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かつての里山に暮らす動植物 その3 草 ~色も形もさまざま~

 このマガジンの記事がひどく滞ってしまったが、性懲りもなく続けていきたいと思います。

上はかなり時季が過ぎてしまったが早春の花、キランソウ。森の地面に咲いている。別名、どういうわけか”ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)”。古くから乾燥したものを煎じたり、生葉をそのまま薬として用いたようで、鎮咳、去痰、抗菌などの作用があるらしく、地獄の釜に落ちる(死んでしまう)のに蓋をした(防いだ)という意味だろうか。

 独特の印象的な形をした花を咲かせる。シソ科。

 上はキンミズヒキ。すっと長く伸びた花茎があの「水引き」を連想させ、さらには花の色がキン(黄)だからこの名前。

こんなに花が小さくてもバラ科です。日当たりのいい森の切れ目にもあるけれど、木漏れ日の差すような森のなかでも見かけます。

葉っぱがこうして、大、小、大、小と付くのが特徴だよ、と大学時代の先輩から教わった。上手く教えてくれたものです。30年近くたったいまでも覚えているからね。

 タネはこんな。”くっつき虫”なんて呼ばれるものの一つ。

 こちらもバラ科のクサイチゴ。早春の森の切れ目で鮮やかで目立つ、純白の大きな花を咲かせます。

これだけ目立ち、存在感もあるので、クマバチなどの大型のマルハナバチたちが一斉に集まります。

”森の宝石”と言ってもいい、じつに大きくて色鮮やかな、そしてとっても甘い実をつけます。

熟した実に出会うと、もう手が止まりません。次から次へとつまんでしまいます。人間でさえ、こんなに好むのだから、野生動物たちもさぞかし好きに違いない(でも、動物たちがこの実を食べている現場に遭遇したことは一度もない。夜行性の動物たちが食べているのか?)。

 最後は”クズ”。色もなんだか独特だし、存在感のある大きな房となって花が咲きます。森の切れ目や木が倒れたり、伐られたりして日当たりのよくなった空き地(専門的には”ギャップ地”という)に生える先駆性植物(パイオニアプランツ)。クズが生え、適度な木陰ができたことで次の植物たちが芽生え、育つことができるわけです。

 昔はこの根を乾燥させてトロミのつく葛粉(くずこ)を採ったり、ツル植物なので長く伸びたツルから繊維を取り出し、織って布(葛布)にもしたそう。いまではアメリカなんかになにかの都合でタネが運ばれ、やはり日当たりのいい空き地のような場所で増えてしまって困っているのだそう。我が国の植物が”帰化植物”となってほかの地域を困らせてしまっていることもあるのですね。

 かつての里山にはいま、こんなにも色や形のさまざまな草たちが生き、ぼくたちの目を楽しませてくれます。


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