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なぜ日本にはスパイスが浸透しないのか?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

スパイスは、ご承知のとおり、世界中の料理で使われている調味料です。ショウガ(ジンジャー)やワサビ、コショウ、カラシ(マスタード)、七味唐辛子などは、私たち日本人も日常的に使っているスパイスといえるでしょう。ただ、スパイスはその他にもたくさん存在するのですが、日本人に馴染みがあってふだんから使っているのは先に挙げたものぐらいかもしれません。

なぜ日本にはスパイスが浸透しないのでしょうか?

スパイスコーディネーター協会の理事長としてスパイス活用の普及に努め、日本国内はもちろん、欧米諸国のスパイス研究者に高く評価されている、日本におけるスパイス研究の第一人者として知られている武政三男さんは、監修した書籍『スパイス活用超健康法』の中で、日本にスパイスが浸透しない理由についてわかりやすく解説しています。今回は、本書の中から該当箇所を一部抜粋・編集して紹介いたします。

日本では単独、ヨーロッパではブレンドが基本

 日本にも独自のスパイス観が存在します。それはヨーロッパで発展した食文化とは異なる点が多いと考えられます。
 ヨーロッパではスパイスをブレンドして総合的に使うのに対して、日本ではピリッと効かせる薬味という考え方が主流です。
 そば屋のテーブルには七味唐辛子が置いてありますね。できた料理に振りかけることが前提の使い方です。また、家庭でコショウ(ペパー)を使うときにも、調味用として料理の仕上げに振りかけるのが一般的です。
 刺身につきもののワサビは、本来、臭み消し・毒消し作用を期待されるスパイスですが、今では薬味として独特の辛味を楽しみます。鰻の蒲焼きにはサンショウ、夏のそうめんにはショウガ(ジンジャー)が薬味として欠かせません。
 一方、ヨーロッパでは、スパイスが持つ4つの働きを総合させて使うのが一般的です。そのためにいくつものスパイスをブレンドするのです。
 ブレンドをすると、香りや辛味がマイルドになります。1種類のスパイスを際立たせることは、ほとんどありません。1つのスパイスが強すぎると「オーバースパイス」と呼んで、失敗を意味します。
 日本では、「コショウが効いていないよ」「ローズマリーの香りが弱いな」などといいますが、ヨーロッパではどんなスパイスを使っているかわからないほうが正解なのです。これは大きな違いです。
 ヨーロッパ流のブレンドでは、3種類以上のスパイスを合わせるのが基本です。
 たとえば、イタリア料理ではオレガノ、バジル、マジョラムなどを混ぜ合わせます。オレガノだけでは個性が際立ってしまいますが、バジルやマジョラムをブレンドすることによってマイルドで万能なソースが仕上がるのです。
 同様に肉や魚の臭い消しには、タイム、セージ、オレガノを一緒に使います。料理に辛味を効かせたいときは、コショウ、トウガラシ、ショウガを好みに応じてブレンドするのです。

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『スパイス活用超健康法』(p.34より)

「油や酢に香りを移す」という発想

 ヨーロッパでは、ブレンドのテクニックとして、油・酢・酒などに溶かす方法も一般的です。
 ペペロンチーノはスパゲティの定番メニューですね。イタリアでは、アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノと呼ばれます。
 アーリオがニンニク(ガーリック)、オーリオがオイル、そしてペペロンチーノがトウガラシ(カイエンペパー)です。その名のとおり、オリーブオイルにニンニクとトウガラシの風味をしっかりと移してつくる料理です。
 茹で上がったスパゲティにガーリックパウダーとチリパウダーを振りかけても、あのおいしさを表現できるはずがありませんね。
 マルシェ(市場)に行くと、数多くのピクルスが売られています。具材のバラエティもさることながら、それぞれに異なるスパイスやハーブを使って酢に漬け込んだ様子に目を奪われます。
 もちろん、家庭でも独自の味を楽しんでいます。スパイスを活用した奥深い食文化といえます。

日本人は、本当はスパイス好き

 一方、日本では子どもや高齢者はスパイスが嫌いだといわれます。
 これは1種類のスパイスだけを際立たせて使うことが原因だと考えられます。
 トウガラシやカラシ(マスタード)、ワサビ、ショウガなどを単品で味つけに使えば、確かにその辛さばかりが際立ってしまいます。「スパイスは辛い」という誤解が生まれるのもこのためです。
 逆にカレーライスは子どもからお年寄りまで多くの人に好まれますが、通常、10〜30種類のスパイスがブレンドされています。トンカツソースやトマトケチャップも同様です。
 カレーはいろいろなスパイスを調合することによって、単一の味が突出することのない、深い味わいを演出しているのです。実は知らず知らずのうちに、本来のスパイスの良さを味わっているわけです。
 これからは家庭でもヨーロッパ流の成熟したスパイスの使い方を学んで取り入れてほしいと願っています。

いかがでしたか?

武政さんが監修した『スパイス活用超健康法』では、スパイスの効用を活用した健康法をスパイス別、効能別でわかりやすく解説しています。興味のある方はチェックしてみてください。

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