【考察日記】日本人は『集団主義』ではなく『個人主義』だった⁉️ ステレオタイプが世界を不幸にする。
突然ですが、
あなたは『沈没船ジョーク』なる
エスニックジョークを
ご存知でしょうか？
世界各国の人々が乗った
豪華客船が沈没しかかっています。
しかし脱出ボートの数が足りてません。
そこで船長は、
乗客を海に飛び込ませようと
各国の人に言葉を放ちました。
その言葉とは何でしょう？
まずアメリカ人に船長は…
次にイタリア人には
フランス人には
そして日本人には…
これは、
「欧米人は個人主義で
日本人は集団主義」
という日本人＝集団主義説に
基づいたジョークです。
どうも世界から見ると
「日本人は集団主義だ」
と認識しているようです。
「日本人は個性がない」
「自分の意見を集団の意見に合わせる」
などと思われがち。
また私たち日本人も
「日本人は集団主義だから」
と日本で起こった
社会現象を説明するときの
引き合いに出します。
最近ではコロナ禍での
マスク着用もそうでしたよね。
「自分が感染したくない」
という心理と同時に
「他者に感染させたくない」
という思いが日本人には強かった。
その集団主義の心理が
マスク着用の決定に影響を与えた。
これが通説とされています。
ところがですよ。
本当のところ日本人は
集団主義ではないらしいです。
さまざまな科学的方法で
国際的に比較したところ、
日本人が集団主義的だという証拠は
見つかってないのです。
今回のテーマは
日本人は集団主義であるという
「間違った日本人論」について書きます。
◆日本人は『集団主義』だから同調圧力してるわけではない
私がまず最初にお伝えしたいのは
欧米の人だけではなく
私たち日本人も自分たちを
集団主義と勘違いしている
事実についてです。
日本人は確かにコロナ禍で
マスク着用を遵守しました。
しかしこれは必ずしも
日本人が『集団主義』で
仲間を思いやっての行動だった。
と言い切れないように思います。
一部で「自粛警察」と呼ばれた
相互監視のシステムの存在が
同調圧力として
働いていたからではないでしょうか。
同調圧力による相互監視システムは、
人々が他人の行動を監視し
社会的な規範に合致しない
行動をする者に対して
非難や批判が行われることがあります。
同調圧力による相互監視によって
周囲の目を気にして
マスクを着用する人々が増えた。
これが日本人のコロナ禍での
マスク着用を一定程度後押しした
要素となったのです。
オランダ王国フローニンゲン大学助教授
田中 世紀さんが書かれた
「やさしくない国ニッポンの政治経済学」によれば
日本には昔から相互監視と制裁の
社会制度が確立していたそうです。
それは江戸時代に幕府が設置した
「五人組」という
治安維持システムです。
農民たちに対して
安定して年貢を納めさせるため
５～６戸を一組にして
連帯責任を負わせたのです。
このシステムは
相互監視と制裁が
重要な役割を果たしたのです。
不良行為を行った者に対して
厳しい罰則を与えることで
犯罪行為の抑止や再発防止を
図ることでした。
このように日本人は昔から
相手を信頼しなくても
社会が回るシステムを使うのが
とっても上手だったのです。
そしてこれら「同調圧力」は
集団主義だから起こる
わけではないのです。
逆に、アメリカ人は
個人主義の国でありながらも
同調圧力に強く影響されやすい
ことも分かっています。
したがって、
日本の同調圧力は
集団主義だから起こるわけではなく
自己肯定感やら自信の有無や
文化や価値観の多様性などが
関係しているかもしれません。
◆アメリカでは集団主義は「悪」
次にお伝えしたいのは
世界でいちばん個人主義と呼ばれる
アメリカ人にとって
集団主義🟰悪
という発想があることです。
「飛び込めばキミは英雄だ」
と言われて
アメリカ人が真っ先に
海に飛び込めるのは
アメリカ人が個人主義であり、
名誉やヒーローを重んじるからです。
アメリカ人は行動力や
自己表現に優れており
自分の信念や価値観を
貫くことを尊重します。
そのために自分の行動で
何かを成し遂げることや
他者から認められることに
喜びを感じる傾向があるのです。
そんな
「世界でいちばん個人主義」
なアメリカ人と
「世界でいちばん集団主義的」
だと呼ばれる日本人を
比較した方がいます。
長年に渡り、科学的に証明し続けた
東京大学の高野陽太郎名誉教授です。
高野教授はアメリカで
数年暮らしているうちに
アメリカ人と日本人の言動が
そう違っているようには
思えなかったそうです。
そこで帰国後に
集団主義・個人主義に関する
心理学的研究の中で、
アメリカ人を直接比較した
実証的研究を調べてみたところ
「日本人とアメリカ人とのあいだには
統計的に有意な差はなかった」
と結論づけました。
詳しくはこちらの本に書かれてます。
本書では
「どうして、間違った
日本人論が常識になったのか」
も説明されています。
まず19世紀にアメリカで出版された
『極東の魂』において
「没個性」という
日本人論が始まります。
そして第二次世界大戦以降
『菊と刀』において
日本人は自分を犠牲にする
「集団主義」というイメージが
定着しました。
そしてこの説が
欧米から逆輸入する形で
日本にも浸透して、
日本人にも
「日本人は集団主義だ」
が通説として定着したようです。
「欧米の人が言っているから
日本でも通説になった」
なんて書くと
「自分の意見を持たない日本人は
やっぱり集団主義」
と思っちゃうところですが…
結論を焦らず
次の章を読んでください。
◆日本は世界基準では「個人主義」な国
1980年に
オランダの社会心理学者である
ヘールト・ホフステード博士が
中心となって考案した
ホフステードの6次元モデル
この6次元モデルを一言で言うと
国家や文化の間の違いを
理解するためのツールです。
ホフステードは、
異なる文化間で見られる価値観や
行動の違いを分析するために
世界各国の労働者を対象に
6次元モデルの調査を行いました。
その結果、
ホフステードは
6つの主要な次元を特定したのです。
① 権力格差（小さい／大きい）
② 集団主義／個人主義
③ 女性性／男性性
④ 不確実性の回避（低い／高い）
⑤ 短期志向／長期志向
⑥ 人生の楽しみ方（抑制的／充足的）
このホフステードの
6次元モデルに基づいて、
日本人の特徴をシンプルにまとめると
以下のようになります。
① 権力格差
日本の権力の距離は比較的大きいとされ
上下関係や階層が重視されます。
② 集団主義／個人主義
日本人の文化は集団主義的
共同体やグループの利益を重視します。
③ 女性性／男性性
日本の文化は男性性が高く、
成果主義・完璧主義で競争や成功重視
④ 不確実性の回避（低い／高い）
日本人は不確実性を避ける傾向があり、
ルールや規則性を重視します。
⑤ 短期志向／長期志向
日本人は短期志向的であり、
即時の利益や現状の安定を重視します。
⑥ 人生の楽しみ方（抑制的／充足的）
自己の欲求や感情を抑制し、
節度や自制を重んじる傾向を示します。
あれ？
ホフステードの6次元モデルによれば
「日本人の文化は集団主義的」
なんです。
ということは、
やっぱり日本は通説通りに
集団主義ということになりそうですが…
これには
ちゃんとした理由があるのです。
こちらの図をご覧ください。
ホフステードの6次元モデルを
世界比較した図です。
ご覧いただいてわかるように
左端の世界基準で比較すると
日本は『個人主義』なんです。
しかも東アジア内で比べると
ぶっちぎりの『個人主義』なのです。
よって日本は
「世界でいちばん集団主義的」
という見方は誤りですね。
ところが、
G7の中で比較すると
日本は個人主義とは言えません。
むしろ欧米が
極端に個人主義なのです。
ですので、
確かに世界一個人主義な国
アメリカから見たら
日本は「集団主義」にみえる。
以上をまとめると
世界基準と東アジアから見れば
日本人は個人主義なんだが
欧米からみれば集団主義
なんですよ。
ゆえに
日本人は
見る人や角度によっては
個人主義でもあり
集団主義でもある。
これが正解ではないでしょうか？
さて、通説の真実が
見えてきたところで
ここから今回の核心なる
パートに入ります。
実は
「日本人は集団主義」説のせいで
日本は過去にとんでもないことに
なっているのです。
◆「日本人が集団主義だ」のバイアスがバブル経済の原因‼️
高野教授は著書のなかで
日本人は集団主義だの通説が
バブル崩壊に繋がったことを
解説してます。
時は1980年代、
ジャパンアズナンバーワンの時代。
日本は
日米貿易摩擦の時代を迎えました。
アメリカは
「日本経済は、
欧米諸国の自由主義経済とは
違う集団主義経済だ」
と日本を非難しました。
そしてアメリカ政府の要求で
半導体産業など多くの日本産業が
壊されたのです。
当時の半導体産業は
世界の半導体メーカートップ3が
ＮＥＣ、東芝、日立でした。
実に世界の市場で50％もの
シェアを占めていたのにです。
また
「日本からの輸入を減らすには、
日本製品の値段を上げればいい」
と考えたアメリカ政府は、
日本に円高を求めました。
そして1985年、
日本経済凋落の分岐点
「プラザ合意」を迎えます。
その狙いとは、
ドル安でアメリカの輸出競争力を高め、
貿易赤字を減らすことにあったのです。
このプラザ合意の影響で
急速に円高が進行します。
輸出が減少したため、
日本の国内経済は低迷しました。
この円高不況に対応するため
日銀は低金利政策を取りましたが、
低金利と金融機関の
過度な貸出のために
不動産や株式など資産価格が高騰し
バブル経済が生じました。
やがてバブルが崩壊し、
不良債権問題などを経て、
それからの日本は際限のない
異次元のデフレ不況という
最悪のコースを
歩んでいたというわけです。
「日本人は集団主義」の通説が
結果「失われた30年」を招いたのです。
そんな日本もいまは円安となり
失われた半導体技術など
日本の得意なモノづくりに
再び戻れるかもしれません。
アメリカから
集団主義🟰悪
のレッテルを貼られたせいで
日本はとんでもない目に遭いました。
この不幸な事例から
私たちが学ばなければいけないことは
何でしょうか？
アメリカによる
ゴリゴリの「日本叩き」でしょうか？
弱腰な外交しかできない
日本政府が問題なのでしょうか？
そうではありませんよね。
問題の本質は
「日本人は集団主義」と
アメリカ人も日本人自らも
バイアスにかかっていたことなんです。
「みんながそう言っている」
という主張を根拠とすることは、
バンドワゴン効果という
集団心理効果です。
これはバイアスの一種です。
バンドワゴン効果は、
他の人々がある考えや行動に
賛同しているという事実を根拠として
それに従う傾向があるのです。
また、
「みんながそう言っている」
と自身の意見や
信念を支持する証拠を
優先的に受け入れる傾向を
「確証バイアス」といいます。
日本人が
「みんな飛び込んだぞ」
と言われて海に飛び込むのは
集団主義だからではなく
バンドワゴン効果と
確証バイアスによる影響
と考えるほうが
自然ではないでしょうか。
◆〈まとめ〉ステレオタイプを作ることで国や人が不幸になる
ここまでをまとめます。
・「日本人＝集団主義」には科学的根拠がない
・欧米は日本人を集団主義だと叩いた。
・日本人も集団主義だと確証バイアスがかかってた
・結果、バブルが弾けて異次元なデフレ不況になった
そして問題にすべき真実は
「日本人は集団主義だ」と
文化ステレオタイプが
作られたことです。
ステレオタイプとは一言で言えば
「単純化」です。
この単純化する危険性とは
人々を単純な枠組みに押し込め、
個々の多様性や個性を
無視する傾向があることです。
これによって、
特定の文化や民族の人々が
一律に判断されてしまい
個別の人間としての存在や経験が
無視される可能性があります。
ステレオタイプは偏見や差別を
助長する可能性があるのです。
ステレオタイプは、
ある文化や民族の人々に対して
否定的なイメージや固定観念を
広めてしまっているのです。
文化ステレオタイプ
だけではありません。
この世の中には
ステレオタイプで
いっぱいなのです。
性別ステレオタイプ
女性は感情的で弱くて
男性は強くて無感情
であるといった決めつけ
人種ステレオタイプ
アジア人は優秀な数学者が多く
アフリカ系アメリカ人はスポーツが得意
のような特定の人種や民族は特定の特徴
職業ステレオタイプ
看護師は女性の仕事
エンジニアは男性の仕事のような
特定の職業は性別や人種による偏見
グローバル化や多様性が
ますます大切になっている
今だからこそ
「〇〇は▲▲だ」
という先入観や偏見を持たずに
ステレオタイプから抜け出すことが
必要ではないでしょうか。
私はそう考えます。
最後までお読み頂き
ありがとうございました。
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