伝説の店長が伝説になった理由を理論的に解説します
前回まではSさんのエピソードとともに、エンゲージメントの高いチームと、そのリーダーの事例について理解を深めていきました。
今日は事例の中で何が起こっていたのかをフレームでわかりやすく解説します。自分のチームの雰囲気を明るくして、かつ成果にもこだわりたい方には非常に役立つ情報だと思います。
ご自身の経験とも照らし合わせてご覧頂けると、きっと共感できることがあると思います!
エンゲージメントの5Cとは
さて、まずエンゲージメントが高いチームに共通する5つのC、通称【5C】についてお伝えします。
こちらはクリフトン・ストレングス(ストレングス・ファインダー)や、エンゲージメントを測定する尺度で最も有名なQ12を開発したエンゲージメント研究の大家、ギャラップが提唱する好業績チームの【5C】になります。
①コモンパーパス
メンバーが共通のゴールを明確に持っている状態。
②コネクション
メンバーがコモンパーパスに共感してつながっている状態。共通のゴールを「知ってる」だけではダメで、そのゴールを目指すことに共感や納得がある状態
③コミュニケーション
ゴールに対して意見を率直に言い合える状態。話しにくいこと、例えば(建設的な)相手への批判やプレッシャー、ミスの報告なども含めてゴールに役立つことを言い合えるかどうかが大事。単に仲がいいということではない。
④コラボレーション
自分自身が仕事の中で日常的に強みを活かせているという感覚。目標に対して必要な役割を分担し、リソースを共有できている状態。
⑤セレブレーション
個人の強みや成長、パフォーマンスや人格などに注目し、称賛しあえるカルチャーがチームにある状態。
以上の5つの項目を英語にすると、頭文字がすべて「C」なので【5C】と呼ばれます。
5CをSさんの事例で解説してみると…
Sさんの事例で解説してみます。(Sさんの事例はこちら。理解が深まる好事例なので是非ご一読下さい。)
コミュニケーションから店は元気を取り戻した
赴任して一番最初にSさんがしたことは、「どんな時が楽しい?」と部下に聞き続けることです。
諦めないSさんに引きづられ、最初は怪訝な顔や面倒くさそう対応していたスタッフも、次第に「帳票がピタッと合うと楽しい」「スカーフをおしゃれに巻けた時が楽しい」と、小さな声がこぼれ始めました。
これは【5C】の【③コミュニケーション】の部分ですね。
「何が楽しい?」にはその人の価値観が隠れています。楽しいを通じて一人人の価値観を知り、話し合える雰囲気を作るところからSさんははじめました。
コラボレーションで得意を活かす
その後、「帳票がピタッと合うのがたまらない彼」には”在庫管理”、「スカーフの巻き方にこだわりのある彼女」には”身だしなみ”、など
一人一人に適した独自の役割を作り出し、好きなことと役割・タスクをフィットさせていきました。これは【④コラボレーション】に当たります。
セレブレーションで活性化
そして、Sさんは生来褒め上手な方で、人を「ちょうどいいオーバーリアクション」で褒める天才でもあります。お店の朝礼を使って、好きなことや得意なことをみんなで褒めあえるムードやお互いに笑顔で突っ込める雰囲気をうまく作っていたそうです。【⑤セレブレーション】ですね。
キャンペーンをコモンパーパス&コネクションに
次にやってきたのはキャンペーンです。スタッフが自発的に参加しようと決め、工夫を凝らしてヒートアップしたこのキャンペーンは、偶発的にこのお店に【①コモンパーパス】かつ【②コネクション】の要素を持たらしました。
実際、このキャンペーンを大きなきっかけとして、チームの熱は加速し、単に楽しいだけのチームから「勝利を渇望するチーム」へと変貌を遂げました。
このように見てみると、Sさんの事例は【5C】を満たした結果、スタッフのエンゲージメントが上がり、顧客に熱が伝わることで顧客のエンゲージメントも上がり、想像を超えた好業績を叩き出した典型的な事例の一つであるといえるのではないでしょうか。
【5C】と8つの質問
そして、この【5C】は、以前にご紹介したエンゲージメントを測る8つの質問(私は【Q8】と呼んでいますので以下Q8)と非常によく似ています。
とても似ていませんか??
【5C】と【Q8】を整理すると、こんな関係といえそうです。
2つの研究は大被り??
これを見ると、【5C】の各項目の詳細をQ8が補完し、同じような概念を少し違う表現で表しているだけで、基本的にこの2つの研究から導き出された結果は、同じことを表現しているように見えませんか?
学者や専門家が厳密さを重視すると、細かいところでは違いがあるといわれるのかもしれませんが、現場で実践する人間にとっては些細なことにこだわりすぎる必要はありません。
むしろ違う企業が違うアプローチでエンゲージメントが高いチームについて調査した結果が、こんなに共通してるということに着目し、共通している部分を自分のチームにどう取り入れるかの方が大事です。細かい定義などは専門家に任せればいいのですから。
自分の過去の体験と照らし合わせて理解を深めてみる
今回はSさんの事例と【5C】を照らし合わせてみましたが、実際、みなさんご自身が所属した過去の良かったチーム体験と照らし合わせると、いかがでしょう??
過去、所属した最高のチームには【5C】の要素があったのではありませんか?不満を感じたチームには【5C】の要素がなかったのではありませんか?是非考えてみて、ご自身の体験と紐づけて理解を深めてみて下さい。
私自身、過去に一部上場、中小、スタートアップと、フェーズの違う企業での管理職経験が14年間ほどあるのですが、自分の体験経験と重なるところがあり、かなり体感覚で深い納得や気づきがありました。
今のチームの【5C】は??
そして、今まさにあなたが所属するチームはどうでしょうか??興味がある方は上記のQ8に10点満点で点数をつけてみてください。
そして足りない要素があれば、もし今のチームに【5C】の要素が満ちていれば、あなたやチームメンバーのの不満やストレス、パフォーマンスやKPI、ひいてはチームが会社に与える影響にどんな変化がありそうか、想像してみると良いですね。
もし【5C】が、この要素がチームに満ちていたらどんな変化がありそうか、を想像すれば、仕事の楽しさやパフォーマンスに良い影響がありそうな、良いイメージが持てるのではないかと思います。
こういったツールは、自分自身に利用すると、チームに関する自分の課題感を整理できますし、メンバーに使うとチームに対する課題やストレスに関して、率直な意見や本音を簡単に収集することができますので是非活用して見て下さいね。
チームリーダーだけがエンゲージメントを変えられる
先のブログでは、エンゲージメントは売上、営業利益や離職率、株価などのビジネスKPIに相関がある「第三の競争力」ということをお伝えしました。
そしてメンバーのエンゲージメントは会社環境より、チーム環境に大きな影響を受けることもお伝えしました。そしてチーム環境に一番影響を与える要素は「チームリーダー」であるということもお伝えしました。
つまり、もうお気づきかもしれませんが、エンゲージメントに一番大きな影響を与えるのは誰か、「チームリーダー」なのです。
以上を踏まえて、チームリーダーができること、メンバーに影響を与えられるポイントを整理します。
チームリーダー次第でチームは変わります。
無力なチームリーダーの恐ろしい力
例え、現場の責任者には、商品の選定や、改変、広告宣伝やマーケティング戦略などの権限がなく、制約だらけの状況だとしても、リーダーがチームを変えることができるのです。
え、めっちゃ疑っちゃうわ、、、そんな力はチームリーダーにないに決まってるやん、という方、
現にSさんがいたAUショップでは、現場の店長に商品も広告も変更する権限などありませんでした。
多すぎる制約の中で変えられることの少なさに絶望し、モチベーションを保てないリーダーもいると思います。私自身もそんな経験をしたことがあるのでよくわかります。
エンゲージメント イズ ラスト フロンティア
でも多くのリーダーに信じてもらいたいのですが、
チームマネジメントやエンゲージメントの分野は、チームリーダーが、会社よりも経営者よりも他の誰よりも大きな影響を発揮でき、誰にも侵すことのできない、最後のフロンティアであるということです。
そしてそれはあなたの将来のキャリアのような長い時間軸にも影響を与えるポテンシャルを秘めた領域かもしれません。
さあ、次回からはこの5Cとリーダーの役割について、もう少し詳しく解説していきます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?