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【探究学習編⑥】探究学習の教材や核となるコンテンツ

みなさん、こんにちは。
一般社団法人Foraの藤村です。

今回は、探究学習において核となるコンテンツについて考えていきたいと思います。

前回の第4回目で、探究学習を通して得てほしい資質・能力・態度について考えました。今回は、それをより具体化した話になります。理念的な話を、実際のカリキュラムに落とし、授業にして生徒に届ける際に、どんな授業やコンテンツを伝えることが大切なのかについてです。すべてを紹介するのは難しいため、今回は、特に課題設定の部分に焦点を当てて解説します。

興味関心を「深める」インプット

まず、探究学習では、自分自身で課題を設定します。その際に、問いや課題が漠然として広すぎることが、しばしば問題となります。例えば、「テニスがうまくなるための方法」や「音楽と睡眠の関係について」だと、問いの方向性はありますが、具体的に何を明らかにしたいのかが不明確です。このまま探究学習を進めると、単に調べ学習に終わってしまうことが懸念されます。しかも、テーマが広すぎるので、1年間では調べることも十分にできないまま終わってしまう可能性もあります。そこで、「どんな問い」を「どうやって」絞ったらよいかを、生徒自身がまず理解することが大切です。今回は例として、テニスがうまくなるための方法を考えてみましょう。まずは、すでに明らかにされた先行研究を活用して、自分自身の問いの範囲を分解します。

探究学習コンテンツ 2020年度

例えば、テニスと言っても、サーブやボレー、フットワークなど様々な要素が関わっています。それにサーブと言っても、フラットサーブ、スライスサーブ、スピンサーブと種類があります。このように、自分自身が興味関心がある領域について、まずは詳しく調べてみることで、テーマや問いの解像度を高めることが大切です。そうすることで、問いを具体的にしていきます。

興味関心を「広げる」インプット

先生方から見れば、生徒自身が探究学習の課題を設定するため、視野の狭いと感じる場合も少なくないかもしれません。

そこで大切になるのは、
①社会には様々な領域があることの理解
②一つの物事でも様々な角度から多様に捉えること
この2つの方向性です。

①については、SDGsなどで社会の様々な課題について理解を促している学校もあると思います。あるいは、生徒との面談で、生徒自身が気付いていないことを先生が指摘することもあると思います。そのような領域の理解が大切です。こちらについては様々な学校でやっていると思いますが、単に一方的に知識を得るだけだと、生徒が動機付けを失ってしまい、受け身になります。自分自身の探究をより良くするために、インプットが必要だと認識を持ってもらうことが大切です。


②一つの物事でも様々な角度から多様に捉えることについては、やや見落としがちなので詳しく説明いたします。

探究学習コンテンツ 2020年度

例えば、「高校生」と一言に言っても、様々な学問から様々な見方ができます。より深く探究学習を行う場合には、こちらもまた有効です。いまの自分の見方が、どんな観点から、どんな立脚点に立って行っているのかを理解することは生徒にとって有効です。ここで自分の問題関心が学問でどのように語られているかを知ることで、その後の調べ学習も進めやすくなります。

テーマを解く際の要因を理解する

あらゆる物事には、原因と結果があります。原因は一つではなく、様々な要因が有機的に組み合わさっているのがほとんどです。そのため、それらの要因を一つ一つ解きほぐすことが大切です。そのため、その要因を調べながら、推測しながら整理します。様々な要因を「要因図」としてまとめることで、その中から本当に解くべき問いがどれなのかを考えていきます。テーマが広い場合や手を付けられない場合には、この要因分析が足りていないことが多いです。そこの指導をすることで、生徒が自分自身の考えを整理することが大切です。

帰納法と演繹法

ここまでの内容を自分で考えたり、自分で整理するうえで、基本的な力となるのは、帰納法と演繹法(抽象と具体)の考え方です。ここが大きな基礎となるので、最後に解説いたします。
帰納法と演繹法については、下記の図のように、まとめています。

探究_渉外用資料

例えば、動物と犬を比較すれば、動物が抽象的で犬がその具体的な例です。しかし、抽象と具体は相対的なので、犬と日本犬を比較すれば、犬は抽象的です。このように、抽象的と具体的なことを理解することができると、ここまでの1~3段落を考えるうえでも、進みやすくなります。
しかし、抽象化には一つ注意点があります。それは、一言で抽象化やグルーピングをすると言っても、その仕方は様々にあるということです。例えば、自動販売機で売られている商品のグルーピングをしてみましょう。

探究_渉外用資料

例えば、ペットボトルとビンで区分けすることができますし、炭酸があるものとないもの、あるいは、100円以上か100円未満と分けることもできます。どれも抽象化してグルーピングしていることに変わりはないのですが、グルーピングの仕方が全然異なります。このように抽象化すること自体が難しい作業です。
そのため、目的に合わせて抽象化したり、具体化したりとセットにして考えることが重要ですし、そのためのトレーニングを探究学習を通して行うことが大切だと思います。


いかがでしたでしょうか?
今回は、課題設定に関わる一部の解説を行いました。私たちが無意識的に身に着け、普段行っている推論方法を、いかにかみ砕きながら生徒に伝えていけるかが探究学習のコンテンツ開発で大切だと感じて頂ければ幸いです。
次回は、探究学習の評価について考えていきたいと思います。


これまでの連載はこちら

連載「生徒の学び続ける意欲と能力を育む探究学習を実施するには」
①2020年から始まる探究学習って実際どんなことするの?
②探究学習を導入する社会的背景とは(前編)
③探究学習を導入する社会的背景とは(後編)
④探究学習の通して、生徒にどんな資質・能力・態度を育んでほしいのか
⑤数年を見越した探究学習のカリキュラムについて 
⑥探究学習の教材や核となるコンテンツ ←今回
⑦探究学習での教員の関わり方
⑧探究学習の評価方法

ここまでご覧くださり、ありがとうございました。

以下、学校関係者の方へ、Foraのご紹介です
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