森中遊助

幼い頃から山や川が遊び場で、気づけば森のことを学ぶ大学に入学していた。在学中の6年間に…

森中遊助

幼い頃から山や川が遊び場で、気づけば森のことを学ぶ大学に入学していた。在学中の6年間に各地の山や森へ出かけ、そこにある植物を片っ端から記録しながら森を見、知り、そして考えてきたつもりである。数年前からはその魅力を文章などで表現したく思い、試行錯誤を重ねている。

最近の記事

かつての里山に暮らす動植物 その3 草~小さくても印象的~

 さて、もう少したつと咲きはじめるかな、スイカズラ。そこらの道端にもある”雑草”と呼ばれるようなツル植物だが、花は意外と印象的な姿。香りも独特でいいものです。  写真ではややわかりにくいかもしれませんが、同じ個体になぜか黄色と白の花が咲き、”キン(黄)ギン(白)ボク(木)なんて”なんて呼ばれます。どうして2色になるのかは知りませんが・・。 独特の芳香がし、印象的な姿なので、大型のチョウやガを引き寄せるのでしょう。  こちらは山でなくてもよく見かけるスイバ。畑なんかにある

    • かつての里山に暮らす動植物 その3 草~多彩な草花~

       さて、山でこうした赤い実をよく見るかもしれないが、その実ができるための花に注目したことはあまりないのではないだろうか。上の赤い実はサルトリイバラというツル植物の実だが、この実がなるための花はというと、 こんな感じ。 早春に咲き、よく見ないと花が咲いているとは気がつかないので、この花を見たことがある人は山好きか植物好きではなかろうか。とにかく、こんな花のあとにあんな真っ赤な実がなるとはなかなか想像できない。  一方、こちらは盗掘の対象にもなってしまうシュンラン。名前のと

      • かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~やっぱり花はいい~

         ん~まあ、なんとも愛らしいゲンノショウコの花。  かつての里山というより、くさっぱらや道端のような日当たりのいい場所に生えているのですが、なんせ最近はくさっぱらも少なくなって、さらにそんな場所には帰化植物たちがはびこるようになったので、この花を見ることも少ないかもしれません。  名前の由来は「現の証拠」。下痢止めとして服用すれば、たちまちに効果が現れるから、ということ(試したことはありませんが)。  花が終わるとこんなさやができ、 はじけてなかのタネが飛び出すとこん

        • かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~色も形もさまざま~

           このマガジンの記事がひどく滞ってしまったが、性懲りもなく続けていきたいと思います。 上はかなり時季が過ぎてしまったが早春の花、キランソウ。森の地面に咲いている。別名、どういうわけか”ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)”。古くから乾燥したものを煎じたり、生葉をそのまま薬として用いたようで、鎮咳、去痰、抗菌などの作用があるらしく、地獄の釜に落ちる(死んでしまう)のに蓋をした(防いだ)という意味だろうか。  独特の印象的な形をした花を咲かせる。シソ科。  上はキンミズヒキ。

        かつての里山に暮らす動植物 その3 草~小さくても印象的~

        マガジン

        • かつての里山に生きる動植物 草
          9本
        • 静岡・水窪の山、そして森
          25本
        • 一見、森にまつわらないあれこれ
          5本
        • かつての里山に生きる動植物 樹木
          19本
        • 森にまつわるあれこれ
          9本
        • かつての里山に生きる動植物 キノコ
          1本

        記事

          春の水窪・森歩き その2      ~登頂よりも花よりも~

           (その1からの続き)  さて、しかしながら、だんだんと草木の花が見当たらなくなってきた。そもそも地面の草は増えたシカにかなり食べられてしまっているようだし、ヤシオやドウダンといったツツジの仲間の花には少し時季が早かったようだ。そして、メマトイがいよいよ耐えがたくなってきた。この調子ではおちおち座って弁当も食べられない。早めに引き返し、メマトイが寄ってこない車のなかで昼飯にするか、なんて考えが頭をよぎる。標高はまだ1300メートルあたり。1685メートルの麻布山山頂上ははるか

          春の水窪・森歩き その2      ~登頂よりも花よりも~

          春の水窪、森歩き その1          ~新緑の麻布山へ~

           さて、巷は春真っ盛り。ということは、奥の森はいよいよ春を迎えている頃だな、ということで、ゴールデンウィークのはじまりは4月29日、浜松の最北、信州との県境にある水窪(みさくぼ)の山へと向かった。  前日に降った雨を吸い、晴れ渡った空に新緑の山々はとても美しかった。美しすぎて思わず車を停め、車道に出て写真を撮ってしまう。この日、向かったのは標高1685メートルの麻布山(あざぶやま)。数年前に登ったきり、しばらく訪れていなかった山だ。登山口から山頂までそこそこの標高差があり、

          春の水窪、森歩き その1          ~新緑の麻布山へ~

          川本三郎著『マイ・バック・ページ』を読んで考える

           今回はほとんど森のこととは関係がない、”一見、森にまつわらない”記事シリーズ。川本三郎著『マイ・バック・ページ』(平凡社刊)を読む。  タイトルはあのボブ・デュランの曲の名で、好きなジャズピアニスト、キースジャレットもカバーした。映画化もされており、じつは映画を先に観たのだが、1970年前後の学生運動とそれを追う一人のジャーナリストの話である。作者は、こちらも好きな映画評論家、川本三郎さん。  まだ生まれるか生まれていないかの1970年前後の学生運動に、シンパシーや関心

          川本三郎著『マイ・バック・ページ』を読んで考える

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~植物にとっての花、人にとっての花~

           さてさて、やはり草の種類は木に比べると圧倒的に多い。それだけ、さまざまな微地形・微環境に適応しようと分化を続けてきた結果だろう。上はオトコエシ。秋の七草にオミナエシというのがあるが、オミナ(女)に対し、こちらがオトコ(男)。全体的な姿や花の形はよく似ているが、花の色はオミナが黄。また、昔の人がこう認識していたかどうかはわからないが、オミナは繊細で、いま、各地でその数を減らしているのに対し、オトコは図太いのかそれほど減っていない。 林の縁のような日当たりのいい場所で群生する

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~植物にとっての花、人にとっての花~

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~花の魅力は~

           さて、かつての里山に生える草編の続き。上はなんとも奇怪な姿の花、オオバウマノスズクサ(ツル植物)。模様もなんだかおどろおどろしいが、形も草の花とは思えない。 横から見るとこんな。  その模様や形からして、ハエのようなものを引き寄せ、奥のほうになにかお目当てのものが隠されているのではないのだろうかと思い、調べてみると、やはり小型のハエがやって来て中にある雄しべの花粉を食べるよう。ただ、花には雌性期と雄性期とがあり、雌性期(雌しべのみが成熟している)には筒の中の毛が立っており

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~花の魅力は~

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~生き方だってさまざま~

           さて、かつての里山に暮らす動植物・草編の続き。上は食べたことはあるかもしれないけれど、生えているところは見たことがないのじゃないかな、と思われる草、ウド。酢味噌であえたウドはほんとうににおいしいですよね。わたしの好物のひとつ。意外にもこうした町の近くのかつての里山に生えています。ただ、生えている土が深くて柔らかくないと、肝心の食べる部分が少ないのですけどね。  花はぼんぼりのようになっており、独特。よく見ると小さな花が集まってできているのがわかります。中・低木のカクレミノ

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~生き方だってさまざま~

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~多様で多彩なものたち~

           さて、かつての里山に生える植物・草編の続きです。上はアキノキリンソウ。名前もいいけど、秋になると森の林床に点々と可憐に咲いている姿が好きです。けっしてセイタカアワダチソウのように”群落”になって咲かないところがなにか好み。群落になって咲くのも壮観でいいのだけれど、野に点々と咲いていると、何度も出会いがあって楽しいです。  こちら、ぜんぜんピントが合っていないのだけれどイチヤクソウ。この草は点々どころか稀にしか生えていないので、その出会いは心揺さぶられたものです。存在感のあ

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~多様で多彩なものたち~

          スギ花粉症について考える

          今年もこの季節がやって来た  スギ花粉症がひどい。振り返れば、小学生の頃(いまから40年ほど前)からこの症状に悩まされているので、いまあらためてどうということではないのだが、今年は(も)ひどい。  そんなわけで、スギの生える森には近寄りたくもなかったのに、大学はなぜか農学部の森林科学科というところに入ってしまった。まあこの時点で、花粉症と森のこととは別問題、と考えていたわけであるが、この国の森のことを知っていくなかで、花粉症についても考えざるを得なくなった。なぜ、自分も含

          スギ花粉症について考える

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~草のもつ力~

           さて、これまでかつての里山に生きる動植物について、キノコ、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、昆虫、樹木などのことを書いてきた。しかし、どうして自分はこんなことを書いているのだろうかと、ふと考えてしまうことがある。書きたいことがあるから書いている、といえばそれまでなのだが、ではどうして書きたいのか、そして、どうしてその書いたものを他人になど見せたりするのだろう。そんなことを思ったりしてしまうわけです。  自分が感じた(良かった、悪かった、おいしかった、まずかった、面白かった等々

          かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~草のもつ力~

          かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~森の変化を物語る低木~

           さて、紹介するかつての里山に生える低木も、いよいよ残り少なくなってきた。実際にはもっと多くの低木類が生えているのだが、わたしの写真の持ち合わせがもうない、ということで・・。 上はそんな低木の代表といってもいい、ツツジの仲間のヤマツツジ。よく似たサツキという低木が街の歩道沿いなんかに植えられているのを見たことがあると思いますが、それとほぼ同じくらいの大きさで高さはせいぜい1メートルほどの典型的な低木(ちなみにサツキもツツジの仲間)。林の”なか”にあってもたくさんの葉を広げ、

          かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~森の変化を物語る低木~

          かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~種類豊富な低木たち~

           前回は、なぜ低木は低木のままなのか、といったようなことを最後に少し書いた。そして、それには理由があると考えられるのだが、まあ、そんなことをわざわざ気にしなくとも、林や森にある草木をそれがどういったタイプのものなのか(低木なのか高木なのか、陽当たりのいい場所を好んで生えるのか日影がいいのか等々)、という視点で見ていくことはなかなかオモシロイと思います。  さて、そんなかつての里山に生える低木を続けて見ていきます。上の桃色の花が咲いているのはヤブウツギ。高さは2~3メートルほ

          かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~種類豊富な低木たち~

          かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~小さいままで生き続ける~

          さて、今回もかつての里山に生える低木の続き。上はマンリョウという木。高さはせいぜい1メートル。深い緑色をした葉に真っ赤な実を付け、”二色効果”で鳥の目を惹きます。名前が名前だけに庭木にしたり、飾り物に使われたり。寒い冬の森のなかで実をつけているので、冬眠をしない鳥たちの貴重なエサになるようです。  ちなみにセンリョウという植物もあり、ヒャクリョウ、ジュウリョウもあります(イチリョウもあったか‥?)。センリョウというのは実際にセンリョウという低木があるのですが、ヒャクリョ

          かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~小さいままで生き続ける~