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【フォレスト出版チャンネル#144】出版の裏側|「企画」とはなにか(後編)

このnoteは2021年6月3日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

▼前編はこちら

企画力に必要なもの④ センス――企画には「センス」が必要か?

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。今回は昨日に引き続き「企画となんぞや」ということで、残りの3つのポイントをお話していきたいと思います。森上さん、寺崎さん、よろしくお願いします。
 
森上・寺崎:よろしくお願いします。
 
今井:ということで、さっそくなんですけれども、昨日のお話で1つ目「好奇心」、2つ目「自分なりの基準」、3つ目「感動する心」とお伝えしてきたんですけども、これだけでも十分な気持ちになってしまうんですけども、まだまだあるということで、4つ目はどんなモノがあるんですか?
 
寺崎:4つ目は「センス」です。
 
今井:センス……。
 
寺崎:そうなんですよ。「センス」って言うと、元々センスがある人、ない人って思うじゃないですか。
 
今井:もう生まれつきなんじゃないかっていう気持ちに。
 
森上:DNAレベルのね。
 
今井:DNAレベル(笑)。
 
寺崎:それはたぶん間違いなんですよ。センスとは知識であると。
 
今井:お!
 
寺崎:っていうのを学んだと言うか、確信に至ったのはアートディレクターの水野学さんという方が『センスは知識からはじまる』という本を出していて、これを読んだ時に「確かに!」と思ったんですよ。結局センスって、知っているかどうかだと思うんですよね。例えば、書体のことを知っていれば「どういう書体を使えばここでは美しく見えるか」とかもわかるし、それは知っているか、知っていないかだけ。というとこはありますよね?

森上:あります、あります。僕もこの本は読んでいるんですけど、やっぱり知識がなければ、センスの基になるモノがないから、ということですよね? だから、知識を得ることはセンスの源という考え方がすごく僕も共感しましたね、この本の中で。水野さんがどういう表現をしていたかっていうのはちょっと忘れちゃったけど、知識がないとセンスも出しようがないと言うか。
 
今井:確かに洋服選びとかも色の配色とかを知っている、知っていないだけで、センスのいい洋服の組み合わせができたり、できなかったりっていう。本当に知識があるかどうかっていうことが多い気がしますね。
 
寺崎:まさにそれで、VoicyでもパーソナリティをやられているMBさんっていう方がいらっしゃるんですけど、ファッションに詳しい方なんですけど、その方がこの前に言っていたのが、すごくファッションセンスがない人も1カ月ショップ店員やれば全員センスがよくなる、と。
 
今井:(笑)。
 
寺崎:なぜかって言うと、この色とこの色の組み合わせ、この形とこの形の組み合わせっていうのは、知識として学ぶからセンスがよくなるんですよ。
 
森上:だから、本の世界で言うと、例えば、デザインって一見センスの世界のように感じると思うんですけど、いろいろな本のデザインを意識的に書店でちゃんとリサーチしているかどうかって、誰でもできることなんですよね。生まれつきのセンスがあるとか関係なく、こういった方向性とか、こういう書体があるんだ、こういう表現があるんだとか、そういったモノを知っているか、知らないかだよね。知らないと、それが選択肢として挙がってこないもんね。
 
寺崎:デザイナーさんの中でも「あの人はすごい」っていうデザイナーさんがいるんですけど、その人は「欧文と書体の歴史」とかまで知識として入っているらしいんですよ。サンセリフ体とかゴシック体とかあるでしょ。そういうモノの歴史まで入っているから。
 
今井:深くデザインできそうですね。
 
寺崎:そうなんですよ。表現がめちゃくちゃ深くできあがってくる。それは結局、知っているからなんですよね、バックグラウンドを。
 
今井:いやー、知識大事ですね。
 
森上:だから、「センス=知識」は本当に納得いく。うん。
 
寺崎:これは、昨日冒頭で佐和ちゃんが言った「センスは鍛えられるのか?」という話ですけど、これは鍛えられます。センスは。
 
森上:絶対そうですよね。

企画力に必要なもの⑤ アウトプット――とにかく出す!

今井:はい。ありがとうございます。ここまで、昨日に引き続き「企画とはなんぞや」ということで、企画のために必要な要素が、その1「好奇心」、その2「自分なりの基準」、その3「感動する心」、その4「センス=知識、インプット」というところまできたのですが、続いて5つ目は何でしょうか?
 
寺崎:これはですね、インプットするだけだと、どんどん便秘状態になってくるので。
 
今井:便秘(笑)。
 
寺崎:そう (笑)。アウトプット!
 
今井:なるほど!
 
寺崎:出す! とにかく出す!
 
今井:出し方にコツというか、効果的な出し方ってあったりしますか?
 
森上:出すっていうのはどういうことかと言うと、一度形にしてみるっていうことですよね。例えば、企画書にしてみるとかね。「こういう企画をやってみよー」とかメモをしているとするじゃないですか。こんな人がいるとか。それがメモで終わるのではなく、1回企画書にしてみるってめちゃくちゃ大事で、企画書をつくった人は皆感じていると思うんですけど、企画書をつくってみると、いろいろな要素を思いついたりとか、切り口とかを含めてね。それをしないと、そのままずっと溜まっていっても、何にもないのと一緒ですからね。常にアウトプットするという意識は、絶対大事だよね。
 
寺崎:あと、企画書にしていくときに欠点も見えてきちゃったりするんだよね。最初にいいなと思っていても、よく考えたらこの部分が徹底的にボトルネックだな、とか。これ、絶対営業部に突っ込まれるなとかね。
 
今井:(笑)。
 
森上:つくっていて意外と最初思っていたよりもダメかも、とかも、結局、そのインプットはもしかしたら弾みだったかもしれないことがわかるわけじゃないですか。それがずっと便秘的に溜まっていたら、ずっとあるみたいになっちゃうので、そうなると、それって結局ないのと一緒なので、時々アウトプットする大切さってありますよね。
 
今井:ちなみに、企画を書かないお仕事をされている方もたくさんいらっしゃるかと思うんですけど、そういう人の場合は、人に話すとか、ネットに記事をアップするとか、そういう感じでも効果はあったりしますかね?
 
森上:SNSとかね。いっぱいありますからね。
 
寺崎:まあ、アウトプットは訓練なので。
 
今井:これも訓練なんですね。
 
寺崎:訓練で鍛えられますね。
 
森上:間違いなくそうですよね。アウトプットする訓練というか。やっぱり、アウトプットもインプットと同じく、習慣化したほうがいいですよね。そのほうが絶対自分にとってプラスになってくる。アウトプットするスキルというのも、ずっと続けていることで上がってくると言うか。
 
寺崎:めちゃくちゃ上がってくる。僕は編プロを除いて出版社に17年間、ほぼ毎月4本、企画書を出しているんですよ。計算すると、816本の企画書を書いているんですよ。
 
今井:すごいですね!!
 
森上:今日までで!?
 
寺崎:今日までで。
 
森上:そんなの、数えたことない(笑)
 
寺崎:最初の頃は、企画書って身構えちゃうけど、今は頭の中に考えているのを急いでいるときは、もう30分くらいで書けちゃうようになってきたので。
 
今井:えー! すごい! やっぱり鍛えられたからってことなんですかね?
 
寺崎:鍛えられた!
 
森上:やっぱりそれはありますよね。普段アウトプットとかに慣れていない人も、何か出してみると言うか、文字にしてみるとか、しゃべってみるとか、そういったことって絶対プラスになりますよね。
 
今井:これは、個人的な感覚なんですけど、先にアウトプット、こんな面白いことを誰かに伝えたいという気持ちを持ちながらインプットをすると、インプットがより入ってきやすい感覚があって、「絶対この本の中から面白いことを1つ、お母さんに教えてあげよう」みたいな気持ちで読むと、「なるほど、なるほど」みたいな感じで読んだりすることもあったりとか。
 
森上:それは大事だよね。インプットを習慣化したいんだったら、アウトプットを縛っちゃうのも、1つの手かもしれないですね。
 
今井:なるほど! 「毎朝ちゃんとトイレに行く、出なくても」みたいな(笑)。言い方ちょっとあれなんですけど……、すみません(笑)。
 
森上:わかりやすいところで言うと、そういうことです。「もう宣言しちゃったからには……」みたいな感じ。例えばTwitterとかで、「絶対〇〇を毎日つぶやきます」みたいに皆に宣言したとするじゃないですか。そしたら、それが縛りになりますもんね。だから、今編集部で毎日……。
 
今井:noteを書いていらっしゃいますもんね。
 
森上:そうなんですよ。あれはアウトプットの習慣だよね、編集部としては。(2020年)4月から始めて、毎日書いて、もう1年以上経ったのかな。あれはもう習慣化したので皆ストレスないんじゃないかな。5人で毎日なので。あれはいい習慣になったよね。
 
寺崎:そうですね。Voicyの配信も毎日やっていますしね。

企画力に必要なもの⑥ 思い込み――最後は「思い込み」

今井:はい。ということで「企画のために必要な要素」その5は、「アウトプット」でした。いよいよ「企画とはなんぞや」ということで、ここまで5つの要素をお伝えしてきましたが、最後の6つ目は何になりますか?
 
寺崎:6つ目は「思い込み」ですね。
 
今井:思い込み?
 
寺崎:企画した本人が思い込んでいる。
 
今井:確信みたいな感じですか?
 
寺崎:最初のアイデアレベルのときは迷いがあっていいと思うんですけど、もう企画書になって「通すぞ!」という段階では、やっぱり本人が思い込んでいないと弱くなっちゃいますよね。
 
今井:「ダメかも……」みたいな気持ちになってしまう。
 
寺崎:そうそう。企画している本人の自信がないと、まわりも「大丈夫?」ってなっちゃうので。
 
森上:ねー。そこだけはウソでもいいから、ちゃんと思い込んでほしいっていうくらいですよね。会議でたまにそういうことがあるんですよね。
 
今井:「やっぱりだめかも……」みたいな?
 
森上:あんまり自信なさそうで。「じゃあ、出さないでくれる?」っていう感じになってくる。
 
寺崎:「行っておく?」みたいな。「行っちゃっていいですか?」みたいな(笑)。
 
森上:「いや、行っちゃっていいかどうかじゃなくて!」って、言いたくなるときあるんですよね。
 
今井:(笑)。
 
森上:それはもう、企画者ご自身の中の想いをちゃんと聞かせてくれと言うかね、熱を。人に確認することじゃないと言うかね。
 
今井:「お前はどうなんだ!?」と。
 
森上:そう。当たり前だけど、(企画会議に参加する)メンバーの中で一番であってほしいですよね。「行ける!」という想いが。
 
今井:自分の企画ですもんね。
 
森上:そうなんですよ。だから、まわりに確認し始められちゃうと……。
 
今井:みんながいいと思ったら行こう、とかだとダメなんですね。
 
森上:そうですね。企画って、やっぱりそういうもんだと思いますね。一番自分が企画書に自信を持ってほしい。
 
寺崎:多数決じゃなくて、まわりが全員反対でも、本人は思い込んでほしいですね。
 
森上:そうなんですよね。何かを決めるとき、自分の意見を通すときって、企画に限らずそうですよね。やっぱり自分は何をいいと思っているのかとか、それはちゃんと出すべきですよね。
 
寺崎:たまにうちの最後の会議、社長とかいる経営会議で、本人がちょっとふらついていたら、「どうなんだ! おまえはやりたいのか!?」と。で、「うん、まあ……」みたいな。
 
今井:(笑)。
 
森上:「うん、まあ」じゃねえよ!っていう話ですよね(笑)。
 
寺崎:そういうこともあるんですよね。それじゃあ、あかんぞと。
 
今井:あかんぞと。
 
森上:それは、もうこの出席者の中で自分が一番売れると思うべきだし、そうじゃないモノはやっぱり企画としてダメだと思いますね。
 
今井:6つ目の「思い込み」。これって、1~5までの総合な感じがします。感動して、好奇心を持って、自分なりの基準でいいと思って、知識で集めた中での確信、思い込みって感じがなんとなくしました。
 
森上: なるほど。そうですね。我々の企画がアウトプットされるモノって、本なので、企画会議って口頭でプレゼンできたりとかするじゃないですか。でも、本になると、感動も含めて、文字だけで伝えないといけないので、そこが一番難しいところであり、おもしろいところっていうのはありますよね。文字の世界だけで、全部伝えなきゃいけないので。
 
今井:感動を文字にするときに気を付けていることって何かありますか?
 
森上:また難しい質問ですね。
 
今井:すみません(笑)。
 
森上:寺崎さん、何かありますか?
 
寺崎:押し付けがましくないように、ですかね。
 
森上:共感を得られるような。まず上から目線というのは、絶対あり得ないですよね。押しつけがましい言い回しとかっていうのは。それって特別な本じゃない限り、本文、カバーのデザイン、タイトル、帯含めてそうですよね。そこは絶対意識しますよね。押しつけがましくはしないっていうような。
 
寺崎:企画者の感動を伝えるのは、難しいかもしれないですね。それを読者のメリットになるように変換しないといけない気がしますね。
 
今井: 昨日おっしゃっていた、役に立つアイデアみたいなところに感動を変換していくという感じなんですかね?
 
寺崎:そうですね。でないと、「感動します!」じゃ買ってくれないですからね(笑)。
 
森上:文字面だけじゃね(笑)。
 
今井:エモいだけじゃだめだということですね。「!」をたくさんつけたところでダメだと(笑)。
 
森上:そうそうそう(笑)。
 
寺崎:最近は「全米が感動」とかもあまり使わないですもんね。
 
森上:そうですねー。だから、帯の推薦文ってあるじゃないですか。あれは第三者の共感っていうのが、客観データと言うかね。そういう意味では、感動が伝わりやすいかもしれないですね。
 
寺崎:作者がそれを言っちゃおしまいなんだよな。
 
森上:本人が言っちゃダメ。
 
今井:まわりに立ててもらわないと、ってことですね。
 
森上:著者本人と企画者が言っちゃダメですね。第三者じゃないと。
 
今井:なるほど。ありがとうございます。昨日に引き続き「企画とはなんぞや」というところで最後のまとめなんですけども、企画のために必要な要素、その1「好奇心」、その2「自分なりの基準」、その3「感動する心」、その4「センス(知識)」、その5「アウトプット」、その6が「思い込み」でした。
本日はありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

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