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『リトルキャプテン』 ⑨ 〜ちっぽけな僕の壮大なストーリー〜

 翌日、学校の授業を終えたジョーイはいつも通り家に向かって歩いていた。何回も歩いている通学路が、この時ジョーイにはとても新鮮に感じられた。理由は解らないが、まるで知らない国の知らない道を歩いているかのような気分だった。家までの道のりを半分くらい歩き終えた頃、後ろからクラクションの音が聞こえた。ジョーイが振り返ると、自分に向かって手を振っている男性を発見した。「億万長者の紳士」バトンだった。

 バトンはグリーンのバラクーダ(*車の名前)をジョーイの真横に止めた。「まさかこんなところでばったり会うとは思わなかったよ」バトンは車の窓を開けて運転席からジョーイに話しかけた。そして間髪入れずに「乗ってく?」と言ってきた。ジョーイも二つ返事で「お願いします!」と言って車に乗り込んだ。車が動き出すと二人は何気ない会話から始めた。ジョーイの学校の話、家族の話、だがバトンが次の質問をした時二人の会話が一瞬途切れた。「ジョーイ君の好きな事は何?」ジョーイは黙ってしまった。答えることができなかった。「何も持っていない自分」と言うフレーズが頭をよぎったからだ。そしてジョーイは、「いつから僕はこんなつまらない人間になったんだろう?」とだんだん否定的な気持ちになっていった。





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