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本好きの私でも読了に2カ月かかった!『ロマンシエ』【読書感想】

原田マハは私の大好きな小説家だ。熱狂的なファンというわけではないけど、彼女の新しい本を本屋で見つけたら(もちろん文庫本!)、とりあえず手に取ってみる。ブクログで『ロマンシエ』を見つけたときから、ずっとずっと読みたかった。そして、本屋で買ったのは、2月あるいは3月だっただろう。

でも、読了したのは昨日。『ロマンシエ』を読了するというのが、GWの私のTo Doリストにも載っていたほどだ。

同じく原田マハ作品が好きな母にも「『ロマンシエ』読んでみた?」と聞いていたのだが、返ってくる答えは「ん…読んだけど」。『楽園のカンヴァス』を私に勧めてくれて、私が原田マハ作品が好きになるきっかけを作ってくれた母。そんな母がそういうのだから、きっと期待はずれな作品なのだろう―なんとなくそう感じていた。

行きつく先が見えなかった


私が『ロマンシエ』をなかなか読み進めることができなかったのは、この本の最後が想像できなかったからだ。「結末がわかる」と言っているのではない。結末がどうであれ、おそらく主人公が何かをやり終えたときに終わるのだろうな、主人公が新しい一歩を踏み出すところで終わるのだろうな、そんな、なんとなくの予感だ。

美大のダメダメ男子の日常が描かれ、卒業制作が評価されてパリに行く。でも、こんな子がパリに行って何ができるのだろうか。どんな騒ぎを起こすのだろうか。主人公が美大生ということもあり、きっと何かを成し遂げて終わるのだろうなと、予想はしていた。でも、この一冊の間にこんなダメダメな子がそこまで成長するのだろうか、と無意識に思っていたのかもしれない。

『ランウェイ・ビート』と『楽園のカンヴァス』は両立しない

『ロマンシエ』は『ランウェイ・ビート』のような学園ドラマのような勢いがある。若さ溢れるというのだろうか。いろんな仲間ができて、その仲間と一緒に過ごして、目標ができて、成長して。テンポよく楽しく話が進む感じ。何かハプニングがあっても、きっと乗り越えられると読者に思わせるような勢いのある感じ。そういうはじける雰囲気が『ロマンシエ』にはある。それは何より、主人公が美大生で若いからだらだと私は思う。

一方で、『楽園のカンヴァス』のような落ち着いた雰囲気もある。リトグラフの工房が話の中に出てきて、それは「わぁーすごい!」声に出す感動ではなく、静かに心の中がキラキラと輝く感動だ。美術館に行って、「わーこの作品すごいね」と大声で会話をする人はいないだろう。心に響く美術を見つけたら、その作品の前で立ち止まり、一緒に時間を過ごし、鑑賞するのだ。そんなおっとりとした、どこか日常離れをした要素もこの作品にはあった。

しかし、私はこの二つは相いれないと思う。あふれ出すエネルギーで突っ走っていくのに、急に落ち着いた場面が登場して、その勢いを止めてしまう。読んでいる方は混乱するのだ。

どうやら、これは画学生と小説家のラブストーリらしい。私は最後までそれに気づかなかった。もしかしたら、読み手のスキルが求められる作品なのかもしれない。

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