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売れる営業パーソンは前工程に時間をかける

フォレスト出版編集部の寺崎です。

今日は新刊『世界一シンプルな問題解決』(中尾隆一郎・著)から、問題を「プロセス(時間軸)」に分けて、課題を特定する方法をご紹介します。

分かりやすい事例として「営業」をサンプルにします。営業成績に悩む営業パーソン、営業部としての売上を向上させたい営業マネジャーは必見のテクニックです。

「売る」プロセスを分解する

 例えば「売る」のプロセスを分解する場合です。
「売る」という営業プロセスは、単純化すると次の6つのプロセスに分解することができます。

①ターゲティング=対象顧客を決める
②アプローチ=対象顧客と接点を持つ
③ヒアリング=対象顧客の課題やニーズを把握する
④プレゼンテーション=課題解決できる企画提案を行う5クロージング=契約締結する
⑤クロージング=契約締結する
⑥デリバリー=納品する


 このようにプロセス化すると同時に、数値化しておくと課題が特定しやすくなります。数値化するのは、それぞれのプロセスの実数値と次のステップへのCVR(Conversion Rate:歩留まり)です。数値化しておくと、課題発見しやすくなります。
 ここで課題発見するための大事なポイントをお伝えします。
 プロセスの中で課題を発見するコツがあります。
 それは「比較」です。何かと何かを比較して、その差分が大きいプロセスが課題候補である可能性が高いのです。
 例えば、プロセスに関する数値を時系列で把握できている場合、昨年や前月の数値と比較する。あるいは、複数の組織がある場合は、組織間で数値を比較します。
 あるいは、業界の平均や業界トップ企業の数値が把握できる場合は、それらの数値と比較することで、課題が特定できます。課題が特定できれば、さらにそのプロセスを分解していきます。そして、自分たちが課題解決できる大きさにまで分解を続けます。

A B M 分析で比較して分かった面白い事実

 営業プロセスの課題は一般的には前半のプロセスにあることが多いと私が気づいた事例を紹介したいと思います。
 私がABM(Account Based Management)分析した結果から分かったことです。ABMとは、何に時間を使っているのかを登録し、それをマネジメントに活用する方法です。
 私がマネジメントしていた組織には、自社の全営業担当のABMデータがありました。
 そのABMデータから高業績の営業担当と営業マネジャー、中業績の営業担当と営業マネジャーの時間の使い方を「比較」したのです。
 そして分かったのは、きわめて興味深い事実でした。

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 両者が注力している営業プロセスが異なるということでした。
 みなさんは、6つの営業プロセスのうち、高業績の営業担当や営業マネジャー、中
業績の営業担当や営業マネジャーはそれぞれどこに注力していると思いますか?
 これが面白いことに、見事に違いが出たのです。
 高業績の営業担当はプロセス前半のヒアリングに時間を使い、上司である営業マネジャーにもヒアリングに顧客同行してもらっていました。一方の中業績の営業担当と営業マネジャーは、プロセス後半のプレゼンテーション、もしくはクロージングに注力していたのです。
 定性インタビューも実施したので、それぞれのプロセスで何をしているのかが手に取るように分かってきました。
 高業績営業担当と営業マネジャーは、ヒアリングに時間を使い、顧客の課題を正確に把握します。その結果、提案内容がシャープになり、プレゼンテーションも顧客が理解しやすいので、クロージングの確度も高くなります。
 さらに詳細にみていくと、高業績の営業担当は、ヒアリングあるいはその前のアプローチ時に、この商談が大きくなる可能性があるのか、その可能性が低いのかを見極めていました。大きくなりそうだと判断すると、上司の同行を促します。上司の力を借りて、さらに商談が大きくなる可能性を高めます。
 上司が顧客ヒアリングをしているので、社内のキーパーソンへの協力もスムーズになります。しかも、何でもかんでも上司の力を借りるのではなく、大きな商談にならないと判断したら、独力で標準的な提案をし、きちんとプレゼンテーション、クロージングへと進めることができます。つまり、メリハリがあるのです。
 一方、中業績の営業担当はヒアリング時の見極めができません。
 その結果、顧客の課題把握があいまいです。
そして提案時の企画書も様々なことを詰め込まなくてはいけなくなり、相対的に分厚くなるのです。実際、中業績の営業担当は企画書作成に時間を費やす傾向がありました。提案に自信が持てないので、プレゼンテーションやクロージングに上司同行を依頼します。しかし、顧客の課題の把握も解決策もあいまいなので、結果として受注に至りません。
 つまり、売れる営業担当は、営業プロセスの前半である「ヒアリング」で商談を見極めることができていたのです。営業プロセスの課題を把握する際の知恵の1つとして知っておくとよいでしょう。

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いかがでしょうか。

この「プロセスで分解して課題を特定する方法」は、例に挙げた営業成績の向上に活かすだけでなく、さまざまな業種、パターンに応用できる考え方です。

「編集者の仕事をプロセスで分解」してみると、私自身の問題、課題ポイントも見えてくるかもしれません・・・。

この「プロセスで分ける」やり方についてですが、本書『世界一シンプルな問題解決』では次の7つの事例で解説を加えています。

プロセスで分ける① ビジネスの基本は「創る→作る→売る」
プロセスで分ける② 売れる営業パーソンは前工程で分岐させる 
プロセスで分ける③ 穴の空いたバケツモデルは後ろから改善する 
プロセスで分ける④ 「創るプロセス」はいつの時代も重要 
プロセスで分ける⑤ プロジェクトは一番最初のステップが肝心
プロセスで分ける⑥ 会議をプロセスに分けて課題を抽出する 
プロセスで分ける⑦ 仕事の依頼もプロセスで分ければうまくいく  

ぜひ、気になった方は『世界一シンプルな問題解決』をお手に取ってみていただければ幸いです。

【著者プロフィール】
中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)
株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長 株式会社旅工房取締役。株式会社LIFULL取締役。株式会社博報堂DYホールディングスフェロー。東京電力フロンティアパートナーズ合同会社投資委員。LiNKX株式会社監査役。 1964年生まれ。大阪府摂津市出身。1989年大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。同年、株式会社リクルート入社。2018年まで29年間同社勤務。2019年NMI設立。NMIの業務内容は、1業績向上コンサルティング、 2経営者塾(中尾塾)、3経営者メンター、4講演・ワークショップ、5書籍執筆・出版。 専門は、事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織創り、KPIマネジメント、経営者育成、リーダー育成、OJTマネジメント、G-POPマネジメント、管理会計など。 著書に『最高の結果を出すKPIマネジメント』『最高の結果を出すKPI実践ノート』『自分で考えて動く社員が育つOJTマネジメント』『最高の成果を生み出すビジネススキル・プリンシプル』(フォレスト出版)、『「数字で考える」は武器になる』『1000人のエリートを育てた 爆伸びマネジメント』(かんき出版)など多数。 Business Insider Japanで「自律思考を鍛える」を連載中。 リクルート時代での29年間(1989年~2018年)では、主に住宅、テクノロジー、人材、ダイバーシティ、研究領域に従事。リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートワークス研究所副所長などを歴任。住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室室長時代に、6年間で売上を30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍にした立役者。リクルートテクノロジーズ社長時代は、リクルートが掲げた「ITで勝つ」を、優秀なIT人材の大量採用、早期活躍、低離職により実現。約11年間、リクルートグループの社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を担当、人気講座となる。

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