見出し画像

【フォレスト出版チャンネル#233】出版の裏側/編プロ|出版社のブレーンであり、協働パートナーという仕事

このnoteは2021年10月5日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。 

編集プロダクションの仕事内容 

渡部:フォレスト出版チャンネルのパソナリティの渡部洋平です。今日は、編集部の森上さんとともにお伝えしていきたいと思います。森上さん、よろしくお願いします。

森上:よろしくお願いします。

渡部:さて、本日はまたスペシャルゲストにお越しいただいているんですけれども、森上さんが普段かなりお世話になっていらっしゃる方で、リスナーさんにはあんまり関わりがないかもしれないけれども、間接的にはお世話になっていると言いますか……。

森上:そうですね。

渡部:出版業界と僕らの仕事を支えてくださっている方がゲストなんですよね?

森上:そうなんですよ。出版社にとっても本当に大切なブレーンであり、ビジネスパートナーとも言える、いわゆる編集プロダクションという業態があります。出版社とともに本づくりをご一緒していただいている会社で、編集プロダクションとしてはすごく人気が高くて、実績もすごくある会社の社長さんに今日はお越しいただきました。

渡部:それではまさに出版業界の裏側ということで、今日はお届けしたいと思います。今日のゲストは株式会社ファミリーマガジン・代表取締役社長の久野隆さんです。久野さん、本日はよろしくお願いいたします。

久野:よろしくお願いします。

渡部:早速なんですけれども、まずは久野さんから簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。

久野:はい。私どもは株式会社ファミリーマガジンと言う、神楽坂にある編集プロダクションです。いろいろな出版社の方々から「パートワーク」と呼ばれる雑誌、分冊百科というものなんですけれども、とか、書籍とかムックなんかを受注・制作させていただいています。いろんな種類のものを手がけている会社で、10年ぐらい活動してきました。こんな感じでちょっと地味にやっている会社です。はい。

渡部:ありがとうございます。では、今「編集プロダクション」というキーワードが出てきたと思うんですけれども、森上さんは当たり前のように使われているかもしれないんですけれど、僕含めてリスナーの皆さん、もしかしたらあまり聞いたことがなかったり、具体的にどんな仕事をしているのかなってイメージがつかなかったりすると思うので、その辺も簡単に教えていただけないでしょうか?

久野:はい。「編集プロダクション」は、出版社さんや広告代理店さんから、出版物の制作を受注している会社です。分類すると出版業と言ってもいいと思うんですけれども、出版社のように書店向けに本を発行することができる会社ではないです。出版社には書店に流通するための「コード」っていうのがあるんですけれども、それを我々は持っている業態ではないので、出版社さんが企画・発行する本の制作部門をそのまま請け負うのが、我々の仕事になります。その他、自社発行の出版物とか、オウンドメディアとかECサイトとか、いろいろ手がけている編集プロダクションも今はあると思うんですけども、我々はどちらかと言えば、前者に話したようなオーソドックスな編集プロダクションになります。

渡部:ありがとうございます。うちで言えば、本の中身の制作を編集部と一緒に組んでつくってくださっているっていう、そんなイメージで合ってるんですかね?

久野:そうですね。出版社の編集さんとは企画の打ち合わせとかでご一緒することが多くて、その後の制作に関して、我々が結構そのまま請け負って、いわゆる印刷所に入稿して、校了するところまで作業する。これを出版社の編集さんと一緒に走らせていただいている、そのような感じです。

渡部:なるほど。かなり編集者とタッグを組んで一緒にお仕事をしていただいているんだなっていうのがわかったんですけれども、森上さんはファミリーマガジンさんとはどのくらいお付き合いをされているんですか?

森上:そうですね。私、個人で言うと、もう10年ぐらいお世話になっておりまして、ファミリーマガジンさんというお名前になる前の、ノトーリアスさんでしたっけ?

久野:そうですね。ノトーリアスという会社が前身になっていますね。

森上:そうですよね。そのときから久野さんはじめ、ファミリーマガジンの編集者さんとはご一緒にいろいろとさせていただいておりまして、先ほど編集プロダクションの業態の全体的なお話を久野さんからしていただきましたが、うちが特に多いのは、「図解版」というムックぐらいの大きさの本があって、単行本で出したものを図解版にするっていうパターンがあったりすると思うんですけど、その図解にするための図のアイディアとか、そういった雑誌的なエッセンスの編集センスをお持ちでいらっしゃる編集者さんがいっぱいいらっしゃって、そういったことでお世話になったりとか。
編集プロダクションさんは出版社とはまた別にいろいろな優秀なライターさんを抱えていらっしゃるので、ファミリーマガジンさんにもやっぱり優秀なライターさんがたくさんいらっしゃって、そのライターさんに原稿の執筆だけをお願いするっていうパターンがあったり、いろいろなパターン、かかわり方があります。丸々1冊お願いするときもありますし、最近だとデジタル書籍ですね、いわゆる電子書籍、そちらの原稿作成とか、そういったこともやっていただいたりとか、いろいろお世話になっています。それでファミリーマガジンさんで得意としているジャンルだと、雑誌とかも結構やられていますよね?

久野:そうですね。雑誌もやっていたんですけど、つい最近だと雑誌はちょっと元気がないので。

森上:確かに、確かに。

久野:仕事的にちょっと減ってきたかなぁっていうところがあって、やっぱり今メインになっているのは分冊百科と、書籍ですね。

ファミリーマガジンの強み、得意ジャンル 

森上:なるほどね。書籍の場合は、お付き合いされている会社さんによっては、丸々1冊全部、最初から最後までやったりとかする場合もあるんですか?

久野:企画の内容だけはいただいて、そこから骨組みをつくっていく作業をやっていますね。どちらの会社とは言いづらいんですけど、タイトルと企画内容があれば、それに合わせて著者さんとか、監修者さんも「この方で」っていうかたちで、骨組みをつくってというのが、書籍のだいたいの作業としてはあります。

森上:なるほど。

久野:分冊百科は、スタートするときに企画をいただいて、制作の骨組みをまずつくって、それで後で話す予定なんですが、「テスト版」をやっていくっていう感じですね。

森上:御社は編集者以外にも、いわゆる中面のデザインのレイアウトをつくったり、DTPをやったりとか、そういった方もいらっしゃいますよね?

久野:はい。デザインもDTPの方も3名ほどおりまして、うちの仕事をよくやっていただいている外部のデザイン事務所もいて、いろいろと組み合わせてお願いしています。

森上:なるほど、なるほど。あと、やっぱり原稿づくりにおいて、ライターさんを結構いろいろと抱えていらっしゃるというイメージが……。お世話になっていますが。

久野:そうですね。特に最近フォレストさんにいただくのは、ビジネスとか自己啓発系の内容が多いんですけども、そのジャンルの中身が上手に書ける方、多くお願いできる方をうちでは揃えております。

森上:ありがとうございます。お付き合いされている出版社っていうのは、うち以外で何社ぐらいいらっしゃるんですか?

久野:過去も合わせると結構な数になると思うんですけど、割と少ないほうだと思いますね、うちは。

森上:あ、そうですか。

久野:はい。2桁いかないくらいですね。

森上:なるほど、なるほど。

久野:結構固まったお仕事を受けさせていただいています。そちらのほうがいろんなやり方とかがうまくいきますし、こちらのこともわかっていただけることもあるので、割と少ないほうだと思います。

森上:そうですか。久野さんのところは(付き合っている出版社が)少なく深くという感じなんですね。

久野:そうですね。そうだと思います。

森上:なるほど。今は、ざっくり年間で何冊ぐらいやられているんですか?

久野:さっき言っていた、パートワーク、分冊百科っていうのがあるんですけども、それは週刊か隔週刊で発行するものなんですね。ここが今、全国版と言われる、まあテレビCMもやって発行しているものを隔週刊が4シリーズで、週刊が1シリーズあるので、月12冊のパートワークの雑誌を出しています。その他に書籍関係が、月割りにするとだいたい2冊平均ぐらいかなという感じですね。他にプラスアルファの仕事があったり、っていう感じの内容になっていると思います。

森上:なるほど。じゃあ、ざっくり分冊百科的なものは別として、書籍をだいたい年間30冊ぐらいはやられているっていう感じですかね?

久野:そうですね。月に平均してまあ2冊、3冊ずつという感じだと思います。

森上:なるほど。では、出版社さんとのお付き合いというところでいくと、変な話、編集プロダクションさんから営業をかけたりとか、お仕事を取ってくるという言い方が合っているのかわからないですが、営業的なものは久野さんがやられている感じなんですか?

久野:そうですね。新規のところに関しては、私が窓口になってやっています。

イチ編集者から編プロの代表になるまでの経緯

森上:そうですか。久野さんは、元々は営業的なところよりも編集者あがりでいらっしゃるんですか?

久野:そうです、そうです。

森上:久野さんの昔から今に至るまでの経緯をちょっとお聞きしたいなと思って。

久野:「ファミリーマガジン」という会社は、今から7年前ぐらいに設立されたんですけど、先ほど森上さんがおっしゃったように「ノトーリアス」という会社がその2年半前にあったので、今からちょうど10年ぐらい前にできあがった会社がありまして、そこから続いている会社がファミリーマガジンです。元々うちの会社のかたちっていうのは、新宿の二丁目にとある編集プロダクションがありまして、総勢50~60名くらいの社員を抱えるぐらいの規模の大きな編集プロダクションがあったんですね。私がそこに入社したのは2004年だったんですけれども、2011年、ちょうど東日本大震災があったあの年に崩壊しまして。

森上:なるほど。出版業界はいろいろとてんやわんやでしたからね、あの頃。

久野:結構ありましたよね。いろいろとあったんですけども、それがなくても崩壊したんじゃないかなと思うんですけども。

森上:(笑)。じゃあ、元々は編集者として入られて、そこで2011年まではイチ編集者としてご活躍されていたと?

久野:そうですね。2011年までは普通の社員で、編集者としてやっていたんですけど、そういうことで、前の社長がいなくなっちゃったっていうのがありまして、ある会社の子会社になったんですけども、その際に「誰かを社長に決めてくれ」っていうことで、私がなることになったんです。

森上:なるほど。イチ編集者が経営者になったわけですね。それが2011年?

久野:そうですね。2011年の11月でしたね。

森上:そうでしたか。別に経営の勉強をされていたりとか、そういったことはなく?

久野:いや、全くないですね。青天の霹靂と言うかね。ただ、親会社があって、その親会社にやり方っていうのを教えていただいたりもしたので、2年半の間ぐらいにヨチヨチ歩きくらいはできるようになったんですね。

森上:なるほど、なるほど。

久野:それで、2014年に円満に会社を独立させていただいたという感じだったんですね。

森上:なるほどね、なるほどね。いや、素晴らしいですね。今も久野さんは編集をやれることがあるんですか?

久野:今は、かなり少なくなりましたね。

森上:そうですか。やっぱり営業的なお仕事が多くなって?

久野:いや、現場の方の技術が上がっているんで、僕は口出ししない方がいいかなと思って。

森上:そうですか(笑)。今、何人ぐらい編集者さんがいらっしゃるんですか?

久野:編集は今、7人ですね。

森上:で、DTPの方やデザインの方がいらっしゃって感じなんですね。じゃあ、10数人で、それぐらいの数をやっていると?

久野:そうですね。プラス外部のスタッフさんに入ってもらったりして。

森上:やっぱり外部の業務委託的な方も結構いらっしゃるんですね?

久野:そうですね。ちょっと仕事も増えてきたので、いろいろとお手伝いしてもらわないと、なかなか大変だなという感じで。

出版社の編集者にとってのブレーンであり、協働編集者

森上:なるほどね。うちもいろんな面で、私以外もお世話になっているんですが、渡部さん、そんな編集プロダクションのファミリーマガジンさんなんですけど。

渡部:はい。僕が少し疑問に思ったこと聞いてもいいでしょうか? 出版社の編集さんは、なぜ編プロさんにお仕事をお願いする場面が出てくるんでしょうか?

森上:なるほど、なるほど。特にわかりやすいところで言えば、図解版の本だと、一回著者さんと、いわゆるテキストベースの、文字ベースの原稿をつくっているわけですね。それを図解版にするときって、どれを図解にしていこうかとか、そういったアイディアを出版社の人間だけで考えている場合ももちろんあるんですけれども、ファミリーマガジンさんにはその辺のスペシャリストがいらっしゃって、ファミリーマガジンさんのお仕事を見させていただいたときに「これはすごい!」と。その辺りのアイディアと落とし込み方、図解版にすると本当に職人みたいな優秀な編集者さんがいっぱいいらっしゃって、そこの部分で衝撃を受けて、ご一緒させていただくという。そういったプロフェッショナルな部分でお仕事を依頼するときもありますし、あともう1つはスケジュール的に何本か一緒に抱えちゃったときに、1冊はある程度ゲラにしていただく。ゲラのチェックとか、著者とのやり取りとかはもちろんこっちでやるんですけど、原稿づくり、編集作業、そういったものを1冊、原稿を取ってくるまではこっちでやって、その後をちょっとファミリーマガジンの信頼できる編集者さんにお願いするとか、そういう場合があります。

渡部:そうなんですね。本当に編集作業全般に関するプロフェッショナルの方がたくさん在籍されているんで、森上さんも信頼してお願いできるという。

森上:そういうことです。特に最近うちでお世話になったところで言うと、マンガ版の『マンガで「めんどくさい」がなくなる本』っていう本が、元本も18万部以上いって、ベストセラーになったものなんですけど、これをマンガ版にしようとしたときに、ビジネスコミックっていうジャンルをご経験されていたので、僕はビジネスコミックが初めてだったので、まずはファミリーマガジンさんにご相談に行きまして。おかげさまで今、8万5000部(2023年6月現在、10万部)くらい、しっかり売れています。いろいろとアイディアを出しながら、やりとりさせていただく中で、いい意味で化学反応が起こって、アイディアやアウトプットがもらえたり、そういったことが武器になると言うか、すごく助かりますね。一人でつくっている感じがしないと言うか。そういうところですね。

編集者になりたい人は、まず編プロに就職するのもアリ

渡部:ありがとうございます。編集者になりたいという方、もしかしたらリスナーの方にもいらっしゃるかもしれませんが、出版社に入るだけではなくて、編集プロダクションでお仕事をするっていうのも選択肢として、あるわけなんですね。

森上:そうですよね。ファミリーマガジンさんでは、新卒でお越しになる方もいらっしゃいますか?

久野:まるまる新卒っていう方もたまにいますけど、一番多いのは第二新卒って言うのかな、一回会社に入って、半年~1年ぐらいして、「やっぱりちょっと……」っていう感じで来る方もいらっしゃいますよね。1年~3年ぐらいまでの間の23歳~25歳の方で、未経験で、我々も未経験の募集をかけたりするんですよ。そうすると、「なかなか未経験で雇ってくれるところないんです」って言って、いらっしゃいます。

森上:なるほど、なるほど。じゃあ、そこはやっぱり教育体制もしっかりされているんですね、ファミリーマガジンさんの場合は。

久野:それ、よく聞かれるんですけど(笑)、教育体制がちゃんとしていることって、たぶんないと思います(笑)。

森上:そんなこと言っちゃっていいの(笑)?

久野:社員から「うちの会社、教育体制になってない」って、そのまま言われたことあります。

森上:(笑)。よくあるOJTじゃないですか、それ。

久野:OJT、なるほど。

森上:オン・ザ・ジョブ・トレーニングで。

久野:ただ仕事の仕方として、うちの会社は先ほども言ったんですけど、パートワークっていうジャンルの仕事をしているんですけど、こちらが割と週刊、隔週刊で、定期的に同じことを着実にしていくっていうタイプの仕事なんですね。しかも、人数がちょっと必要な仕事になっているので、新入社員が入った場合に、そのセクションで2年ぐらいやっていただくことをしています。もちろん、そこにはリーダーが存在しているので、きちんとしたものをつくる体制ではあるんですけれども、その中で編集の最初のスキルを学ぶには、割と仕事がしやすいんじゃないかなとは思います。

森上:なるほどね。分冊の編集が、教育の場にもなるという感じですね?

久野:そうですね。それでリーダーがいれば、その下でいろんな仕事をして、最終的にアンカーに渡してあげるっていうことを繰り返すと、2~3年経つと、だいたいいろんなことを覚えてくるのかなというふうに。

森上:そうでしょうね。分冊のことについても、いろいろとまだお聞きしたいんですが、あれも本当にいろんな編集の基礎が、全部一気に入っているって感じがしますもんね?

久野:そうですね。校正の作業、それから進行の作業、入稿、下版までを。

森上:材料集め含め、ですよね?

久野:そうです、そうです。要するに、不規則なことが起きづらいので、新人さんは不規則なことは泡を食っちゃうので、毎週、隔週でのトレーニングっていうのは、やっぱり1~2年の段階があるといいのかなっていうのはありますよね。

森上:なるほどね。

渡部:パートワークとか分冊という、僕ら、素人にとって謎の言葉が出てきたんですが、その辺りも含めて、また明日もう少し具体的にお話を聞かせていただけるということですので、久野さんには明日もゲストにお越しいただきたいと思います。明日の放送では、ファミリーマガジンさんが手がけた代表作や今後の出版業界の可能性について、詳しくお聞きしたいと思います。それでは森上さん、今日はこのあたりでよろしいでしょうか?

森上:はい。

渡部:ファミリーマガジンさんのウェブサイトをURLに掲載しておきますので、もし出版社さんで、お仕事のご相談をしたいという方や、働いてみたい方もいたら、ぜひチェックしていただければと思います。それでは久野さん、明日もよろしくお願いいたします。

▼ファミリーマガジンHP

久野:よろしくお願いします。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?