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『リトルキャプテン』 ③ 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜

 最後の客が店を出ると、メアリーは今日の売上げを数え始めた。ブラーニーカフェの店内は少し変わった作りをしていた。入り口のドアを開けると、部屋の中央に大きな円形のカウンターがあるだけ。店主のメアリーはいつもその中心で働いていた。カウンターしかない店なので、アルバイトを雇う必要もなかった。「チリン・・」入り口のドアが開くのと同時に鈴の音が鳴った。「申し訳ございませんお客様、本日はもう閉店いたしました」メアリーは店に入ってきた男に優しい口調で話しかけた。だがすぐに男の様子がおかしいことに気付いた。雨で全身がずぶ濡れなのはともかく、目つきがおかしかった。そして男は何も喋らずに、胸の内ポケットからゆっくりとナイフを取り出した。

 「金を出せ」やっと男が口を開いた。閉店間際の強盗だとメアリーはすぐに悟った。ナイフを持った男の右手は少し震えている。「早くしろ!」男の声が大きくなった。「わかりました」メアリーはそう言うと、レジのお金を全て袋に入れて渡した。「よし」男はメアリーから目をそらさずに入り口まで後ずさった。「待ってください」メアリーは男を呼び止めた。「これも持っていってください」メアリーは薬指からダイヤの指輪を外して男へほうった。指輪をキャッチした男は訳が解らず唖然とした。「亡くなった夫から以前もらった物です。良い値段で売れると思います」メアリーがそう言うと男の表情が一瞬変化したが、すぐに店を飛び出して逃げていった。




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