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文系男の限界!? パラレルワールドは存在するのかを考える

編集部の稲川です。
今、ちょうど仕事である著者さんたちと打ち合わせをすることが多いのですが、そのなかで「人間の可能性は無限大」というテーマが頻繁に出てきます。そして、「無限の可能性を秘めているのは子どもである」ということから、最後は「そんな子どもたちにとって、カッコいい大人になるためにはどうすればいいだろうか」ということをあれこれ話しています。

たしかに、子どもの頃は、誰だって何にだってなれると信じていたでしょう(それが何歳くらいまでかはそれぞれでしょうが)。
想像する自分になりたくて、早く大人になりたいと思っていたものでしょう(大人になると、それが実現すると疑わず)。

しかし、疲れた大人やあくせくした社会を見て、さらには親や大人たちから「ダメ」「無理」と言われ、可能性をみずから否定してしまう。
未来は楽しいものだったのが、苦しいものに変わってしまう・・・。

先週のnoteで「未来は不確定だからこそ、いつだって悩む」ということを書きました。
でも、不確定だから悩む人と、「人間の可能性は無限大」と思って、不確定だから楽しいという人に分かれるのかもしれません。

そうした考え方の違いによって、もしかしたら“未来の自分”というのは、すでに決まっているのかもしれない。言い換えれば、すでに未来は確定しているものとすれば、そんな未来は存在するのではないかと・・・。

そこで今回は、未来に存在する“もう1人の自分”ということに思いめぐらせてみます(屁理屈ではなく)。

◆物理学の世界では、多次元世界が研究されている

たしかに、私の幼少期を考えると未来はワクワクでしかありませんでした。
まだ、今よりも未知なるものが多かった時代ですから、テレビっ子の私はどんなアニメを観ても、それが現実だと信じ切っていました。

たとえば、『宇宙戦艦ヤマト』を観た日には、その夜に「ワープ!」と叫んで布団に潜り込んでいました。翌日の朝には別の場所で目覚めるじゃないかと思っていたのでしょう。
何とも純粋な子どもですが、いまは別段、単なる妄想とは言えない時代になってきました。

昨年、クリストファー・ノーラン監督の映画『テネット』が公開されました。

テネット (2)

「現在から未来に進む“時間のルール”から脱出する」というミッションを課せられた主人公が、第3次世界大戦に伴う人類滅亡の危機に立ち向かう姿を描いた作品です。
この映画では、時間が逆行する“逆行世界”に主人公が潜入し、第3次世界大戦につながる謎を解明していくのですが、現在と未来が入り乱れてとにかくややこしい。

文系人間には、そもそも時間の逆行という概念がわからないのですが、ノーラン監督の描く世界は、しっかりとした物理学の理論にのっとっているようです。

そもそも、物理学の世界ではこうした時間が捻じ曲げられる現象は、アインシュタインが一般相対性理論を発表して以来研究され続け、理論上存在するとされています。
こう言うとかなりザックリしてしまいますが、アインシュタインが量子論の世界に仮説(光量子仮説)を投げかけたことが、その後の理論の発展に大きな役割を果たしています。
いまでは、多次元の世界を物理学で証明できるかが話題となっているのです。

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『Newton別冊 量子論のすべて 新訂版』では、

1.量子論の誕生
2.量子論の核心にせまる
3.発展する量子論
4.量子論総まとめ
5.もっと知りたい!量子論

と、最新の量子論が解説されています。その「5.もっと知りたい!量子論」の中で、パラレルワールドは存在するのかと題して、多世界解釈について紹介しています。

かの有名な宇宙物理学者、故ステーヴン・ホーキング博士は『ビッグ・クエスチョン』(NHK出版)という本で、「タイムトラベルは可能なのか?」ということについて述べています。

ホーキング博士 (2)

タイムトラベルと密接に関係しているが、空間のひとつの場所から別の場所への高速移動だ。(中略)妥当な時間内に銀河系の端から端まで移動するためには、小さなトンネルすなわちワームホールを作ることができるぐらいに時空を歪めるしかなさそうだ。(中略)そんなワームホールが、未来の文明なら作れる範囲にあるとして真面目に提案されてきた。しかし、もし銀河の端から端まで一、二週間で行けるというなら、別のワームホールを使って、出発した時刻よりも過去に戻ってくることもできるだろう。ワームホールの両端が相対運動をしていれば、ひとつのワームホールを使って過去へ行くこともできるだろう。

ホーキング博士は、空間と時間をまとめた四次元の「時空」というものを考えることができるとしながら、一般相対性理論(物質とエネルギーが時空を歪めると仮定すれば、重力の影響を記述できる)の証拠と量子論、すなわち仮想粒子による真空のゆがみについて解説しています。

と、専門家かからしたらお粗末な解説ですが、文系の私からすればこれが限界です。
一般的な私のように、「量子論って何」?と思われた方は、こちらの本がおすすめです。

『すごい物理学』(カルロ・ロヴェッリ著、河出文庫)

すごい物理学 (2)

この本は講義をまとめたものでとても面白く、物理学の入り口としては最もわかりやすいと思います。
竹内薫氏が監訳していることからも、なおさらわかりやすくされているのではないでしょうか。

「それでも、物理学はちょっと・・・」
という方に、文系的視点からの本も紹介しましょう。

◆文系諸氏がパラレルワールドを存分に味わえる本!?

パラレルワールドとは、空間が捻じ曲げられ、現在と未来が錯綜する世界と考えればいいのではないかと思っています。

そうした世界を描いたのが、大ヒットした新海誠監督の映画『君の名は。』ではないでしょうか。
宮水三葉と立花滝が入れ替わる物語は、彗星という空間を捻じ曲げる存在からパラレルワールドが見事に表現されています(かつては、筒井康隆原作、大林宣彦監督の『時をかける少女』という映画がありましたね。若い方はアニメでしょうか)。

私がおすすめしたい小説は、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(七月隆文著、宝島社文庫)です。

昨日のきみと (2)

大学生の南山高寿は、駅のホームで見かけた女性(福寿愛美)にひと目惚れをしてしまう。思い切って彼女に声をかける高寿。「また会える?」と言った瞬間、愛美は涙を流して抱きついてきた。「ちょっとね……かなしいことが……あってねっ」と。そして、時間がきたからまた明日会おうと。
そうして、高寿と愛美はデートをするようになる。しかし、彼女には高寿には想像もできない大きな秘密があった……。

ネタバレするので、その後の展開は割愛しますが、本日の話とタイトルから、おそらく想像はついているかと思います。
そう、高寿がデートしていたのは、前日(昨日)の彼女だったのです。
つまり、高寿の記憶と愛美の記憶は逆行していくのです。
でも、そこは小説ですから、2人がなぜ出会い、どんな糸で結ばれていたのか。何とも切ない、泣ける小説です。

ということで、物理学の本から小説まで紹介してきましたが、パラレルワールドが存在するなら、もう1人の自分が未来にいるはずです。
そして、すでに未来に自分が存在しているなら、そう落胆しないでもいいのかもしれません。

のび太が将来、しずかちゃんと結婚するように、未来はいい方向にいっていると考えたほうがいいのかもしれませんね。

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