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クラシック音楽を聴くと、文章がうまくなる意外な理由

フォレスト出版編集部の山田です。

相手に伝わるわかりやすい文章を書くには「論理」が大事であることはよく知られているところかと思います。多くの書籍で、論理的な文章を書くための方法が紹介されています。

とはいっても、なかなかうまく論理を組み立てられなくて悩んでいる方も多いのではないかと思います。論理を磨く方法はさまざまありますが、もしいろいろ試してみたけど、伸び悩んでいるという場合は、一旦文章から離れて、全く違うアプローチをとってみるといいかもしれません。

本記事では、『できる人の書き方 嫌われる人の悪文』(樋口裕一、ビジネス社)から文章の論理を磨く一風変わった方法をご紹介させていただきます。

本著者は、文章教育の専門家で、小論文の専門塾「白藍塾」を主宰し、小学生から社会人まで文章指導において実績のある方になります。

著者によると、論理を磨く方法として、「クラシック音楽を聴く」ことをおすすめしています。クラッシク音楽が文章とどう関係あるのかと思われる方もいるかもしれませんが、著者いわく、優れたクラシック音楽は論理によって支えられているからだそうです。たとえば、ベートーヴェンの「運命」の論理について以下のように説明しています。

 「運命」の最も有名なフレーズに「ジャジャジャジャーン」というのがある。全部で286回出てくる「ジャジャジャジャーン」は、印象的な反復として耳に残る。
 このフレーズこそ、完成度の高い部品であり、それを積み重ねてつくった構築物が「運命」という曲なのである。まるで一分のスキもない完成度で、ベートーヴェンはこの構築物をつくりあげた。単なる思いつきで適当に並べたわけではない。作曲家のインスピレーションはさまざまな局面で生じるが、論理構築におけるそれはとりわけ重要だ。完成度の高い部品を、完璧な全体像へと導くか否かは、論理構築のインスピレーションにかかっている。
 「ジャジャジャジャーン」は文章で言うところの「最も言いたい意見」や「意見を端的に表すキーワード」に相当する。どのタイミングで使うかも計算ずくであり、ここぞという瞬間を狙って組み込まれている。

音楽といえば感覚的なものというイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。しかし、クラシックというのは、曲の最も盛り上がる部分をいつ、どのような展開で伝えるかというのを論理的に考えて作られているのだそうです。そこが文章の論理と共通していると著者は主張されています。

また、音楽的センスで作られているように思われるクラシックにも、文章と同じように「型」があるそうです。「音楽形式」と呼ばれるもので、楽曲の構成の種類のことをいいます。このことに関して、著者は以下のように述べています。

 ロンド形式というのはABABCABABと、同じパターンを繰り返すことによって構成されている。ハイドン、モーツァルトなど名作曲家たちは、そのパターンに自分流の音を流し込んで、たくさんの名曲をつくったのだ。
 逆を言えば、型がなければ、何百、何千もの名曲は誕生しなかったのである。
 文章も同じことである。ロンド形式のABABCABABと同じように、4部構成を基本に組み立てていけばよい。

以上のように、クラシック音楽と文章には共通点が多いようです。そのため、曲の構成を意識しながら注意深く聴く習慣があると、必ず文章の論理を考える際にもいい影響があるはずだと、著者は言っています。

もちろん、この手法は万人向けとは言えないかと思います。特に、音楽に全然興味がないという方だったら、苦痛でしかないかもしれません。

しかし、もし少しでも音楽に興味がある場合は、普段クラシック音楽を聴かないという方でも一度試してみる価値はあるではないでしょうか。

というのも、たとえば、筋トレでは同じ部位だけでなく、違う部位を刺激することで効果的に筋力アップできることが知られているかと思います。同じ刺激を与え続けると、刺激に慣れてしまって、筋肉がそれ以上大きくならないからです。なので、筋トレではさまざまな刺激を与えて筋肉を強化します。

文章のトレーニングもそれと同じなのではないかと思います。
うまい文章を書くために、書き続けることが先決ではあるかとは思いますが、時にはクラシック音楽を聴いて違う刺激を与えることで、文章力も強化できるのではないでしょうか。もしご興味がありましたら、ぜひ試してみて下さい。


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