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【徹底解説】「営業」の専門性・分業化が進んでいる理由

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

「営業」とひと言で言っても、専門性、分業化が進んできています。かつてのオールラウンダー的なものでは対応ができないほど、営業活動が高度化しているからです。そう言われても、営業の世界にいないと、なかなかイメージできないかもしれません。 

「絶対達成」で知られる超人気営業コンサルタントの横山信弘さんがトップ営業パーソンたちの取材を通じて、自身が考えていることをすり合わせながら、「変わること」「変わらないこと」をランキング形式で解説した新刊『新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた』の中で、「変わること」の第3位に「求めらる営業の専門性」を挙げて詳しく解説しています。今回は、その該当箇所を一部編集・抜粋して公開します。 


営業活動の高度化 

 これ(求められる営業の専門性)は近年、特に感じることですし、今後はさらに専門性は求められていくと私は考えています。
「新しい営業」と呼ばれるインサイドセールスやカスタマーサクセスは、その代表例。新型コロナウイルス感染症の影響が拡大するなかでも、唯一「営業職」は求人が増えました。牽引したのは、この「新しい営業」と呼ばれる分野です。
 経験値が高いカスタマーサクセスは、年収700万円以上を提示されることもあり、たびたびニュースでも取り上げられます。
 営業の世界に足を踏み入れたことがない人は、営業のほとんどがオールラウンダーだと思い込んでいます。いわゆる「町医者」のような存在。ほとんどの病気や怪我に対処できるお医者さんのように、営業職は、営業活動のすべてを担うと考えられています。
 しかし近年、営業活動が高度化するにつれ、より専門性を求められるようになってきたのです。
「営業の専門性」について、『THE MODEL』の著者、福田康隆さんに聞きました。
「製品のラインアップが増えていくと、一人の営業でカバーできません。なので、アカウント担当営業と、製品担当営業のマトリックスで組織が構成されます」
「外資のIT企業などでは一般的ですが、日本企業の営業もそうなっていくと思います」
 私は日立製作所時代、システムエンジニアとしてSFA/CRMを主に担当していました。つまり、製品特化型のSEでした。クライアント企業の大小問わず、SFA/CRMの分野であれば、セールスからデモ、システム設計からプロジェクトマネジメントまでこなしました。
 一方、アカウント担当のシステムエンジニアも存在しました。NTTやUFJ銀行(当時)など、巨大企業を相手にする場合、その企業に精通した担当メンバーが揃っていたのです。
 営業も同じ発想です。製品やアカウントごとに専門営業が存在するようになる。医者でたとえると、内科や外科が製品特化型。アカウント担当は主治医です。

加速化する営業の分業化、専門性

  別の切り口の専門性もあります。それが福田康隆さん著『THE MODEL』に登場する、「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の考え方です。
 お客様の購買行動(カスタマージャーニー)が多様化する現代、営業の分業化が進んでいます。
 これは、私が日立製作所に在籍していた20年前(2000年頃)から言われていたことです。私もよくセミナーで、こう言ってきました。
「プロ野球で近年優勝しているのは、優秀な先発、中継ぎ、抑えのピッチャーを揃えた球団だ。営業の世界もそうなっている」
 その傾向は20年以上経った今でも変わりません。投手分業体制はますます進み、高度化していきました。営業の分業化も同じです。その概念が一気に進んだのが、福田康隆さんの名著『THE MODEL』登場以降です。
 Twitter を見ていると、痛感します。プロフィール欄に「インサイドセールス」や「カスタマーサクセス」と記している若い営業がいかに多いか。自分の名前に連記している人も多く見受けます。

 ◎例:「山田太郎@不動産インサイドセールス」
 ◎例:「鈴木花子─カスタマーサクセス3年目」

 このような現象を目の当たりにすると、専門性の高い営業職に就いている人のほうが、この職種に対する強いこだわりとプライドを感じていることがわかります。
 それではまず、「マーケティング」から触れていきましょう。

入口を間違えれば、すべて間違える──「マーケティング」

  マーケティングという表現は多義的です。フィリップ・コトラーが提唱している一般的なマーケティングの世界観ではなく、営業の文脈では──認知度を拡大し、見込み客(リード)を発掘する一連の活動──を意味します。
 とはいえ、この意味合いのほうが私たちビジネスパーソンには馴染みが深いでしょう。しかも、現代の営業においてきわめて重要な役割を担っています。
 S1グランプリ代表で営業代行業の古瀬貴大さんも、同じくテレアポ代行を本業とする笹田裕嗣さんも口を揃えます。
「テレアポで大事なのは、喋り方でもなければトークスクリプトでもありません。顧客リストがすべてです」
 だから営業代行のプロは、意外にもコミュニケーションの中身よりリストの精査に力を注ぎます。リストの精度が低ければ、どんなにアポイントをとっても、契約はとれないからです。
 特にWEBマーケティングが高度化していくなか、専門知識のない営業が見込み客を発掘することはきわめて困難な時代となりました。企業データを取り扱うSaaS企業も増えています。過去と比べ、この分野は成長し続けています。
 リアルの展示会やイベント、セミナーのみならず、オウンドメディアやSNS、タクシーCMなど、認知度アップや問い合わせを増やす取り組み、媒体は多岐にわたります。いくら情報感度が高くても、営業活動の傍らで次々に現れる手法や媒体をキャッチアップすることは難しいのです。
 今現時点で、どのようなやり方が最も自社の営業活動に合ったマーケティング手法なのか。専門性の高い人が常にアンテナを張り巡らせておかないといけない時代となったことを覚えておきましょう。
 入口を間違えれば、すべてが間違うからです。

サッカーの司令塔的な存在──「インサイドセールス」 

 マーケティングの専門部隊をすでに整備している企業は、まだ少ないかもしれません。しかし「インサイドセールス」はどうでしょうか。
 茂野明彦さんの著書『インサイドセールス』がベストセラーになり、本テーマにしたウェビナーやカンファレンスも連日大入りであることを考えると、最もメジャーな「新しい営業」がインサイドセールスであることは間違いありません。
 インサイドセールスの注目度は、近年上昇し続けています。後述の第7位「女性業の活躍」のトピックでも書いていますが、働き方改革にも直結するこの営業スタイルは、今後さらに求められていくことでしょう。
 ただし、いまだにインサイドセールスをテレアポ部隊と勘違いしている経営者も多いようです。
 フィールドセールスで活躍できない営業を、
「テレアポぐらいならできるか」
 と言って、インサイドセールスに異動させるケースがあるようです。これは悲劇としか言いようがありません。
 インサイドセールスは、プロ野球の「中継ぎ」的な側面も持ち合わせていますが、
「サッカーでたとえるなら、司令塔の役割を担っています」
 と茂野さんは言います。
 元サッカー日本代表、中田英寿さんのようにフィールド全体を把握しながら、ここぞというときにキラーパスを出す。それぐらいの俯瞰力、問題発見力がインサイドセールスには求められるからです。
 マーケティング部門が展示会やオンラインセミナーなどで新規リードを大量に獲得した場合、インサイドセールスはリードが新鮮なうちにフォローしたくなるでしょう。
 しかしフィールドセールスが手一杯であれば、インサイドセールスがどんなにフォローしても〝パスの出し先〟がありません。反対に、フィールドセールスが抱える案件が足りなくなれば、インサイドセールスにパスを求めてくるでしょう。そうなると十分に温まっていないリードまで渡すことになり、成果に結びつく確率が落ちます。
 そのため、インサイドセールスは営業組織全体を俯瞰し、目標から逆算して、どこにどのような状態のリード、案件が不足もしくは滞留しているのか、常にウォッチしている必要があります。
「緩急」をつけるのが、インサイドセールスの役割だからです。
 そのためSFA/CRMやMA(マーケティングオートメーション)を使いこなすデジタルスキルのみならず、部門間連携を主導できるコミュニケーション力が必要です。

最も希少価値が高い営業──「カスタマーサクセス」 

 LTV(ライフタイムバリュー)向上を目的とした経営スタイルを目指す企業なら、カスタマーサクセスは不可欠な存在です。
 一方で、お客様の成功を促す存在として、問題解決力のみならず、問題発見力も持ち合わせていなければなりません。主にリモートでやりとりするわけですから、高いコミュニケーション能力も要求されます。
 だからこそ、希少性の高い、高度な営業職とも言えます。そして経営トップの理解がない限り、カスタマーサクセスも正しく機能しないでしょう。その立ち位置からして、カスタマーサクセスは、カスタマーサポートと間違えられるからです。
 特にカスタマーサクセスは、商材を販売してからが出番です。果たして営業職と呼べるのかという議論もあります。
 しかしまぎれもなく、カスタマーサクセスは営業職の1つです。近年、当社もカスタマーサクセスの発想を全コンサルタントが持つように方針転換しました。新規顧開拓よりも、既存顧客の深耕開拓に軸足を移したからです。
 セールスフォース・ジャパン執行役員の鈴木淳一さんは言います。
「デジタルシフトにより、営業の川上から川下までのデータが見えるようになった今、時間をかけて新規顧客を開拓する動きのみが、目標達成の最善策ではないと思うようになってきましたね」
「一般的に営業の花形は、時間をかけて高額の大きな案件をドーンととるイメージがあります。しかし、実際は既存のお客様をしっかりフォローして、製品やサービスの価値を理解いただき、お客様に成功していただくことがリピート注文や売上拡大に寄与するというケースが増えているんです」
 鈴木さんは、優秀な交渉力を持った内勤営業を、新規顧客開拓に集中させるべきか、それとも既存顧客の深耕開拓に集中させるリソース配分を悩むことがあると言います。
「旧来型の考えであれば、迷わず新規顧客開拓受注に集中させる判断をされる方が多いと思いますが、最適な配分は蓄積されたデータを元に判断しています」
 それほどまでに、カスタマーサクセスの重要性が上がっています。
 このことからもわかるとおり、これからの時代はどんな営業も、カスタマーサクセスの概念を知り、デジタル技術を駆使しながらお客様に対するきめ細かいケアをすべきなのです。

最初の関門「オンボーディング」 

 とりわけ「オンボーディング」は意識すべきでしょう。
 オンボーディングとは「on board」の意味であり、元々「船や飛行機の新たな乗務員が早く環境に馴染めるよう支援するプロセス」のこと。
 SFAを販売するベンダーからすれば、クライアントの営業組織がストレスなくSFAを活用できている状態に持っていくまでを指します。ソリューション営業が必要な商材であれば、「オンボーディング」は重要な概念です。
 お客様から問い合わせがあって初めて動くカスタマーサポートと違い、お客様の状態を把握し、「あるべき姿」に近づけるように支援する点からして、カスタマーサクセスには能動的な姿勢が求められます。
 問題を特定する公式は、

「あるべき姿」─「現状」=「問題」

  です。

 お客様のあるべき姿(オンボーディング)を事前に擦り合わせておけば、あとは「現状」を近づけるようにすればいい。ですから、カスタマーサクセスは定期的なお客様の現状把握が不可欠です。

3つのタッチモデル

  とはいえ、お客様すべての現状把握を個人に任せるわけにはいきません。そこでお客様を大きく3つのセグメントに分け、セグメントごとに接触(タッチ)のスタイルをあらかじめ決めます。

 ◎ハイタッチ
 LTVの高い大口のお客様の場合は、カスタマーサクセスが対面による個別対応をします。お客様ごとに状況は変わるため、「あるべき姿」とのギャップを埋めます──問題解決のためのきめ細かい支援が求められます。
 ハイタッチができるカスタマーサクセスは、お客様のビジネスモデルや経営方針ビジョンの理解など、コンサルタントと同レベルの力量が必要です。もちろん解決だけでなく、お客様からの信頼を勝ち取り、さらなるソリューションの提案もできなければなりません。カスタマーサクセスは営業だからです。

 ◎ロータッチ
 中位のお客様に対するロータッチは、セミナーや勉強会などを通じ、まとまった層に対して均一の対応をします。ただし、複数のお客様を集めるため、それぞれの現状把握ができません。したがって、カスタマーサクセスは「成功事例」を紹介したり、その場で質問を受けて対応することになります。

◎テックタッチ
 取引量の少ない層には、お客様自身で問題解決を促します、メールの自動配信などによるセルフサポートサービスを提供します。
 名称が「カスタマーサクセス」なので、お客様の成功を支援することがミッションです。しかし、カスタマーサクセスの評価指標(KPI)は、「解約(チャーン)率」「オンボーディング完了率」「アップセル/クロスセル率」です。
 この中で、特に「解約(チャーン)率」「アップセル/クロスセル率」を改善するには、営業マインドが必須です。LTVを意識したビジネスには、インサイドセールスやフィールドセールス、商品開発部との連携も不可欠です。
 個人的には、デジタルスキルの高い、営業経験豊かなベテランが担うのが理想ではないかと考えています。経験が浅く、コミュニケーションスキルの低いカスタマーサクセスが対応すると、お客様は、「契約時にかかわってくれた営業に対応してほしい」と思うことでしょう。 

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いかがですか?

「絶対達成」で知られる超人気営業コンサルタント・横山信弘さんの新刊『新時代の営業「変わること」「変わらないこと」を1冊にまとめてみた』では、「業種を問わず、全営業パーソンにとって、新時代に必須の思考&スキルは何か?」という命題に対して、「変わること」「変わらないこと」のそれぞれベスト10をランキング形式で詳しく解説しています。興味のある方はチェックしてみてください。

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