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【フォレスト出版チャンネル#117】フリートーク|編集者おすすめの3冊 【1】

このnoteは2021年4月27日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

西船橋の駅前書店で出会った昭和の傑作

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。本日は「編集者おすすめの3冊」というテーマで、編集部の寺崎さんとお話していきます。寺崎さん、よろしくお願いします。

寺崎:よろしくお願いします。

今井:今日は「編集者おすすめの3冊」というテーマなんですけれども、寺崎さんはやはり編集者という仕事柄、結構本を読んでらっしゃる方ですか?

寺崎:うーん。それが仕事に関する読まなきゃいけない本っていうのは当然読むんですけど、結構その量が多くて、なかなかプライベートの本っていうのはあんまり読めてないかもしれないですね。ただ、大学生の時に図書館が立派だったので、そこに入り浸って片っ端から興味を持ったジャンルの本を読んでいたんですけど、それが結構今活きている感じがします。

今井:そうなんですね。ありとあらゆるジャンルを色々と読んだ感じなんですか?

寺崎:そうですね。本当にありとあらゆるジャンルを片っ端から読んでいったって感じです。

今井:では、さっそく「編集者おすすめの3冊」ということで、まずは1冊目をお願いします。

寺崎:はい。まずは著者・矢沢永吉、激論集『成りあがり』です。

今井:『成りあがり』。

寺崎:はい。これは皆さんもうご存知の矢沢永吉さん、永ちゃんなんですけど、1978年に小学館から単行本で出版されていました。キャロルっていうバンドを永ちゃんがやっていたんですけど、72年に活動を始めたので、矢沢永吉が世に出て5年後に放った本というモノですね。僕が買ったのは文庫本なんですけど、昭和55年に初版で平成元年の時点18刷。だから、1989年ちょうどバブル崩壊の時ですね。僕はまだ10代で、その時にこの『成りあがり』に出会ってしまったんですよ。

今井:それは図書館で出会った感じなんですか?それとも普通に趣味の中で出会ったって感じなんですか?

寺崎:これは多分、千葉の西船橋の駅前に書店があって、そこでよく文庫本を買っていたんですよ。

今井:西船で(笑)。

寺崎:そこで多分買ったんじゃないかな。当時は知らなかったんですけど、取材ライティングをしているのが、当時無名だった糸井重里さん。

今井:おー!あの糸井さんが!

寺崎:そうなんですよ。当時読んだ時にも「この本、すっごい」と思って、ものすごく影響受けたんですけど、この糸井さんのライティングがもう冴え渡ってる。世界観を構築していると言うか。それを後に知りました。

今井:なるほど。糸井さんがコピーライティングも中の方のライティングも?

寺崎:そう。全部書いてるんですよ。

今井:そうなんですね。

寺崎:矢沢永吉さんをどのくらい取材したのかわからないけど、取材してコンサートとかにも同行して、矢沢栄吉になりきって書いた文体。

今井:へーーーー!

寺崎:だから、永ちゃんが自分のことを「矢沢は」とかって言うじゃない?

今井:はい。

寺崎:ああいったキャラクターは、この本が作り出したんじゃないかという説もあるくらい。

今井:すごいですね。

寺崎:ご本人がなぞってしまうくらいのキャラクター、それでキャラクターがすごく伝わってくる文章。

今井:糸井さんすごいですね。

寺崎:そうなんですよ。でね、この見出しがやばいんですよ。

今井:どんな見出しなんですか?

寺崎:今だったら普通なんですけど、ビジネス書とかってだいたい見出しを入れるんですけど、1ページ見開きにつき1個見出しが入ってて、3行の見出しなんですよ。それが例えば、一番初めの見出しは「成り上がり大好きだね この言葉 快感で鳥肌が立つよ」とか「関東 矢沢家一代 広島じゃない 横浜がオレの故郷だ」。要は広島を捨てて横浜に出て行くんですけど、そういったことを表現している見出しなんですけど、いちいち刺さるんですよね。

今井:確かにシンプルだけど、ぐっときますね。

矢沢永吉が10回も繰り返し読んだすごい本

寺崎:うん。あとお金の話とかも徹底していて、若い頃からスターを目指しているから、「しっかり貯金しろ」とメンバーにも言ったりしている。矢沢永吉さんが高校1生の時に友達のお兄さんがキャバレーに勤めていたんですって。で、岡山で3件経営するキャバレーの社長の方がいて、その方に気に入られて、ある本を手渡されたらしいんですよ。

今井:え、何の本ですか?

寺崎:それはデール・カーネギーの『人を動かす』っていう本。

今井:有名な本ですよね。緑色の結構分厚い本で。

寺崎:超ロングセラーですよ。あれなんですよ。

今井:そうなんですね。でも、あの永ちゃんが、デール・カーネギーの『人を動かす』っていう本を読んだって、なんだかすごく意外な感じがするんですけど。

寺崎:そうですよね。僕も『人を動かす』自体を知ったのは、『成りあがり』だったと思うんですよ。

今井:『成りあがり』経由で(笑)。

寺崎:ただ永ちゃんは、読んだだけじゃなくて、「なるほど、なるほど。一理あるな」ってデール・カーネギーの教えを全部実践したんですって。

今井:実践したんですか!?すごくたくさんあるし、結構難しいなって私は思っちゃったんですけど。

寺崎:そうですよね。10回ぐらいリフレインで読んだって書いてあった。

今井:だいぶ読みましたね。

寺崎:友達の誕生日に送ったり。奥さんに花を買って帰るっていうのも、この本の影響じゃないかって書いてある。

今井:えー。だいぶ永ちゃんは『人を動かす』の影響を受けてらっしゃるんですね。

寺崎:『人を動かす』は当時ハードカバーで確か高い本だったので、図書館で借りて読んだんですけど、最近もう一回読み返したら、これを全部実践してたらそりゃ成功するわっていう内容なんですよ。目次だけ読んでもいいかもしれない。

今井:目次だけ(笑)。

寺崎:全部原則が書かれています。パート1が、「人を動かす三原則」で「盗人にも五分の理を認める」「重要感を持たせる」「人の立場に身を置く」。パート2は「人に好かれる六原則」で、「誠実な関心を寄せる」「笑顔を忘れない」「名前を覚える」。

今井:大事(笑)!

寺崎:「聞き手にまわる」「関心のありかを見抜く」。

今井:「あなたは何が好きかな?」みたいなところですね。

寺崎:そうそう。最後が「心からほめる」。

今井:なるほど!

寺崎:で、パート3が「人を説得する十二原則」で、「議論を避ける」「誤りを指摘しない」「誤りを認める」「穏やかに話す」「〝イエス〟と答えられる問題を選ぶ」とかこんな感じで、パート4が「人を変える九原則」で、最後付録になっているのが、これがさっき永ちゃんが奥さんに花を買って帰るというのが影響しているかもしれない「幸福な家庭をつくる七原則」。

今井:うーん!!こんなことまでカーネギーさん。

寺崎:では、この七原則を言って終わらせたいと思います。「口やかましく言わない」「長所を認める」「あら探しをしない」「ほめる」「ささやかな心尽くしを怠らない」「礼儀を守る」「正しい性の知識を持つ」というわけで、文庫版が500万部突破しています。

今井:すごいですね。

寺崎:これ読んだことある方多いと思うんですけど、これまだ読んでないという方は絶対読んで実践するといいことあるんじゃないかなと思います。

今井:是非、『成りあがり』とセットで『人を動かす』も読んでみるといいかもしれませんね。では、ここまで矢沢永吉の『成りあがり』、そしてデール・カーネギーの『人を動かす』と紹介をしてきましたが、最後3冊目のお勧め本を教えてください。

アイデアを生み出すための超古典

寺崎:はい。これはですね。ジェームス W.ヤングという方が書いた『アイデアのつくり方』という本です。

今井:『アイデアのつくり方』。

寺崎:編集者とか企画やアイデアをいつも考えている人はフッと降りてきたりする時があるんですよ。寝てるか、起きてるか半分半分ぐらいの朝方とかにアッと思いついて、パッと起き上がってメモしたりとか。

今井:「3B」とか言いますもんね。ベッド、お風呂のバス、トイレのバスみたいな。

寺崎:まさにそれ。別の収録の時にもそんな話しました。そのアイデアに関する超古典と言われているのが、この『アイデアのつくり方』っていうので本で。

今井:超古典。

寺崎:うん。かなり前の本で、日本版の初版が1988年で、1975の本ですね。

今井:だいぶ前ですね。

寺崎:だいぶ前ですけど、ずっとロングセラーで、これページ数もめっちゃ少ないんですよ。102ページ。

今井:あとがきまで含めて102ページ。

寺崎:文字も大きいんですけど、めちゃくちゃアイデアの神髄と言うか、そういうものが書かれていて、これは色んな人が言うことですけども、ザックリこの人の主張を言うと、「アイデアというのは既存の要素の組み合わせに過ぎない」と。その関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きいのだと。AというアイデアとBというアイデアの関連性。事実Aと事実Bを組み合わせて、その組み合わせからアイデアを導き出すっていうのはトレーニング次第で誰にも出来ると。

今井:おー!心強いお言葉ですね。

寺崎:その実際のやり方が書かれてるんですけど、大きく分けて5つのステップがあるんですよ。まず、ステップ1が「資料を集める」。

今井:大事ですよね。

寺崎:まず材料がないとしょうがない、と。シャーロック・ホームズに出てくるスクラップブックですね。スクラップブック、切り抜きとか記事とか自分が体験したことを種にしていく。ステップ2が「資料を咀嚼する」。組み合わせとアウトプット、それぞれの材料をあっち向けて見たり、こっち向けてみたり、光を当ててみたり、材料を咀嚼していく。ステップ3が「一旦寝かす」。

今井:お!寝かすことはやっぱり大事なんですね。

寺崎:やっぱり重要らしいですね。シャーロック・ホームズを例に書いてあるんですけど、シャーロック・ホームズって必ず一つの事件の最中に捜査を中止して、助手のワトソンを音楽会に引っ張り出したりするんですよ。

今井:(笑)。

寺崎:創作過程というものをコナン・ドイルはよく知っていたんだなって書いてあって、とにかく、アイデアがこの段階に達したら、問題を放棄して何でもいいから自分の想像力と感情を刺激するもの、そういうものに心を移せと言っているんですよ。音楽を聞いたりとか、映画を見たりとか、小説を読んだりとか。その後にステップ4でようやくアイデアが誕生します。

今井:なるほど。いきなりアイデアじゃなくて、ちゃんと集めて咀嚼して寝かしてっていうステップがあるんですね。

寺崎:そう。で、このジェームス W.ヤングさんが言ってるのは「それは、諸君がその到来を最も期待していない時、ひげを剃っている時とか風呂に入っている時、あるいは朝まだ眼がすっかりさめきっていないうちに諸君を訪れてくる。それはまた真夜中に諸君の眼をさますかも知れない。」と。で、アイデアが出ました。

今井:出ました。

寺崎:最後にもう一個あるんですよ。アイデアのチェック。

今井:なるほど。

寺崎:これ結局、自分では「すっげえアイデア見つけたなー!」って思っても、翌朝見たら全然ショボかったりとかするんですよ。なので、これは他人の目を通せと言っています。だから書籍で言えば企画会議ですね。企画会議に出してちゃんと他の人も「それは面白いアイデアだね」って言うのであれば、それはいいアイデアっていうことですね。

今井:この『アイデアのつくり方』、本当にアイデアの根幹というか、抽象度高くまとまっているので、どんな業種の方も使えそうですよね。

寺崎:そうそう。そうなんですよ!デザイナーとか、企画者とかが対象だと思うんだけど、それこそ営業マンだって応用できるし、1時間ぐらいで読めるので、これはお勧めしてますね。原著は1960年だ!だからちょうど60年前ですね。

今井:すごい。60年も前にこんな素敵な本が。しかもこれ、帯がちょっと素敵だったりするんですよね。

寺崎:そう。「60分で読めるけど一生あなたを離さない本」

今井:まさにって感じですよね。

寺崎:最後に補足なんですけど、矢沢永吉の『成りあがり』と最後にご紹介したジェームス W.ヤングの『アイデアのつくり方』に関しては、noteに記事を書いていますので、そのリンクを貼っておきます。

今井:はい。是非noteの寺崎さんの記事も皆さんにご覧いただけたらと思います。本日は「編集者おすすめの3冊」ということで『成りあがり』、『人を動かす』、『アイデアのつくり方』の3冊をご紹介しました。どうもありがとうございました。

寺崎:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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