増。1月の6倍になっちゃったんです。3月、4月もずっと6倍の状態。
 このタイミングで僕は、「あっ、これ絶対来るだろうな」と思いました。
 さらに、システム会社でクライアントと打ち合わせをしていく中で、初めてライブコマースをやる会社がいきなり高額のシステムを入れるのは、無理があるなと思っていました。それよりも、まずはノウハウを提供して、成功体験をつかんでもらうことが大事だと思ったので、所属していたシステム会社が大手IT企業にバイアウトされるタイミングで、独立・起業しました。

中小零細こそやるべき、伸びしろ無限大ビジネスのノウハウ大公開

 まわりには、「ライブコマースなんて絶対うまくいかない」といわれました。
 なぜかというと、実は2017~2019年に、日本市場に一度ライブコマースの波が来ていて、メルカリ(「メルカリチャンネル」)や楽天(「Rakuten LIVE」)など大手ECサイトも参入したのですが、すぐに撤退、継続していてもうまくいっていなかったからです。
 日本にライブコマース文化は根づかないんじゃないか?
 誰もがそう思っていた時代でした。
 でも、逆に参入してくる企業も少なかったですし、本当にプロフェッショナルでやれる人もいませんでした。
 つまり、マーケティングの視点とライブコマースの視点を両方持っている人材が、誰もいなかったのです。
 だから逆にチャンスだなと思い立ち、2020年7月22日、「Tailor App」を設立しました。
 最初は僕1人でした。
 でも、最初からとてもうまくいきました。
 まずクライアントを探すための営業をしたのですが、自分から申し上げるのは恥ずかしい限りなのですが、すごく営業が得意なんです。会社を立ち上げて初月でテレアポ80件埋めましたから。それもほとんどが一部上場企業。
 要はそれだけ多くの企業がライブコマースのノウハウを求めていたということです。売上も初年度から1億円を超えました。
 2年目も着実に業績を伸ばし、そして、3年目を迎える2022年、この本を書くことに決めたのです。
 なぜなら、もっと多くの人や企業にライブコマースを始めてほしいから。
 中国では2020年時点で約17兆円の市場になっており、その大きな波は日本にも必ずやって来ます。いや、来つつあります。
 そして、やって来たら広まるのは早い。この時代、一気に広まります。
 そうなったら、後は資本力の勝負になってきます。
 今なら、まだ個人でも中小企業でも勝てます。
 いえ、むしろ古い考えにとらわれない、新しい感性を持っている人たちや企業に有利なのがライブコマースです。Z世代である僕が、会社を立ち上げてすぐ大きな実績をあげることができているのが、その証拠です。
 ライブコマースなら、誰にでもチャンスがあります。
 そしてそれは、小売業界に対する革命でもあります。
 モノが売れない時代に、モノを売って売って売りまくる。
 さあ、今すぐ僕と、ライブコマースを始めましょう。

第1章 ライブコマースとは何か?

【この章のポイント】
 ライブコマース──耳にしたことはあるけれど、実際に目にしたり、ましてや物を買ったりしたことがある人は、日本ではまだ多くないのではないでしょうか。この章では、ライブコマースの概要や、メリット・デメリット中国で急拡大している理由などについて解説します。

「テレビショッピング」と「ライブコマース」の違い

 よくライブコマースと比較されるのが、テレビショッピングです。
 まず、1つの大きな違いは、「それぞれ利用している媒体」が違います。
 テレビショッピングは、当然ながらテレビを媒体として使っています。何年も前からテレビ離れが叫ばれていますが、今でも家に帰ったら、とりあえずつけるという人は多いでしょう。PV数でいえば、100万から1000万ぐらいは取れる媒体です。
 一方、ネットを使ったライブコマースは、テレビショッピングほどPVは取れませんし、〝ながら視聴〟できないというハンデもあります。テレビは受け身(受動性)のメディアですが、ネットはある能動性が必要な媒体です。
 さらにライブコマースは、文字通り〝生〟なので、その時間に〝ビタに〟見に来させなければなりません。
「なぜそれを観たいのか」という、しっかりとした「視聴動機」をつくる必要があります。

視聴動機を生み出す2つの要素

「視聴動機」を生み出す要素は主に2つあります。
 1つは「人」、もう1つは「ここでしか買えない物」です。
 詳しくは後述しますが、どちらもないと、お客様を呼び寄せることはできません。
 ですが、いざ呼び寄せることができれば、テレビより結びつきが強くなります。当然、購入確率も上がります。
 ざっくりといえば、「マスの消費者に向かってゆるやかな結びつきをつくる」のがテレビショッピング、テレビほど大人数ではないけれど、「個人の消費者と強い結びつきをつくる」のがライブコマースです。

なぜライブである必要性があるのか?

 ここが一番重要かもしれません。テレビショッピングも生放送がありますが、大きく違うのは、「相互コミュニケーション」ができるかどうかです。
 テレビショッピングは、基本的にショッパー側からお客様側への情報の一方通行です。その商品の機能や魅力を、一方的に語ることしかできません。
 ですが、ライブコマースは、お客様側から「耐久年数はどれくらい?」「この食材はどういう味なの?」という質問をすることができます。
 商品理解を深められると同時に、そうしたやりとりをコマーサー(ライブコマースをする人)とすることは、ザッツ・エンターテインメントです。これは、ライブではないYouTube 動画や、写真だけのECサイトでもできないことです。
 とはいえ、ライブコマースをすれば、すぐに自由闊達なやりとりが生まれるかというと、そんなに甘くはありません。某テレビショッピング大手さんもライブコマースに挑戦していますが、正直うまくいっていません。
 なぜかというと、「お客様からコメントを引き出すような話し方」ができていないからです。
 僕がプロデュースするライブコマースにもちゃんと台本がありますが、視聴者が質問をしたくなるような仕掛けが、随所に施されています(後ほど詳しく説明します)。
 いずれにせよライブコマースは、リアルタイムなやりとりを、大勢の視聴者とともに共有できる「ライブ感」が最大の魅力なのです。

予算の問題がなければ、どちらを選ぶべき?

 もしテレビショッピングを制作する予算があったとしても、よほどシニア向けの商材でない限り、僕は絶対ライブコマースをおすすめしています。
 なぜかというと、自分たちが狙っている顧客層に〝ビタッ〟と当てられるからです。
 特に僕のようなZ世代には圧倒的に有利です。
 なぜなら、Z世代以降の人間は、基本的にマスメディアを信用しません。
 テレビより仲間の口コミや、フォローしているインフルエンサーの発言を信頼するからです。
 Z世代ではなく、例えば30代のお客様を集めたければ、その世代に人気のタレントをゲストに招くことで、比較的簡単にセグメントできます。
 一方、テレビショッピングは相当な視聴者数が取れるのですが、どうしてもシニア層に偏ってしまいます。同じように30 代に人気のタレントをゲストに呼んだところで、そもそもテレビショッピングを視聴する習慣がない30代に、その情報は届きません。
 その点、ライブコマースは、ネットやSNSを使って集客するので、相当高い精度で情報をリーチすることができます。
 最近はSNSも年齢層が上がってきていて、インスタグラムの30代と50代のユーザー数はそんなに変わりません。YouTube も、釣りやゴルフの動画なら50代、60代の人も観ています。確実にネットの滞在時間は、幅広い世代で増えています。
 だからテレビショッピングが強いシニア層であっても、ライブコマースで集客することは可能なのです。

ライブコマースなら、扱う商品も数も自由

 ライブコマースは、コスメやシャンプーのような消費財から、電化製品や車、それこそ家まで、何でも扱えるという魅力があります。しかも、1個からでもOKです。
 テレビショッピングはそうはいきません。予算規模が大きく、マスに向けたものなので、扱えるのは一定数のお客様が購入してくれそうな商品に限られるからです。アイテム数もそんなに多くないはずです。なぜなら、ある程度利幅のある商品でないと、元が取れないからです。
 ところが、ライブコマースの場合、圧倒的に低予算でできます。それに視聴者もセグメント化されているので、〝そんなの誰が買うの?〟という、いわゆる〝とんがった〟商品も扱うことができます。
 例えば、おすすめの本の感想を話しながら売るのはおもしろそうですよね。
 世界にたった1つしかない高級腕時計の限定モデルだって、欲しい人がいれば成立します。自分が乗っているフェラーリを売りに出すのだって、もちろん有りです。
 カード決済ができるものなら、何でも扱えるのです。むしろ、その他大勢に売る必要がない超富裕層向けの商品なんて、ライブコマースに向いています。家を受注販売するのもいいかもしれません。
 極端な話ですが、売らなくたっていいのです。ライブコマースがきっかけで新しいコミュニケーションが生まれるだけで、十分な価値があります。
「物を売る」という概念そのものを根底から覆す可能性が、ライブコマースには秘められているのです。

ライブコマースは、新しい顧客体験

 ライブコマースは、売るものを自由に決めることができると同時に、売り方も自由です。
 例えば、弊社のお客様で、五島列島の椿を使って商品をつくっている会社があります。この会社では、五島列島の工場からライブ配信をして、どういうふうにつくっているのか、つまりバックヤードをすべて見せながら、一種のクラウドファンディングのような形で販売しています。なので、ものすごく熱心なファンが付いていて、安定的かつ継続的に商品を購入してくれています。
 テレビショッピングでは、その商品の背景をスタジオで紹介することはあっても、なかなか製造現場まで行って収録することはできません。ですが、スマホ1台あれば配信できるライブコマースなら、リアルタイムで工場長にインタビューするなんてことも可能です。表現の自由度が格段に違うのです。
 そうなると、ライブコマースは、もはやエンターテインメントです。買うだけでなく、商品をより深く知ったり、造り手に共感したり、売り手とコミュニケーションを取ったり、購入者同士で仲間意識を芽生えさせたり……。それは「新しい顧客体験」です。お客様はその体験自体にお金を払うのです。
 今、商品やサービスだけでは、なかなかお金を落としてくれません。ワクワクすること、ためになること、感動することがないと、消費者は財布の紐をゆるめてくれないのです。
 そうしたお客様の財布をゆるめる最も有効な方法、それがライブコマースです。

ベンチャーが大企業に勝つための武器

 もしあなたがベンチャー企業の社長なら、今すぐライブコマースを始めるべきです。なぜならライブコマースは、ベンチャー企業が大企業に勝つための強力な武器の1つだからです。特に「D2C」企業に最も有効です。
 基本的に大企業が商品をつくる場合、ある程度マーケットを絞り、どれくらい売ればいいか、価格はどれくらいか、使える成分はどこまで可能か……と逆算していきます。
 一方、D2Cの場合は、「思い」からつくっていく場合が多いのです。その思いと商品を、ダイレクトに消費者(Consumer)に届けるから「D2C」というのですが、そうした思いを直接届けるのにライブコマースが最適です。なぜなら、ライブコマースは「個」に届くメディアだから。まさに鬼に金棒です。
 実はライブコマースは、近年浸透している「プロセスエコノミー」といえます。
 ライブコマースを通じて造り手と売り手、買い手が共有していくからです。編集のきかない生配信だからこそ、良いところも悪いところもすべてさらけ出されてしまいますが、それでも本当に気に入ってくれれば、そこから先、長きにわたって愛用してくれるでしょう。いわゆるLTV(Life Time Value)の構築というやつですね。
 こうした信頼関係は、商品パッケージやCM・広告などしかコミュニケーション手段を持たない大企業にとって、喉から手が出るほど欲しいもの。
 それを手に入れることができるのが、ライブコマースなのです。

大企業もライブコマースをやるべき

 僕は、テレビCMにかけるお金があるのなら、その何分の一でもいいからライブコマースにあてたほうがいいと考えています。もちろん、大手企業には大手企業なりのやり方があります。
 すでに取り組んでいる大企業もあります。
 例えば、弊社のコンサルティング先である大手消費財メーカーは、全美容ブランドの店員さんにライバー研修をしています。なぜなら、デパートの売り場に来るお客さんには、だいたいひいきのブランドや美容部員さんがいて、それを横から奪うのは至難の業だからです。
 でも、ライブ配信なら、リアルな売り場より接点が増えますし、気に入ってくれたらその場で購入したり、売り場に直接来たりしてくれるかもしれません。つまり、ライブコマースをすることにより、チャンスが広がるのです。
 これは、商品機能やブランドイメージしかアピールできないECサイトやテレビCMにはできません。販売員という個の人間のリアルな接客を通して訴えかけられるライブコマースだからこそ、なのです。
 世の中は今、どんどん細分化されてきています。
 例えば、マス向けのテレビCMは個人の閲覧履歴に紐付けされたウェブ広告にとって代わられていますし、ECも楽天やアマゾンという大きなモールから、個別のメーカーの自社サイトや個人サイトに注目が移りつつあります。
 そうなると、ますますお客様は「個人」に付くようになります。かつての「109のカリスマ店員」全盛の時代が、ライブコマースで復活する可能性があります。

ライブコマースがテレビ番組の代わりになる

 大企業ならではのライブコマースの方法としてもう1つ挙げられるのが、「テレビ番組化」です。ただ、これは資本力がないとできません。
 例えば、大手化粧品会社の場合、ブランドや商品はたくさんあるので、その数だけ伝えるべき思いがあります。その方法も、高級品なら高級品なりのやり方がありますし、若者向けなら若者向けのやり方があるはずです。
 高級品なら、パリコレのモデルさんが来て、ライブで視聴者の質問に答えてくれるなんておもしろそうです。
 若者向けなら人気のアイドルを呼んでもいいかもしれません。なんなら、ライブで恋愛ドラマをやってもいいでしょう。ちなみに、テレビ黎明期のドラマはすべて生放送でした。
 つまり、スポンサーサイトの上にたくさんの生放送番組が並んでいるという状態。ほとんどテレビの番組表です。スポンサー自体がテレビ局となって、自社のブランドや商品のイメージに沿った番組を、自由に発信することができるのです。
 若者のテレビ離れは深刻です。だから若者向けの商材を扱っている企業は、ネット広告やSNSマーケティングに力を入れているわけですが、その中でもおもしろいコンテンツに人は集まってきます。その点、エンターテインメント性あふれるライブコマースの〝ひきつけ力〟は抜群です。
 だから──繰り返しになりますが──テレビCMにお金を使うなら、ライブコマースをやったほうが何倍も効果的なのです。

消費者にどんなメリットがあるのか?

 消費者にとってのメリットも大事な話です。主だったものをいくつか挙げてみます。
 
①消費者のタイミングで接客が受けられる
 まず、デパ地下に行ったような感覚で、たくさんのコマーサーから接客を受けられます。しかも1対1ではないので、自分の好きなタイミングでその場を離れることができます(アパレルのお店だと、店員さんから話しかけられるのは嫌っていう人は多いですからね……)。
 
②個別の質問ができ、商品理解が深まる
 それでいて疑問点などはコメント欄から自由に質問できる。一方的な情報しか載っていないECサイトより商品理解が深まります。
 
③新しい商材が見つかる
 新しい商材が見つかるというメリットもあります。いつも決まったブランドのコスメしか使っていなかったけれど、自分がフォローしているインフルエンサーがライブで紹介していたら買ってみようと思うかもしれません。それは自分にとっての可能性を広げることです。
 
④家にいたままできる
 そうしたことが、すべて家で体験できるのです。外に出れば交通費も外食費もかかります。本来、外に行かないと得られなかった顧客体験が、パジャマ姿で体験できるのです。
 これからは「メタバース」も普及して、より臨場感あふれる買い物体験を家にいながらできるようになるでしょう。その主流は、ライブコマースだと断言します。
 そうした未来の買い物体験を、いち早く体験できるのがライブコマースなのです。

欲しい情報が、欲しいタイミングで手に入る

「リアルな接客は、必要のないような接客まで押し売りされて嫌だ」という声がある一方、「ECサイトだけだと文字と画像だけで、なかなか欲しい情報が手に入らない」という不満も聞こえてきます。
 ライブコマースは、リアル接客とECサイトのいいとこどりをしたツールといえます。
 さらにライブであることが、優位性を高めています。もし同じ商品説明を、YouTube のような動画で観るとなると、自分が知りたい情報が出てくるまでずっと待ったり、早送りしたりして探さなければなりません。
 ですがライブコマースなら、いつでもコメントすれば、コマーサーが答えてくれるので、自分の欲しい情報がすぐ手に入ります。
 さらに、ゲストのタレントが好きだったら、某ハンバーガーチェーンのように「スマイルください!」とお願いすれば、その通りにしてくれます。つまり〝エンタメ〟も手に入るわけです。
 僕がプロデュースしているライブコマースには、商品を買うと、タレントさんと10分間個別にオンラインミーティングができるなど、CDの握手会のようなサービスを行なっているものもあります。
 メーカーとしては、自社の商品やサービスに腰を据えて向き合って欲しいのが本音でしょうが、欲しい情報が欲しいタイミングで手に入るライブコマースで顧客接点を維持しておくことは、重要な戦略といえます。

ライブコマースは、〝コミュニティ〟でもある

 2000年代に一斉を風靡したブランドに「セシルマクビー(CECIL McBEE)」があります。渋谷109に旗艦店があり、当時の若者たちはこぞって同じ服に袖を通していました。すでに実店舗はありませんが、そうした〝みんなで同じアパレルショップの服を着る〟文化は、インフルエンサーのブランドに受け継がれています。
「(価値観の合う)みんなと同じ服を着る」
「憧れの人と同じ商品を使う」
 そういう「共感性」への欲求は決してなくなりません。
 それが一種のコミュニティの〝通行証〟になるからです。同じ商品を使っているから話に入れるし、仲間意識が芽生えるのです。
 そうした共感性を育むのに、ライブコマースはうってつけのツールです。
 コマーサーとの対話だけでなく、視聴者同士でも「使ってみてどう?」とか「それと色違いのを持ってるよ!」といったコメントのやりとりができるからです。
 今、若者の間で関係性が希薄になっていることが問題視されています。コロナ禍で長い期間、学校や職場がリモートになってしまったことも原因の1つです。
 個の時代だとはいっても、人間は独りで生きられません。孤独に悩んで心を病んでしまう若者も多いと聞きます。
 そうした人たちをライブコマースが救っている側面も少なからずあります。そこにアクセスしているというだけで、関係構築しやすくなるからです。ライブコマースは、コミュニティを形成するためのツールでもあるのです。

ライブコマースのデメリットは?

 僕は基本的にはメリットしかないと思っているのですが、メリットが逆にデメリットになる場合はあります。
 例えば、いい意味で気楽にできるのがライブコマースのメリットなのですが、変に気負って固くなってしまったり、台本をびっちりとつくり込みすぎて、収録動画みたいになったりしたら、それはデメリットです。
 あるいは、ネガティブな部分もさらけ出されてしまうところもデメリットです。例えば、上司から「ライブコマースやって」と言われてとりあえずやっている人や、好きでもないのに「この商品いいですよ~」と口だけで言っている人は視聴者に必ずバレますし、反感すら覚えられます。
 実際、とある食品のライブコマースをしていたタレントさんが、それを食べて「おいしい!」と言った直後にお茶で口をすすいでいた映像が映し出されたときは炎上しました。そこは編集がきかないライブの怖さです。
 あと、外でも同じ価格で買える物は、ライブコマースをしても売れないということがあります。品質と価格が同じなら、普通のECのほうがすぐ買えるし、店舗のほうが実際に商品を手に取ることもできます。
 つまり、ライブコマースは諸刃の刃。
 商品の機能や特性、売り手の熱意や思いが伝わりやすい一方、それらがない場合は、ネガティブなイメージが伝わってしまうのです。
 そういう意味では、売り手の覚悟が求められるのが、ライブコマースの最大のデメリットなのかもしれません。

ライブコマースが急拡大している国

 ところで、今、ライブコマースが最も盛んな国はどこだと思いますか?
 それは「中国」です。
 市場規模はEC市場より劣りますが、2020年時点で成約率は100%超。現時点での市場規模は10兆円以上と、EC市場全体の16分の1以上を占めます。将来的な市場期待値は34兆円と言われています。
 一方、日本は中国から2~3年以上遅れています。そもそもEC市場自体が未熟で、市場規模は10兆円と、小売市場全体(140兆円)の10%以下です。ライブコマースも推して知るべしで、市場規模は1億円未満。EC市場の1万分の1、小売市場の14万分の1です。

『売れる「ライブコマース」入門』41ページより

 もちろん中国は日本の10倍の人口があるので、その分10倍物が売れて当然なのですが、その中でも特にライブコマースが盛んなのはなぜでしょうか。
 それには次の6つの理由があります。
 
 ①疫病の影響
 ②偽物の流通
 ③KOLの影響力の高さ
 ④国土の広さ
 ⑤リープフロッグ型発展
 ⑥5Gの普及

『売れる「ライブコマース」入門』42ページより

 詳しくは次の項目で解説しますが、ひと言で言うと、中国独特の〝お国事情〟が理由です。

中国でライブコマースが盛んな6つの理由

①疫病の影響
 日本ではあまり影響がなかったのですが、中国では2000年代初頭にSARSという感染症が猛威をふるいました。そのとき、リアル店舗の売り上げが見込めず、デジタルシフトすることで市場が発展しました。
 
②偽物の流通
 例えば、中国のECサイトでアップルのAir Pods を買うと、スピーカーぐらい大きなイヤホンが届いたりします(笑)。日本では企業から買ったほうが安心ですが、中国では、人から買ったほうが安心という文化が根付いています。
 
③KOLの影響力の高さ
 SNSの普及でKOL(Key Opinion Leader /キーオピニオンリーダー)の影響力が高まり、第3者から物を買う文化やマーケティングがますます発展しています。
 
④国土の広さ
 これは言うまでもありませんね。沖縄の店の商品を北海道の人が簡単に買いに行けないのと同じです。
 
⑤リープフロッグ型発展
 リープフロッグとは、既存のインフラが整備されていない新興国で、新しいサービスが先進国の技術進展を飛び越えて一気に広まることです。中国の田舎のほうでは、ブラウン管テレビなのに、スマホで買い物をしていたりします。
 
⑥5Gの普及
 これも詳細は説明不要ですね。通信速度が上がれば双方向コミュニケーションがしやすくなります。

日本も中国の後に続くことができるのか?

 企業を信用しないといった固有の文化や、感染症などの突発的な環境要因が重なり合ったことで、ライブコマースが著しく発展した中国。
 しかし、環境だけなら、新型コロナウィルスの流行や5Gが普及し始めた日本も似たようなものでしょう。中国と同じようにライブコマースは拡大するでしょうか?
 私の答えは、YESです。
 もちろん、中国と丸っきり同じようにはいかないと思います。企業への信頼度の高さはケタ違いですし、実際ECサイトで物を買ってニセモノが届くことはほぼありません。むしろオークションサイトやフリマアプリを通じて個人から買うほうがハイリスクです。
 ですので、日本の場合は、ある程度企業がリードする形で普及していく形になると思われます(実際、楽天やメルカリがライブコマースに乗り出したことがありましたが、時期尚早で頓挫した経緯があります。詳しくは2章で)。
 いずれにせよ、一度ライブコマースを経験すれば、売り手も買い手も、その魅力に必ずハマるはずです。それどころか、これからの小売業界においては、ライブコマースしか〝勝たん〟とすら思っています。
 では、どうすればライブコマースを使ってビジネスに勝てるのか?
 そのノウハウを、次章以降でじっくり解説していきます。

目次

はじめに──Z世代の僕がライブコマースの会社を立ち上げた理由

第1章 ライブコマースとは何か?

◎「テレビショッピング」と「ライブコマース」の違い
◎視聴動機を生み出す2つの要素
◎なぜライブである必要性があるのか?
◎予算の問題がなければ、どちらを選ぶべき?
◎ライブコマースなら、扱う商品も数も自由
◎ライブコマースは、新しい顧客体験
◎ベンチャーが大企業に勝つための武器
◎大企業もライブコマースをやるべき
◎ライブコマースがテレビ番組の代わりになる
◎消費者にどんなメリットがあるのか?
◎欲しい情報が、欲しいタイミングで手に入る
◎ライブコマースは、〝コミュニティ〞でもある
◎ライブコマースのデメリットは?
◎ライブコマースが急拡大している国
◎中国でライブコマースが盛んな6つの理由
◎日本も中国の後に続くことができるのか?

第2章 日本でのライブコマースの可能性

◎日本のライブコマースの現状
◎僕がライブコマースに参入した理由
◎日本の人気ライバーが「ライブコマース」で売れない理由
◎ライブコマースで売る人は、「ライバー」でなく「コマーサー」
◎日本流のライブコマースのあり方とは?
◎日本の「店舗連動型ライブコマース」の可能性
◎企業がライブコマースをやるべき本当の理由
◎自社商品を世界に向けて販売するチャンス
◎日本にはまだ「真のコマーサー」がいない
◎ライブコマースは、テレビ局になっていく?
◎ライブから、どう購買に結びつけるのか?
◎誰がライブコマースの勝者になるのか?
◎オールマイティなタレントより専門分野の社員
◎信頼ある雑誌メディアや老舗企業の説得力は、大きな武器になる
◎ブランド同士のコラボが魅力のECモール

第3章 ライブコマースがZ世代を巻き込む

◎キーワードは「共創」と「KOL」
◎コロナ禍でさらに膨らむ「共創」の価値
◎「KOL」とインフルエンサーは違う
◎SNSのフォロワー数が絶対的価値
◎Z世代の検索は、「ググる」ではなく「タグる」
◎一方的に押し付ける情報は、SNSで嫌われる
◎YouTuberの次を担うコマーサー
◎「ライブ」というエンターテインメントがZ世代を呼び込む
◎Z世代に向けてライブコマースするときの注意点
◎どんなコマーサーが勝ち残れるのか?

第4章 ライブコマースのはじめ方

◎ライブコマースは、「エンタメ」×「コマース」の掛け合わせ
◎ライブコマースの台本の基本となる「5W1H」
◎ライブコマースの「5W1H」とは?
◎「5W1H」がないと、どうなるか?
◎プラットフォームの選び方――企業篇
◎プラットフォームの選び方――個人・SNS活用篇
◎プラットフォームの選び方――個人・専用プラットフォーム活用篇
◎ライブコマースの失敗パターン①――「人」が欠落している
◎ライブコマースの失敗パターン②――「物」が欠落している
◎ライブコマースを成功させるための絶対要素

第5章 ライブコマースの効果を高める方法――実践テクニック篇

◎「動画」と「ライブ」の違いを意識する
◎成功の鍵を握る3人の登場人物
◎3人の登場人物の具体的な役割
◎ゲストの力を借りる――視聴導線を厚くする①
◎SNS広告を活用する――視聴導線を厚くする②
◎感情に訴える、未来を売る
◎「クラファン」的なライブコマース
◎台本に一番必要なのは「余白」
◎出演者の「ストーリー」づくりも重要
◎個人なら「ノー台本」もアリ
◎必要な機材は?実はスマホ1台でOK
◎よりコメントを多く集めるためのテクニック
◎終わった後は、必ず「コメント分析」
◎ライブコマースの中身を改善させる「離脱率」

第6章 ライブコマースで「人」が主役の時代へ

◎なぜライブコマースで人を巻き込むのか?
◎ライブコマースは、「ナラティブ」を生み出す装置
◎ライブコマースを軸に、マーケティング戦略を練る
◎ライブコマースで化学反応を起こす
◎改めて、「ライバー」と「コマーサー」の違いは何か?
◎次のジャパネットは、誰が担っていくのか
◎専門性と覚悟が求められるタレントコマーサー
◎「キャンプ芸人」はコマーサーになれるか?
◎再びカリスマ店員の時代がやってくる
◎コマースの歴史は、インフルエンサーの歴史と重なる
◎メタバース時代のライブコマースはどうなる?
◎ライブコマースが流通革命を起こす

おわりに――「時間と価値の選択肢」を届けたい


【著者プロフィール】
松村夏海(まつむら・なつみ)

Z世代にして、日本におけるライブコマース第一人者

(株)Tailor App代表取締役社長。1997年静岡県生まれのZ世代。法政大学(在学中にフォントボン大学に留学)卒。祖父、父と違う事業ではあるものの経営者だったため、自然と経営の道を志していたこともあり、大学の単位を2年生でほぼすべて取り終わり、インターンや業務委託を経験し、インターン先のベンチャーPR会社の紹介でライブコマースシステム会社に入社。ライブコマースのノウハウをひと通り学び、同社が2019年にIT一部上場企業にバイアウトされるタイミングで、2020年に(株)Tailor App設立。年間150本以上のライブコマースを企画から行ない、100万円〜1,000万円以上といった売り上げ事例を多く創出。この売れないと言われてきた“日本のライブコマース”で業界一の実績と事例数から、スタートアップから大手まで業界問わず、過去事例を元にプランニングを行ない、高い評価を受けている。本書は、今まで培った経験・知識を基に「ライブコマース」のノウハウを完全公開した、初の著書となる。

今や、先行者利益の世界になっている
 
「YouTube」
「TikTok」
「仮想通貨」
「オンラインサロン」
 
などなど、
「あのとき、やっておけばよかった……」と後悔している人はいませんか?
 
「もうそんな後悔はしなくない!」と思っているなら、黎明期の今だから、先行者利益のチャンスです。中小零細企業や個人事業主こそ、今のうちにやっておいたほうがいい新しい販売手法――。それが「ライブコマース」です。
 
今回ご紹介した新刊『売れる「ライブコマース」入門』は、ライブコマース界の第一線で活躍している著者・松村さんが培ってきた「ライブコマース」の経験・知識・知恵がギュッと詰まった1冊になっています。興味のある方はチェックしてみてください。

2022年6月13日、全国発売!



 






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?