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デザイナーに依頼するときにおさえておきたいポイント

こんにちは。フォレスト出版の美馬です。

編集者になって早1年半。ありがたいことに続々と担当させていただける書籍が増えていき、書籍制作にかかわる多くの関係者さんとお話をする機会も増えました。

そのうちの、書籍をつくる上で必ずやり取りをさせていただくデザイナーさんについて、次の書籍から学んだことをご紹介したいと思います。

『すべての仕事はデザインから始まる。失敗しないデザイン発注』(カイシトモヤ/クロスメディア・パブリッシング)

デザイナーだけが、デザインをしているのではない
発注者の立場から、優れたデザインを生み出すための実践書


本書では、デザイン発注を切り口に「デザインプロセスのコミュニケーション」「創造性への理解と、センスの育て方」を学べる実践書として、デザイナーでない人がデザインの工程に参加するための具体的な方法をまとめています。
著者はデザイナーとして活動しながら、アートディレクター、東京造形大学の教授の側面を持ち、制作者でもありながらもデザインを発注する立場への造詣も深い方です。
今や、あらゆる業界や業種の人が、デザイン発注の主体になり得る時代。
発注者やデザイナーはもちろん、漠然とクリエイティブなことに関わり、創造的な視野を持ちたい、そんな方にも読んでいただきたい1冊です。
デザイン発注とは、単に「依頼を投げる」ことではありません。
デザイナーとともに「つくる」ことです。

amazon書籍情報より引用
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4295408549/forestpublish-22/

書籍制作に限らず、いろいろなコンテンツ制作において、デザイナーさんにお仕事の依頼をする機会は多くあると思います。そんな時、なかなか自分のイメージしているものが言語化できず、正確にイメージを伝えることができないことはありませんか?

私も自分の言語化力のなさに毎度嫌気がさしますが、デザイナーさんがうまく汲み取ってくださるので、本当に感謝しかありません。しかし、デザイナーさんに頼りっきりではいけませんね。自分も相手に”伝わる”依頼ができるようになりたい、と本書を手に取りました。一部引用抜粋して、お伝えしていきます。

発注の本質とは?

そもそも「発注」の本質とはなんでしょうか? 本書では以下のように定義されています。

辞書の意味では「注文を出すこと」ですが、もっと本質的な部分を考えると「自分にできない(自分が得意ではない)」、または「自分がやるよりも効率的(自分は他のことに時間を使った方が良い)」という仕事を、他者に依頼する行為です。

『すべての仕事はデザインから始まる。失敗しないデザイン発注』
(カイシトモヤ/クロスメディア・パブリッシング)
より

この本質を踏まえ、本書では健全な発注は、健全なコミュニケーションから生まれると言われています。

適切なコミュニケーションをするための土台となる情報

では、デザイナーさんとのコミュニケーションで、最初に押さえておくべき情報(ポイント)はなんでしょうか? 本書では以下の3つとなっています。

①コンテクスト
②発注者の属性
③受注者(デザイナー)の属性

具体的にどういうことなのか、以下書籍から引用してご紹介します。

①コンテクスト
 コンテクスト(context)とは、「文脈」や「背景」といったことを表す言葉ですが、それ以外に「前提となる環境」や「元になっている構造」「前後関係」などの意味も含んでいます。発注する際には、まずコンテクストから伝えていくことが大切です。
 その発注はどのような社会背景や文化、市場において行われるのか。どんな時流の変化のもとに要求が発生しているのか。このように、発注の背景になっていることがらすべてについて、できるだけ多く共有していくようにします。

『すべての仕事はデザインから始まる。失敗しないデザイン発注』
(カイシトモヤ/クロスメディア・パブリッシング)
より

その商品、コンテンツをとりまくすべてが重要な情報であり、デザイナーさんと健全なコミュニケーションをとるために必要不可欠な情報でもあるということですね。

②発注者の属性
 ここでの属性とは、発注者が所属する企業や団体の属性と、発注者個人の属性の2つが考えられます。
 まず発注側の企業や団体が、社会や市場においてどのような立場なのかを考慮する必要があります。
 誰もが知る大企業なのか、駆け出しのベンチャーなのか、一般への認知は低いが業界内では名を馳せている老舗企業なのか。どのような製品・サービスを得意としているかはもちろん、どんな経営理念のもとに企業活動をしているのか、ということも大切なヒントです。

 また、発注者個人の属性も無視できません。
 組織のどの部署、どんな立ち位置でどのくらいの意思決定権を持つか。時には個人の嗜好(シンプルなデザインが好きなど)も必要な情報かもしれません。
 個人の嗜好で意思決定をするのは合理的ではありませんが、好みが一切関与しない判断もまた難しいものです。

『すべての仕事はデザインから始まる。失敗しないデザイン発注』
(カイシトモヤ/クロスメディア・パブリッシング)
より

人に何者か尋ねるなら、まず先に自分が何者か名乗れ、というものに近いかもしれませんね。たしかに、デザインをしていただくにあたって、発注者側が何者で、どんな傾向の既存アイテムを有しているのか、という情報はすごく重要になりますよね。初めてお会いするときに、「自己紹介はほどほどに、早速依頼の件ですが……」なんてやっているとこれが全然伝わらなくなっていしまいます。

③受注者(デザイナー)の属性
 なぜこの人へ発注したのか。おそらく、目の前の課題や目標を達成できると見込まれたからでしょう。
 誰かから推薦・指名された人なのか、自分でインターネットや書籍などで探し当てた人なのか。もし自分で見つけてきた人であれば、発注の決め手・その理由について相手と共有しましょう。
 デザイナーの過去の作例が気に入ったのであれば、それを伝えるのも良いかもしれません。デザイナーのスキルや得意な表現、受注可能なキャパシティやデザインへの考え方などがわかると理解が捗ります。
 デザイナーの属性を踏まえることで、相手のパフォーマンスを最も引き出すための依頼内容やコミュニケーション方法が導かれるはずです。

『すべての仕事はデザインから始まる。失敗しないデザイン発注』
(カイシトモヤ/クロスメディア・パブリッシング)
より

自分がデザイナーだった場合、依頼してくれた人が自分のどんな部分を魅力に感じて依頼してくれたのか、たしかに気になりますよね! 熱い気持ちを語ってくれたらなおパフォーマンスも引き出されるでしょうし、いい関係性が築けそうです。

ゴールを共有する

さて、以上の3つの情報を踏まえてデザイナーさんとコミュニケーションを必要があるということはわかりましたが、最後にもう一つ、明確にしなければならないことがあると言います。

それは、ゴールを共有するということです。

当たり前と言えば当たり前ですが、これをせずに、具体的な指示だけしてしまう人も多いように感じます。本書ではこの重要性が以下のように解説されていました。

 大きなゴールの設定は、まずは商品写真を目立たせたいなど、デザインにおける個別の小さな達成目標へと分解されます。
 さらに、それらの達成目標は、例えば「目立たせるために大きくする」「コントラストを強く補正する」など、個別の表現技法を導きます。
 また、ゴールを共有していれば、発注者から具体的な表現の指示がなくても、うまくクリエイターにバトンを引き渡すこともできます。あとは、それぞれの専門性に委ねた方がうまくいくことも多いからです。
 逆に、ゴールを共有せずに具体的な指示だけを飛ばしてしまうと、場合によってはデザインをつくる上でさまざまな弊害が生じてしまうのです。

『すべての仕事はデザインから始まる。失敗しないデザイン発注』
(カイシトモヤ/クロスメディア・パブリッシング)
より

さて、ここまでご紹介したのは、発注のキホンのキの部分です。ただ、この基本をおろそかにしてしまうと、健全な発注はできないということです。ついつい、忙しくてルーズにしてしまいがちな部分もあるかもしれませんが、今一度発注の仕方を見直したほうがいいかもしれませんね。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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